フランスで社会の敵No.1と呼ばれた男。

ジャック・メスリーヌ フランスで社会の敵(パブリック・エネミー)No.1と呼ばれた男 Part 1 ノワール編ジャック・メスリーヌ フランスで社会の敵(パブリック・エネミー)No.1と呼ばれた男 Part 2 ルージュ編
a.『ジャック・メスリーヌ フランスで社会の敵(パブリック・エネミー)No.1と呼ばれた男
Part 1 ノワール編』
(2008)
b.『ジャック・メスリーヌ フランスで社会の敵(パブリック・エネミー)No.1と呼ばれた男
Part 2 ルージュ編』
(2008)
フランス版本家本元『パブリック・エネミーズ』の登場。
1960年代から1970年代にかけて暗躍した、
実在の人物ジャック・メスリーヌ(1936-1979)の犯罪歴を描く。
彼が生存している間に書き上げた自伝を基に脚本化されている。
メスリーヌの60年代を描くPart1(113分)と
70年代を描くPart2(133分)に分けての日本同日公開。
大阪のミニシアターでは【1:ノワール編】と【2:ルージュ編】を
交互に上映してくれるという配慮があったので、休憩15分を挟むだけで一気に観ることができた。
全体的にテンポが良くカメラワークにキレのある実録犯罪風の仕上がり。
特に同じはずだと想像していた【1】のオープニングと【2】のエンディングを
全く違う角度から描くところにセンスの良さと斬新さを感じた。
その前後のシーンが繋がった瞬間、
『あぁなるほど!こういうことだったのか!』と思わず唸らされてしまった。
この辺りも含めて、ジャン=フランソワ・リシェ監督の演出力が全編に冴え渡っている。
メスリーヌをヒーローとして描いておらず、あくまでひとりの人間として描いている点が興味深い。
人間的な脆さ、弱さ、虚栄心、自惚れ。
正直、メスリーヌは頭がいいのか悪いのかよく判らない人物像だった。
計画性がないままその日暮らし的な発想で犯罪を実行しているように映ったので、
時々間抜けに思えるシーンがあったのだ。
すべては【運】が彼の味方をしたといったところか。
人生の最後の方は一体何がしたかったのか理解不能に思えた。
マスメディアへ過剰に反応する辺りは単なる目立ちたがり屋かつ器が小さいな、と。
時に負け犬の遠吠えのようにも感じた。
人格的にはどうだったのだろう?
家族(父親や娘)との交流シーンがあったものの、
とても彼らを大事に想っているようには伝わってこない。
このシーンは唯一、とってつけたように感じてしまった。
それは【1】で結婚相手の妻を銃で脅していた場面が強烈だったからかもしれない。
一生涯、女性には不自由していないようだったけど、
彼にとっての【愛】とは一体何だったのだろう?と、ふと思った。
もしかしたらアルジェリア戦争へ従軍したことに因って、
それまでの生き方や価値観が覆されるくらいの
何らかの影響を受けてしまっていたのかもしれないね。
でも、どこか憎めない魅力を持っている人物像ではあったな。
…やはり彼は大衆の【英雄】になりたかったのだろうか。
それにしてもフランスとカナダの刑務所の脱獄しやすい環境には驚かされた。
いや、これに限ってはメスリーヌの頭脳戦勝ちかな。
ジャック・メスリーヌの20年間を演じたのはヴァンサン・カッセル。
とにかく!彼のパフォーマンスぶりは素晴らしかった。
実際に4ヶ月かけて体重を20㎏増量させこの役柄に挑み、
撮影の9ヶ月の間に本編とは逆の形で体重を減らしていったようだ。
【1】での容貌はいつものヴァンサンらしい体型で長身にスーツ姿がよく映え、
そのフォルムは美しく本当に様になって格好よかった。
彼はロマン・デュリスと系統が同じで本来の体型は細身なのだけど、
着ている服を脱いだら綺麗な筋肉がついているというナイスボディな人でもある。
今回も十分なほど、その身体を堪能することができました。
やっぱり母国フランス映画で観るヴァンサンがいちばんだなぁ…と強く実感。
ヴァンサン・カッセルを取り囲む俳優たちは時代が進むに連れて目まぐるしく変わっていく。
【1】で印象が残ったのはセシル・ド・フランス(ジャンヌ・シュネデール役)。
登場の瞬間からCOOLにキメていた。
特にカジノでメスリーヌと共に銃を構えながら威嚇するシーンは、
姐御的に見えて最高に格好よかった。
ロイ・デュピュイ(ジャン=ポール・メルシエ役)の無骨的な格好よさも捨て難い。
【2】で印象が残ったのはリュディヴィーヌ・サニエ(シルヴィア・ジャンジャコ役)。
小悪魔的なフェロモン全開でメスリーヌだけじゃなく観客をも魅了する。
脱ぎっぷりの良さも変わらずで潔い。
シルヴィアの最後の言動がメスリーヌの安否より犬だったことに衝撃を受けた。苦笑
マチュー・アマルリック(脱獄王フランソワ・ベス役)。
初めて彼を素敵だと思えるくらい、その役柄に知的さを感じた。
マチューを観ているとRADIOHEADのトム・ヨークを彷彿させるものがある。
オリヴィエ・グルメ(ブルサール警視役)。
冷静沈着かつメスリーヌに対する人間的な対応ぶりの役柄に魅了された。
サミュエル・ル・ビアン(ミシェル・アルドワン役)。
昔の面影が消えていくような恰幅のいい容貌にショックを受けていたら、
ヴァンサン同様に彼も役作りのために20㎏の増量をしていたと知り…ホッ。
…という感じで約4時間に渡り、フランス犯罪映画を堪能することができた。
僕はクラシック感漂う【1:ノワール編】よりも、
1970年代の生々しい匂いを思い存分に感じた【2:ルージュ編】の方が好みだな。
渾身のラストシーン。ヴァンサン・カッセルが本当に神がかり的なCOOLぶり!
第34回セザール賞最優秀主演男優賞受賞おめでとう!!
ヴァンサン・カッセル
『Part 1 ノワール編』満足度:★★★★
『Part 2 ルージュ編』満足度:★★★★☆

