心を持った人形。

空気人形②
『空気人形』(2009)
是枝裕和は特に思い入れのある監督ではないけど、
『DISTANCE/ディスタンス』(2001)をスクリーンで観て以来、
新作が公開されるたびに観てみたくなる気持ちが湧いてくる不思議な人だ。
作品によって彼が放つカラーが全く違うので、
一体どんな思考回路をしている人なのか知りたくなってしまう。
今回の作品は想像していた作風より遥かに生々しいものがあった。
ファンタジーを軽く通り越して現実的かつシュールな仕上がり。
題材が【空気人形】ということで、去年の暮れに観た『ラースと、その彼女』を思い出す。
でも『空気人形』に『ラースと、その彼女』のような優しい温もりを感じることはなかった。
それはこの作品に登場する人物たちの誰もが、
空虚な想いと孤独を抱えていたからだと思う。
まず、何においても空気人形を演じるペ・ドゥナの存在感と演技が素晴らしい。
それと同じくらいに冒頭からの脱ぎっぷりの良さに驚かされてしまう。
作品全体のほとんどで脱いでいたんじゃないかな。
身体のラインとスタイルが良くて、いやらしさを感じることはこれっぽっちもなかった。
胸の形がとても綺麗だなぁ…と自然に思えたり。
彼女の風貌はファニーフェイスで、凄くチャーミング。
空気人形という設定に全く違和感を覚えることはなかった。
お目当てのひとりだった是枝監督組のARATAは、
空気人形に恋されるレンタルビデオ屋の従業員、純一役。
ここのところアクの強い個性的な役柄が続いていたので、
久しぶりに柔らかい感じの役を演じる彼を観ることができて妙に嬉しかった。
やっぱり僕が求めるARATA像はこういう雰囲気なのだ。
僕も空気人形と同じく、映画のタイトル当てごっこに参加したかったです。笑
板尾創路(空気人形の持ち主でファミレス従業員、秀雄役)の演技は、
しがないサラリーマンの雰囲気をリアルに表現していて上手かったなぁ。
印象に残ったシーン。
この作品のハイライトだと言える、
不注意から空気が抜けてしまった空気人形を純一が息を吹き込み蘇生させる場面。
セックス以上の快楽とピュアさを想像させ、とてもドキドキしてしまいました。
観ている間にふと思ったのは、『この「空気人形」を、
もしジャン=ピエール・ジュネが監督したらどんな仕上がりになるんだろう?』と、
少し興味が湧いてしまった。
観終わった直後は、まるでパク・チャヌク監督の復讐三部作
(『復讐者に憐れみを』、『オールド・ボーイ』、『親切なクムジャさん』)を
観終わった時のなんとも言えない複雑な感覚と似ていたり。
生々しさの部分では『ストロベリーショートケイクス』に似ているような気もした。
性に関する描写がストレートに表現されているので、
生理的に嫌悪感を示す女性の観客がいるかもしれないね。
…物語の結末はほんの少しだけ希望を与えるように普遍的な様子で終わるけど、
やっぱりどうしても物悲しさを拭い去ることはできなかった。
冒頭で『キレイ』とつぶやいた空気人形が、最後は『綺麗』と言われる立場に回る。
それは【空気人形】としての人生を全うした自己完結を告げるシーンだった。
唯一、不満な点はリー・ピンピン撮影監督の映像の色合いが僕好みではなかったこと。
上手く説明できないけど、
『夏至』(2000)と『春の雪』(2005)のような色合いを期待していたんだけどなぁ。
カメラワークはクリストファー・ドイルに匹敵するくらい素晴らしかったです。
印象に残った台詞。
空気人形が自分に言い聞かせるかのようにモノローグする言葉の数々が、
彼女の気持ちと作品が持つメッセージ性を表していたと思う。
『私は空気人形──
ある日、持ってはいけない「心」を持ってしまいました
心を持ったので、恋をしました
心を持ったので、嘘をつきました
心を持つことは、切ないことでした──』

満足度:★★★★

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2 Comments

myrtille says..."こんばんは"
お久しぶりデス♪

やっと今日、私も「空気人形」観て来ました
確かに。想像してた以上に生々しかったですね
終盤はちょっとエグかったくらい(血とかニガテなんで…)

純粋というか切ないというか、虚無感に襲われるというか…
観終わった後なんだか無性に泣きたくなりました。

そして同じく!空気を入れるシーン
普通のベッドシーンより何倍も官能的で良かったです
ぺ・ドゥナの脱ぎっぷりにもビックリしたけど
本当イヤラシクなくて素敵でした

影響されやすい私は公開前からずっと
ぺ・ドゥナのあの髪型にしたくてずっと迷ってます。笑

追伸:「南極料理人」私も大好きです
   堺雅人、格好良すぎて失神しそうでした~笑
2009.10.12 17:41 | URL | #- [edit]
Elijah(管理人) says..."myrtilleさん。"
myrtilleさん

こんばんは&お久しぶりです!
myrtilleさん。今日、観てこられたんですねー。
…で、やっぱり案の定、生々しく感じましたか。
エグいシーンと言えば…
空気人形が純一の家に行った辺りから作品のトーンが変わってきましたよね。
それ以降の描き方が韓国映画ぽいなと僕は思いました。
観終わった後に気持ちが沈む思い、解ります。
でも、どこか心をガシッとつかまれた感じがして妙に余韻が残る作品なんですよね。
空気人形に空気を入れるシーンは本当に官能的でしたね。
あれはペ・ドゥナだからこそ醸し出せる清潔感と雰囲気なんだと思いました。
彼女の髪型、可愛かったですよね!
ぜひ、myrtilleさんもボブにTRYしちゃって下さいな♪
僕もその昔、『トレインスポッティング』のレントン:ユアン・マクレガーを真似て、
後に三分刈りの坊主頭にした経験アリです。
友人や職場の仲間にかなりビックリされましたけどね。笑

『南極料理人』
myrtilleさんも好きな作品となったんですね!
あの堺雅人さんにはヤラれちゃいました。
魅力的な笑顔に加え、料理(仕事)も出来て、家族想いで…完璧でしたね。
次は結婚詐欺師に扮する『クヒオ大佐』ですよ♪
2009.10.12 21:58 | URL | #d/k.Dt.. [edit]

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