棺桶。

ハート・ロッカーハート・ロッカー②
『ハート・ロッカー』(2008)
●観た理由●
直感的と戦争物に惹かれるものがあったから。
●豆知識●
タイトルの『ハート・ロッカー』とは“棺桶”の意味で、
“爆発物処理班”のことを示す米国兵の間で使用される俗語。
物語の舞台は2004年夏のイラク、バグダッド郊外。
●スタッフ●
キャスリン・ビグロー監督の演出は(いい意味で)とても女性とは思えないような
力強い描写で物語を展開していくので、作品を観るたびに驚かされる。
それでいて男性監督では描ききれないような内面の繊細さも上手く表現している。
彼女が監督した作品でいちばん好きなのは
『ストレンジ・デイズ/1999年12月31日』(1995)で、
次に好きなのが『K-19』(2002)。
●キャスト●
ジェレミー・レナー(ウィリアム・ジェームズ二等軍曹役)。
とにかく、彼の感情を抑制した演技が素晴らしかった。
演じた人物像も含め、この一作だけで強く惹かれる魅力が十分にあった。
アンソニー・マッキー(J・T・サンボーン軍曹役)の演技も良かった。
特に彼が最後、戦車内で口にする独白シーンは、
戦争というものがひとりの人間にどれだけの恐怖心やストレスを
与えているのかが明確に伝わってくる場面だった。
中堅俳優たちもチラリと出演。
ガイ・ピアース(マット・トンプソン軍曹役)は冒頭に。
デヴィッド・モース(リード大佐役)は前半部分に。
レイフ・ファインズ(請負チームリーダー役)は中盤のハイライトと言えるシーンに登場。
レイフが登場した瞬間は、その美しい瞳だけで彼だとすぐに気づきました。
『ストレンジ・デイズ/1999年12月31日』繋がりの出演で嬉しい限り。
ちなみに『第82回アカデミー賞授賞式』レッドカーペット時のジェレミー・レナー↓
ジェレミー・レナー×His Mother
●印象に残ったシーン●
オープニングいきなりの爆発物処理シーンは、観ている僕も固唾を呑んで見守ってしまった。
最初から最後まで常に緊張しっ放しの作品だった。
向こう見ずに思えていたジェームズ二等軍曹の人間的な優しい一面を垣間見た数々のシーン。
①そこで起きている人種間の問題とは何の関係もなく、
現地に住むバグダッドの少年と交流を取るところ。
②砂漠での緊張感と疲労感ある銃撃場面で自分にではなく、
サンボーン軍曹にジュースのパックを飲み与えるところ。
③“人間爆弾”にされた亡き少年を想い、その場所の爆破を止めて、
その遺体にシーツを包むところ。
クライマックスでバグダッドの少年が凧揚げをしているシーンも印象に残る。
そこで今、起きている爆発物処理班の苦悩との対比がもの凄く活きていたから。
凧揚げを観ている瞬間だけ、ひと時の“平和”を感じることができた。
●この映画を観て思ったこと●
描かれている内容はとても素晴らしいものだと思えたけれど、
正直なところ僕の心には余り強く響かなかった。
『(この作品こそが今回の)アカデミー賞の作品賞受賞に相応しい!』と
思えるような群を抜いたものを感じ取ることができなかったな。
この点に関しては、もし僕自身がオスカーの会員であるならば、
迷うことなく『イングロリアス・バスターズ』に投票していたと言える。
…結局のところは好みの問題なのだろうけど。
『ハート・ロッカー』は全体的に登場人物たちの感情を極力排除した、
ドキュメンタリーに近い描写だったと思う。
終始、静けさの中で淡々と描かれていき、
そこに通常の戦争映画にあるような“映画的ドラマチック”な要素はない。
常に“死”と隣り合わせに生きる兵士たちを追っていくのみ。
この辺りに“現実”の戦場とはこういうものであるのだと、
観客に事実のみを伝えているように感じた。
冒頭で表示される“War is a Drug.”という言葉が、
ラストのジェームズ二等軍曹の行動へ繋がることを実感する。
ちなみにこれまで僕が観てきたイラク戦争関連映画は…
①『キングダム/見えざる敵』(2007)②『告発のとき』(2007)
③『リダクテッド 真実の価値』(2008)
④『ワールド・オブ・ライズ』(2008)辺りか。
なぜ、これらの作品が全米公開時に高い評価を得ることができず、
今回の『ハート・ロッカー』で初めて評価されたのか。
それは、リアリティを追求した点なのか。
政治色を全面に押し出していなかったからなのか。
米国市民が知りたかった“イラク戦争”の傷痕を描いていたからなのか。
彼ら一兵士を人間味のある“英雄”として賞賛したからなのか。
“映画的”な描写ではない“戦争映画”だったからなのか。
或いは“国家的な軍人”としてではなく“一個人”として描いていたからなのか。
…僕にはその理由がよく解らなかった。
いや、良い作品であることは間違いないのだけど。
●次に観たいと思うイラク戦争関連物●
Renditionストップ・ロス/戦火の逃亡者The Messenger
『Rendition』(2007)
監督:ギャヴィン・フッド
キャスト:ジェイク・ギレンホール、リース・ウィザースプーン、
ピーター・サースガード、アラン・アーキン、メリル・ストリープ
『ストップ・ロス/戦火の逃亡者』(2008)
監督:キンバリー・ピアース
キャスト:ライアン・フィリップ、アビー・コーニッシュ、
チャニング・テイタム、ジョセフ・ゴードン=レヴィット
『The Messenger』(2009)
監督:オーレン・ムーヴァーマン
キャスト:ベン・フォスター、ウディ・ハレルソン、サマンサ・モートン、ジェナ・マローン
ハート・ロッカー③ハート・ロッカー④
●満足度●
★★★☆