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2 Comments

湛 says..."ヴァンサン・カッセル 好きです~♪"
Elijahさん こんにちは。

興味深い作品紹介、ありがとうございます。
話題の(^▽^)デリンジャーをネット検索してた時にたまたまメスリーヌの記事を読んだのですが、
映画は全く知りませんでした。然もヴァンサン・カッセルなのに...という程彼を詳しく知らないんですが。
でも『オーシャンズ』シリーズは、彼が出てるから観たというくらいに好きです♪
ルージュ編のポスター、何だかジーザスぽくて雰囲気有りますね。

Elijahさんは、ハリウッドは勿論、ヨーロッパ作品や映画人をよくご存知ですね。
情報収集と分析・整理の素晴らしさにも、いつも感嘆するばかりです。
私など昔のスタアで好きな人が多いというだけで全然詳しくないですし、
何よりとろいので情報入手が遅いんですよ。

ちょっと逸脱しまして失礼しました。
この映画には『潜水服は蝶の夢を見る』で気に入ったアマルリックも出てると知り、
それも興味を引かれた一因です。彼も他は『ミュンヘン』等でしか見ていませんが、
ヨーロッパの俳優って「俺が俺が」という演技でないのが好きです。
凄く観たいけれど、おらが村に来るかなあ?
確かに自転車移動可範囲内にシネコンタイプが3軒ありますが、吹替え版ばかり上映とか
公開されないとか、本当にとんでもない村なんです。ちなみに松本清張の故郷です。
今日からシャーリー・マクレーンの方のシャネルが、やっと公開されるので早目に行かなければ!
何しろ『3:10』は二週間限定上映でした。抜かりなく行きましたよ。でも逃す作品も時おり(泣)。

という訳で未だ『ジェイン・オースティン~』来てくれてません!(マカヴォイ君に会いたい~!)
なのでElijahさんのジェイン感想まだ読めないんですよ。無関係なオチでお粗末です。




2009.12.19 17:07 | URL | #nxzuATHA [edit]
Elijah(管理人) says..."湛さん。"
湛さん

こんにちは。
ジョン・デリンジャーとジャック・メスリーヌは犯罪史上に残る人物として
共に扱われ比較されることが多いみたいです。
湛さんもヴァンサン・カッセルがお好きなんですね。
彼は積極的にアメリカ映画にも出演していますよね。
僕は『アパートメント』という作品でノックアウトされました。
ストーリーが良かったのもあるんですけど、
この作品での彼の仕草や表情がとてもロマンティックだったんです。
『オーシャンズ12』では特技を活かした身体能力で演技をしていましたね。
『Part 2 ルージュ編』のポスターは正しく殉教者の趣があります。湛さん、鋭い!

>情報収集と分析・整理の素晴らしさ
↑ここは素直にありがとうございます。
もともとA型の完璧主義なもので。笑
映画に関する知識は誰にも負けたくないと思っているところがありますね。
親しい友人たちからは『歩く映画事典』と言われたこともあります。
まぁ、映画というものが趣味になって20年近く経ちますので、
情報が蓄積されたというだけですが。笑
クラシックな作品は映画を好きになり始めた頃に、
よくレンタルビデオ店で借りて見たりしていました。
もともと父が洋画、母が邦画に詳しかったので、その影響もあったりします。
僕がクラシックな俳優で好きな人はモンゴメリー・クリフト、オードリー・ヘップバーン、
グレゴリー・ペック、スティーヴン・ボイド、ポール・ニューマン、ロバート・テイラー辺りですね。
最近はフランスのジェラール・フィリップに興味を持ちつつあります。
どちらかと言えば早逝してしまった俳優に惹かれるところがあるかもしれません。

マチュー・アマルリック。
『ジャック・メスリーヌ』ではいいお芝居をしていましたよ。
独特の空気を持っている俳優さんだと思います。
『潜水服は蝶の夢を見る』では素晴らしい演技をしていましたよね。
僕は『ミュンヘン』辺りから気になるようになりました。
ヨーロッパの俳優はスターというよりかは叩き上げの役者といった感じを受けますね。

湛さんは九州の方だったんですね!てっきり関西圏の人だと想像していました。
僕は福岡県に何度か足を運んだことがありますが、とてもいい場所ですよね。
ただ、松本清張は広島県で誕生とも言われていますので、
湛さんがどちらにお住まいなのか…。汗
『3時10分、決断のとき』を観ることができて良かったですね!
この作品のクリスチャン・ベイルも僕は好きです♪
我らがジェームズ・マカヴォイくんの『ジェイン・オースティン 秘められた恋』は
大阪でも一館上映の扱いでした。
観客の入りが悪いのかアッという間に上映回数が減り、上映自体も終わりました。泣
『ジェイン・オースティン』の僕の感想は思いきりネタバレしていますので、
湛さんはきっと読めないんだろうなぁ…と思っていたところです。笑
2009.12.20 11:39 | URL | #d/k.Dt.. [edit]

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