MOVIE REVIEW 2009 #2.

スクリーンで観た映画たち。

a.『ゼロの焦点』(2009)
ゼロの焦点
松本清張の小説は一度も読んだことがないし、映像化作品も観たことがない。
今回は好きな犬童一心が監督だということと、三大女優の競演に心惹かれて観ることにした。
やっぱり、犬童監督の丁寧な演出ぶりは好みだ。
戦後、昭和の風景と女性の心情を上手く描いていたと思う。
いちばんの不安要素だった広末涼子の演技も、さほど気にはならなかった。
多分、犬童監督がTVドラマ『愛と死をみつめて』で彼女を起用したことのある安心感からだろう。
『愛と死をみつめて』の演技で僕は彼女を見直したところがあるので。
ただ、多くの人が言うようにあの甲高い声は彼女にとって致命的なマイナスポイントかもしれない。
今回の広末涼子の役柄は観客に寄り添うようなナビゲーター的な存在だった。
実質の主役は中谷美紀以外の何者でもない。
圧倒的な存在感と確かな演技力が冴え渡っていた。
狂気めいたパフォーマンスとでも言うべきか。
予告編でも使用されていた、慟哭しながら車を走らせるシーンでの演技は群を抜いて素晴らしかった。
もう一度、彼女の演技だけでも観に行きたいくらいだ。
個人的には中谷美紀と松たか子の共演で一度、演技合戦が観てみたい。
きっと白熱したものになるだろうから…でもタイプが似ているので共食いになる恐れがあるかもね。
木村多江は思っていたほど出演シーンは多くないが、きっちりと自分の役割を理解し演技をしていた。
惜しむところは鹿賀丈史の中途半端な役どころで、
原作通りに最後まで生かしたままの方が良かったのでは?と思う
(映画鑑賞後にロビーで販売していた原作小説の結末だけを立ち読み)。
この物語で犯人が殺人を犯した理由が今の若い人たちには
『なんで、それくらいのことで?』ともしかしたら理解されないかもしれない。
事実、『まるでTVの2時間サスペンスドラマを見ているようだった』という意見も聞いた。
けれど、あの時代だからこそ起きてしまった出来事なのだと気づいてほしい。
戦争が終わり平和が訪れた後さえも人々の心に傷が残されたままだということを。
正しく、時代に翻弄された哀しき女性たちの物語。
ちなみに僕は観る前から既に犯人を当てていました。
父の前でこの映画を話題にし、なにげに『●●●●が犯人ぽい』と話すや、
『そうや、●●●●が犯人や』と言われる始末。
父世代はみんな当たり前のように松本清張作品を知っているもんね。苦笑
満足度:★★★★☆

ロフト.
b.『ロフト.』(2008)
『第16回大阪ヨーロッパ映画祭』のオープニング作品として上映。
同日、東京では一般公開が始まりました(大阪では12月26日公開)。
本国ベルギーで10人に1人が観たと云われているミステリー・サスペンス。
妻のある5人の男たちが共有するロフト:情事部屋で起こった女性殺害事件の犯人捜しを描いていく。
最初こそ犯人が一体誰なのか全く予想がつかずハラハラドキドキしながら観ていたものの、
中盤以降から尻すぼみな感じになっていき持続していたテンションが落ちてしまった。
犯人の意外性と動機に今ひとつ驚きを感じず、それこそ『そんな理由で?』と思わずにはいられなかった。
正に肩透かしを食らったような…その点がかなり惜しかったです。
この結末ならば、一瞬惑わされた『黒い十人の女』の如く、
妻5人の復讐だったということで締めてくれた方が良かったな。
ま。ベルギーの男優さんもなかなか魅力的な人が多いことに気づけただけでも良しとするか。
特にビンセント・スティーブンス役のフィリップ・ペータースが、
パスカル・グレゴリーぽい渋いオジ様で素敵でした(役柄は結果的に最悪だったけど)。
ヴェールレ・バーテンス
映画上映後は予定外でアンサンブル・キャストのひとりである女優ヴェールレ・バーテンスの
ティーチイン&サイン会が催され、もちろん迷うことなく参加。
ティーチインは観客が挙手して、彼女に質問をしていく形で進行。
最初は恥ずかしいのか誰も挙手しなかったけど、徐々にその手は増えていきました。
観客はそれほど多くは居なかったので大いに質問するチャンスがあったにも関わらず、
こういう時に限って小心者の僕は挙手できず…。苦笑
印象に残った言葉は『(ベルギーで)「おしん」を見ていた』ということと、
『好きな日本の映画は「千と千尋の神隠し」』ということでした。
続いて、サイン会。
会場で販売していた公式プログラム@1000円を購入すると、そこにサインして貰える仕組みで。
どうせならば自分の名前入りでサインを貰おうと思い、
並んで待っている間に手持ちの紙に英語で僕の下の名前を書いて、
サインを貰う時に同席していた通訳の女性に
『ここに書いてある僕の名前と今日の日付を入れて下さい』とその走り書きの紙を見せて伝えました。
ヴェールレはその紙を見ながら、僕の名前入りでサインを書いてくれました♪
サインを貰った後は僕の顔を見つめてしっかりと笑顔で握手してくれたのが、ただただ嬉しかったです。
…だって、さっきまでスクリーンに映っていた人が自分の目の前に居るんだもん。
でも、やっぱりこの時も僕は緊張して小さな声で
『Nice me to you.』と『Thank You.』くらいしか言えませんでした(彼女は英語も流暢に話す)。
実物の彼女は本当にスクリーンに映っていた時とは別人のようで(その変貌ぶりはさすが女優!)、
とてもチャーミングな人だったなぁ。
ちなみにヴェールレはベルギー版TVドラマ『アグリー・ベティ』の主演女優でもあるようです。
…と言う訳で、映画本編よりもティーチイン&サイン会の方が印象に残ってしまいました。笑
満足度:★★★

