LIFE IS BEAUTIFUL。

私の中のあなた
『私の中のあなた』(2009)
全米ベストセラー小説の映画化。
どうやら原作小説と映画の結末がかなり違っているようで、
その辺りが原作小説ファンから賛否両論を受けているみたいです。
僕がこの作品を観る前の周りの評判は上々でした。
確かに日本版予告編の仕上がりも良くて、それだけで泣きそうになっていたから。
でも過度な期待は僕の性格上、天邪鬼となる危険性を伴うので、
妙な先入観を持たずにまっさらな状態で観ることを心掛けました。
けれど、そんなことは余計な心配だったという…。
オープニングが始まって数十分も経たない内に、
既にこの作品に魅了され涙ウルウルとなっている自分が居ました。
そう。『私の中のあなた』は涙なしでは観られない物語だったのです。
作品全体から絶対的な優しさが伝わってくるものがあり、
ストーリーも説得力のある描き方でした。
決してお涙頂戴的な作風に仕上げていなかったことに、とても好感を持てたり。
ニック・カサヴェテス監督の演出は、
どこまでも果てしなく優しい眼差しで見つめ続けているようでした。
きっと彼自身も家族に大切に愛されながら育てられてきたんだろう、と。
フィッツジェラルド家(両親、姉、弟、妹、叔母)を始めとする、
登場人物たちの誰もが愛溢れる人ばかりで素敵に映りました。
母サラを演じるのは好きなキャメロン・ディアス。
いつもの明るい笑顔をほぼ封印して、初の母親役をシリアスに演じていました。
この作品の撮影中に私生活で実父が突然死し、
二週間の休暇を経ての撮影現場に復帰。
いろんな想いを抱えて、この作品に挑んだ気持ちが伝わってくるようでした。
公開前から話題になっていた坊主頭のシーンは、
従来ならばメイン場面で使われるようなところ。
それが映画が始まって割りとすぐに出てきて、
しかもサラリと描いている辺りが逆に効果的であり印象的でした。
サラがドナーの保持者である次女アナに対する行き過ぎた行動は
確かに傍から見れば非道なことかもしれないけど、
僕は一概にサラを責めることは出来ないと感じました。
正当な理論と感情は必ずしも一致しないことを改めて気づかされたり。
妹アナを演じるのはアビゲイル・ブレスリン。
ほんの数年前であるはずの『リトル・ミス・サンシャイン』(2006)の頃と比べても、
着実に女優として成長していることが判る。
キャメロン・ディアスと互角に大人顔負けの演技を披露していました。
アナはなぜ母親を訴えたのか?
…その真相は冒頭のあるモノローグで僕は既に気づいてしまいました。
それでも作品はとても見応えがあったけど。
父ブライアンを演じるのはジェイソン・パトリック。
かつて大好きだった男優。特に『アフター・ダーク』(1990)の頃。
久しぶりに出演シーンの多い役柄で、その魅力を十分に堪能することが出来ました。
娘想いの父親役を憂いある優しい瞳で表現していて、
特に長女ケイトが初めてダンス・パーティーに参加する時のシーンでの、
娘と目と表情だけで語り合うところにグッときました。
姉ケイトを演じるのはソフィア・ヴァジリーヴァ。
実は彼女の演技がどのキャストよりもいちばん印象に残っていて。
それくらい素晴らしい演技を披露していました。
難役である白血病患者の役柄を表情ひとつひとつに見事に体現していました。
そのリアリティある演技にどれほど惹き込まれたことか!
そう考えると最初にキャスティングされていた、
ダコタ&エル・ファニング姉妹がこの役を演じなくて良かったと思います。
ファニング姉妹が演じていれば、
きっと綺麗事のようにほとんどリアリティを感じることなく観終わっていた気がするから。
フィッツジェラルド家がどんな状況においても当たり前のように普通に振舞い、
前向きに捉えようとする姿勢がとても良かった。
もちろん、家族間の大きな葛藤や揺れがあったけど。
そして、どんな時もユーモアのセンスを忘れないことの大切さを教えられた。
ケイトが闘病中に出逢う青年、テイラー(演じるのはトーマス・デッカー)。
彼もケイトと同種の病を抱えていて…。
同じ痛みが解る者同士だからこその互いに惹かれ合う想い。
どちらからともなく発する『癌になったから、君:あなたと出逢えた』…
こういう言葉を口にする勇気をなかなか持てないと思ったと同時に、
恋をするとそれだけで生きる源になるのだと実感する。
化学療法や投薬以上の力を発揮することがあるのだ、と。
この作品を観ている間中、
いろんな想いが湧き出てきて、いろんなことを考えさせられた。
特に悩みや問題を抱えるようになっていく30代以上の人が観たら、
心の琴線に触れることだろう。
この作品のメッセージのひとつに思えた、
人生に完璧な答えがないようにすべての事柄にも答えや意味がないのかもしれない。
確かに奇跡は起こらないのかもしれないし、
どれが正しいことなのかは誰にも分からない。
それでも生きていく、その過程で確固たる想いさえあればいいのだろう。
残された弟妹は人の痛みが解る素敵な大人になるだろうと確信した。
この作品を観ていちばん強く感じたことは…健康でいられることの有り難味。
それを当たり前のように思っている自分をつくづく恥じたと同時に、
強く励まされるものがあった。
エンドロールで流れるUKバンド、Vega4の『Life Is Beautiful』という曲が、
作品のイメージにとても合っていて耳に残る。
出来ることならば、歌詞の対訳をスクリーンに映してほしかった。
観終わった直後。一緒に観た女子友達
(彼女も冒頭から泣いていて、鼻をすすっていました)と感想を語るたびに、
お互い涙がこぼれてきて…その光景がなんだかとても可笑しかったです。
それくらい僕らは作品に入り込んで観ていたんだと思う。
ぜひ多くの人に観てもらい、
この作品で描かれる問題提起について意見を交換してみたくなりました。
最後に。原作小説の結末に関して書いておこうと思います。
原作小説の方は裁判の結審を待たずに妹アナが交通事故に遭い、脳死状態に。
結果的に裁判はアナが勝訴するものの、アナの腎臓を姉ケイトに移植する形で
アナの生命維持装置を切って物語は終わるようです。
邦題である『私の中のあなた』は原作小説の方が意味合いを強く持つことを感じます。
僕は映画の方がケイトの行動に説得力を持たせるし、
家族の絆を感じさせ希望を持たせた終わり方に感じるので、
映画の結末の方で良かったと思いました。
ニック・カサヴェテス監督も実生活で過去に心臓病を患う娘を持つ経験があったので、
次世代へ繋げるような愛と優しさのある結末へ変えたかったのかもしれないね。
…思いのほか、熱く語ってしまいました。
私の中のあなた
満足度:★★★★★

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