チェス・レコードとスペインとペドロ。

キャデラック・レコード ~音楽でアメリカを変えた人々の物語~
a.『キャデラック・レコード ~音楽でアメリカを変えた人々の物語~』(2008)
音楽のルーツを描く伝記物には惹かれる。
そうは言うものの、この作品の肝となる【R&B】を日常生活であまり聴くことはない。
もちろん実在したレコード会社チェス・レコードのことも、
そこに在籍していたアーティストたちのことも知らなかった。
かろうじて、チャック・ベリーの名前を知っていたくらい。
観る決め手になったのは、
好きな男優のひとりであるエイドリアン・ブロディが主演だったから。
演じる役はポーランド系移民でチェス・レコード創設者であるレナード・チェス。
相変わらずひょうひょうとした風貌の中、野心家のキャラクターを渋めに演じていた。
もうひとりの主演男優であるジェフリー・ライト(マディ・ウォーターズ役)。
彼の演技がとても素晴らしく、正直お目当てだったエイドリアンよりも強く印象に残った。
キャラクター的にも人間味があって、いちばん親近感を持てた気がする。
ジェフリーの歌唱力もなかなかのものでした。
製作総指揮を兼任したビヨンセ・ノウルズ(エタ・ジェイムズ役)は、
実際にはビリング、ラストオーダーの助演程度の出番。
彼女目当てで観に行くと少し痛い目に遭うかも。
僕はビヨンセの【女優】としての演技を上手いとはまだ一度も思ったことがなくて。
今回も誰もがどこかで一度は耳にしたことがあるであろう名曲『At Last』を
熱唱する【歌手】のシーンはさすがの上手さだったけど…
正直なところ、力みすぎかつ少し過剰なパフォーマンスに思えて、
逆に感動がストレートに伝わってこなかったような。
ハウリン・ウルフ役のイーモン・ウォーカーは役柄に合わせて、
独特な声だけで強い印象が残るのにルックス的にも凄味があって怖いと感じた。
俳優たちの表情のUPを執拗に捉えるカメラアングルが印象に残る。
やっぱり必然的に『Ray/レイ』と『ドリームガールズ』を思い出してしまったなぁ。
この作品でも築いてきた人間関係はお金が絡みだすと、
いとも簡単に崩れてしまうことが描かれていたし。
レナード・チェスの心にお金に関する欲があったにせよ、
彼自身も移民だったからこそ人種差別に共鳴するものがあっただろうに…
結果的にアフリカ系アメリカ人のコミュニティから
彼らを利用している【搾取】だと締め出しを食らう形になるとはなんとも皮肉…。
全体的に俳優の演技は素晴らしいのに、
脚本がひとつひとつのエピソードをサラリとなぞっていくだけで、
本質的な深いところまで描かれていないことが勿体ないと思ってしまった。
その脚本を兼任したダーネル・マーティン監督の演出力も
無難なだけで冴えがなく、もう一捻りがほしいという感じで惜しい。
満足度:★★★☆