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4 Comments

sabunori says..."「棺桶」ですか"
Elijahさん、こんばんは。
う~ん、確かに評価が難しいですねぇ。
最初から最後まで緊張感が途切れずひきこまれたことは確かなのですが
「映画」として考えると評価は別れるでしょうね。
私はこの手の作品は嫌いではないですがやっぱりオスカーの作品賞と考えると少々疑問が・・・。
いずれにせよ、もう1度観るかと聞かれればちょっと辛い作品です。
それにしても「手」でわかるんですかぁレイフ・ファインズ。恐るべしElijahさん!
2010.04.01 21:54 | URL | #JalddpaA [edit]
Elijah(管理人) says..."sabunoriさん。"
sabunoriさん

『棺桶』=『傷ついたもの(爆発物処理班の遺体)を入れる箱』を表しているようです。
今の米国市民にとって、イラクからの撤退は必須条件でしょうから、
そういう意味においてもタイムリーな作品だったのだと思います。
僕も『もう一度観るか?』と聞かれると観ないですね。
オスカーの作品賞には、やはり『イングロリアス・バスターズ』に一票でした。笑
レイフ・ファインズは“手”ではなくて、“瞳”で判りました。
彼の目はとても綺麗なので印象に残っているんですよね。
まぁ、長年のファンと言うのもあるんですけどね。笑
2010.04.01 22:22 | URL | #d/k.Dt.. [edit]
Jasmine says..."No title"
こんばんは。
淡々とした中にも静けさがあった映画で
最後はどこに行きつくのかと思ったら
冒頭に繋がってたとは。
TBさせて頂きました。
2010.04.17 19:47 | URL | #zF.Cle0A [edit]
Elijah(管理人) says..."Jasmineさん。"
Jasmineちゃん

こんばんは。
うん。終わりはきっちりと冒頭の言葉に繋がっていたよね。
意義のある作品だったと思います。
TBどうもありがとう。
2010.04.17 20:46 | URL | #d/k.Dt.. [edit]

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ハート・ロッカー
2004年、イラク・バクダッド。 爆弾処理班の作業中に班長が爆死。 彼に代わって派遣されてきたのはウィリアム・ジェームス二等軍曹(ジェレミー・レナー)。 彼はそれまでに873個の爆弾処理を果たしてきたエキスパート。 しかしその自信ゆえか周りとの協調心に欠け、
ハートロッカー
アカデミー賞で作品賞・監督賞・脚本賞など6部門受賞した「ハートロッカー」を やっと鑑賞してきました。 ストーリーは2004年のイラク・バクダットにいる米軍の危険物処理班を描いた作品。 部下たちから信頼されていたトンプソン二等軍曹(ガイ・ピアース)が爆弾の解体
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