戦場でワルツを
c.『戦場でワルツを』(2008)
アリ・フォルマン監督の実体験を基に描くノンフィクション。
1982年に起こったサブラ・シャティーラ大虐殺と呼ばれる事件を題材に、
ドキュメンタリー・タッチのアニメーションで描く。
その映像手法はリチャード・リンクレイター監督作
(『ウェイキング・ライフ』&『スキャナー・ダークリー』)を彷彿させる。
19歳の時にレバノン侵攻に従軍した主人公アリが、
そこで体験した衝撃的な出来事から記憶が欠落するのは理解できる。
一兵士が戦場で銃をぶっ放しながら軽やかに踊るように映るワルツ(ショパンの7番)のシーンは、
そこで起きている戦争を忘れてしまうかのような美しさすら感じた。
クライマックス。映像がアニメーションから実写へ切り換わる瞬間はかなりショッキング。
あのパレスチナ人女性たちの言葉では表現できないほどの泣き叫ぶ声が耳から離れない。
イスラエル軍がキリスト教系民兵(ファランジスト党)を煽り、パレスチナ難民キャンプ虐殺事件に加担。
第二次世界大戦下に祖先がドイツ・ナチスに因るホロコーストを経験していることを思えば、
加担できるはずはないと思っていたのに…。
歴史が歪んだ形で再来したかのように映り、ただただ哀しくこの事実にゾッとした。
しかも既に僕自身が生まれていた、つい近年に起きていた訳であって。
アカデミー賞外国語映画賞受賞『おくりびと』主演男優である本木雅弘がチラシに寄せていた言葉。
『正直今でも、アカデミー本命はこの作品だと思っている』
…僕も、正しくその通りだと断言できる。
宗教戦争に平和な終わりが一刻でも早く来る日を切に願う。
戦場でワルツを③
満足度:★★★★★

…以上、映画の感想でした♪

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2 Comments

sabunori says..."こんにちは♪"
「ゼロの焦点」は確かに謎解き部分に重みを置いて観てしまうと「2時間ドラマで十分じゃないの」
という感想が出てしまうかもしれませんね。
この作品のテーマは犯人探しというよりはElijahさんがおっしゃるように「あの時代」に
「どうしても自分の過去を切り捨てたかった人達の思い」だったのですから。
その部分に感情移入ができれば観ごたえある作品になると思います。
私個人としてははこういうタイプの作品は好きです。
それにしても中谷美紀はいい役者ですねぇ。
この作品で見直しました。(←偉そうな 笑)
2009.12.15 12:50 | URL | #JalddpaA [edit]
Elijah(管理人) says..."sabunoriさん。"
sabunoriさん

こんにちは!コメントありがとうございます。
『ゼロの焦点』
そうなんです。松本清張の作品はきちんと読んだことはないものの、
どれも日本の暗い過去を現代人が忘れないように書いてあると思うんですよね。
なので、表面だけでこの映画を観てほしくないなぁ…と感じた次第です。
僕は横溝正史を始め、こういう古き日本を描いた作品が好きですね。

中谷美紀は『嫌われ松子の一生』の演技でノックアウトされました。
今回一緒に観てくれた女子友達は、
選挙開票日のあの舞台演説のシーンは最強に怖かったと言っていました。笑
僕にとって、今後が益々気になる女優さんのひとりです。
2009.12.15 15:42 | URL | #d/k.Dt.. [edit]

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