セックスとパーティーと嘘
b.『セックスとパーティーと嘘』(2009)
ここ数年、東京&大阪で開催されている、
『第6回 ラテンビート映画祭』に出品されていたスペイン映画。
正しく【セックスとパーティーとドラッグ】に明け暮れる、
スペインの若者のひと夏を描く青春群像劇だった。
物語の舞台となるのは世界有数のリゾート地であるアリカンテ。
彼ら若者の最終目的地はレイブに参加すること。
レイブの語源は【自分に嘘をついて無理矢理盛り上がる会合】からのようなので、
その点でも作品の意図を暗示しているように思えた。
僕的にはどちらかと言えば、あまり好きではない方の自堕落的な青春映画でした。
いちばん解りやすく言うと…
大好きなTVシリーズ『ビバリーヒルズ高校/青春白書』に、
セックスとドラッグを過剰なくらいにエッセンスした感じかな。
とにかく、作品全体からスペインの
エネルギッシュ&パッションが否応なしに伝わってくる。
振り返れば良くも悪くも勢いだけで描いているように感じたのも事実だけど、
中盤以降のレイブ・シーン辺りからは急スピードで盛り上がっていき、
なかなか惹き込まれて良かった。
ただ、やっぱり作品としてのまとまりは弱く、やや散漫的な出来かな。
数多く登場する人物たちの中、いちばん印象に残ったエピソードは…
ストレートの親友ニコ(演じるのはジョン・ゴンサレス)に恋する、
GAY男子トニー(演じるのはマリオ・カサス)のエピソードだなぁ。
相手に気持ちを伝えられないもどかしさや苛立ちをなんとなく理解できたから。
トニーが自暴自棄になっていく中、GAYばかりが集う場所でオーラルされるシーンに
見てはいけないものを見ている感覚に陥り思わずゾクゾクしてしまいました。
真っ直ぐで不器用に生きる青年こそ悲劇的な結末へと辿り着くのだね…。
親友の元カレに恋するカローラを演じるアナ・デ・アルマスが
好きなTV女優であるシャナン・ドハーティーによく似ていて、
とても可愛く心鷲掴み状態になりました。
スペインのTVドラマ界で主に活躍している若手俳優を
たくさん観ることができたので、いい目の保養になったなぁ。
特にMEN’S系は濃い顔立ちだけど、
なかなかのGOOD LOOKING & BODYでした♪
それにしても男女優とも惜しみなく大胆に脱いでくれるので、
その辺りがさすが情熱の国スペインだといたく感心してしまいました。
ちなみにこの作品…一般公開はされずにそのままDVDスルー化決定。
11月27日に『灼熱の肌』へと邦題が変わってのリリース。
興味のある人は、ぜひ。
灼熱の肌
満足度:★★★

ペドロペドロ②
c.『ペドロ』(2008)
これも『第6回 ラテンビート映画祭』に出品されていたアメリカ映画。
観ようかどうか迷っていたけど、
脚本が『ミルク』のダスティン・ランス・ブラックだと知り観ることに。
実在したキューバ生まれのGAYの青年ペドロ・サモラ(1972-1994)を描く。
彼は8歳の時にマイアミへ移住。17歳の時にエイズと診断され、22歳で死去。
その間にHIV啓蒙活動者としてリアリティー番組のTV出演や講演を行っていました。
亡くなる少し前には当時のアメリカ大統領だった、
ビル・クリントンからその活動に対する称賛のメッセージを受け取ったほどの人物。
作品的にはどちらかと言えば、
ペドロ(演じるのはアレックス・ロイナス)自身や活動を描くというよりかは、
彼を支える周りの人たちとの関係や交流を中心に描いているように映りました。
全体的には低予算の中で製作したであろうTV映画的な仕上がり。
まるで実際のペドロ・サモラたちのドキュメンタリー番組を見ているような、
淡々とした中で描かれていくあっさり感がありました。
その辺りはふとガス・ヴァン・サント監督ならば、
もっと上手く演出できただろうなと感じたのも正直な意見です。
僕はペドロ自身よりも彼の実姉であるミリー(演じるのはフスティナ・マチャド)の
存在が大きく印象に残りました。
家族だからこその無償の愛が確実に伝わってくるものがあったから。
ペドロが亡くなる直前、
ミリーに儀式を行うように諭すシーンは目頭が熱くなりました。
ペドロがMTVのリアリティー番組『リアル・ワールド』の中で共同生活をした、
ストレートの友人ジャド(演じるのはホール・アップルマン)の存在と
温もりを感じる対応にもグッときたり。
やっぱりストレートの男性に何の抵抗もなく受け入れて貰えた時の方が、
女性にカミングアウトした時よりも嬉しさは格別だと思えるから。
ただ、ストレートの男性のほとんどがGAYに対して、
『気持ち悪い』と思う方が多いのが現実なんじゃないかな…特にここ日本ではね。
自分が狙われる:対象にされると勘違いする人もいるだろうから。
その辺りはGAYもきちんと分別があるのにね。
だからペドロは最終的に家族も含め多くの人たちに
優しい眼差しで見守られ余生を過ごすことができて、
そういう意味ではとても幸せな人だったんだろうなぁ…と思えた。
それにしてもオープンに思えていた当時のアメリカでさえも、
GAY同士が公の場で手を繋ぐことを
サンフランシスコ以外では躊躇っていたなんて軽くショッキングだった。
ちなみに、僕がカミングアウトした時に言われて嬉しい言葉は。
『あ、そうやったんや』、『うん、とっくに気づいてたよ』、『だから、どしたん?』
…という言葉にホッとするものがある。
逆に実際に言われたことはないけど、いちばん言われたくない言葉は。
『そういうの全然、偏見とかないから』
もうね、この言葉自体にすでに偏見が入っているし、
本当にそう思っていたらこういう言葉自体を口にしないと思えるから。
『気持ち悪い』とストレートに言われるよりも露骨に上から目線を感じる。
いかにも善人ぶった回答だもん。
『ミルク』の感想記事を読ませて貰った時に、そう書いている人がいて気づきました。
…と、ちょっと熱く語ってしまったな。笑
満足度:★★★☆

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2 Comments

RAY says...""
こんばんは。久々のコメント欄、復活ですね!
でもでも、そんな一気に映画レビューアップされてしまったら、どこにコメントしたらいいか困るやんっ・・・とツッコミを入れてみる私。(この関西弁の用法、合ってます??)

私事ですが、最近、音楽生活と絵描く時間に、どっぷり時間を使い過ぎてて、あまり新作映画観てないんですよね。
(別記事ですが)「空気人形」は映画館で予告を観たので、ネットでリサーチしてみたんですが・・・どうやら私はちょっと苦手な作品かも??
かなりグロなツライ描写がありそうで偏頭痛になってしまうかも。
なので観賞はやめておきますね 苦笑

>『そういうの全然、偏見とかないから』

あー、なんかこれって「大丈夫ぅ?心配してたのよぉ。」とか優しい声で言いながら、実は「他人の不幸は蜜の味よ」的に喜ぶオバチャンとかの偽善に似てますね。
そういう時って壁に映っているその人の影に、しっぽがついているのが見えたり。(←すごい妄想族)

ちなみに私はよく考えてみたら、学生の時から、男友達の中のGAY率、高いかもデス。
でもカミングアウトとかされた記憶があまり無くて、フツーにその友達がカレシの話してきて、「ふーん、そうなんだぁ」みたいな。
あのOasisからノエルが脱退したって聞いても「ふーん、そうなんだぁ」ってつぶやいた私なので 笑
2009.10.10 02:34 | URL | #ld/yCnUI [edit]
Elijah(管理人) says..."RAYさん。"
RAYさん

こんにちは。ぼちぼちとコメント欄を復活させようと思って。笑
>どこにコメントしたらいいか困るやんっ
↑やや、合ってます。笑
正解は『どこにコメントしたらいいんか分からへんちゅーねん!』です。笑笑

『空気人形』
うーん、RAYさん的にはどうなんだろう??
僕は良かったんですけど、一緒に観た女子友達曰く、
『変わった映画…なんて表現したらいいのか分からない』と言っていました。
確かに人には率先してオススメできないし、
潔癖気味の女性には特にオススメできないですね。
グロなツラい描写に関しては、
人を刺したりと性行為に関する不快に思えるシーンがあることは間違いないです。

『ペドロ』
そうですね。『他人の不幸は蜜の味』的な感覚に似ている部分があると思います。
同情しているふりをして、実は善人になっている自分に酔いしれているというか…
そういう自分自身のことが好きというか。
僕の周りの女子友達は、大抵僕が初めてのGAYだったりします。
彼女たちの中でGAYという存在は、
それこそ映画やTVの中で出会う人みたいな感覚だったんだろうと思います。
僕はカミングアウトをすることは相手に対する礼儀、
その人に対する信頼の証だと思っているところがあるので、
ひとつの使命感的な感覚でしてしまいますね。
あ、RAYさんの対応の仕方はGOODです!笑
それから…oasis。
ついにリアムがThe Times誌のインタビューでoasisの終結宣言しちゃいましたね。
きっとRAYさんはまた、『ふーん、そうなんだぁ』ってつぶやいてそうですけど。笑
2009.10.10 11:32 | URL | #d/k.Dt.. [edit]

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