ダーレン・アロノフスキー×レスラー。

レスラー
『レスラー』(2008)
ダーレン・アロノフスキーは長編デビュー作『π』(1997)から
追いかけている監督のひとり。
2作目の『レクイエム・フォー・ドリーム』(2000)は生涯のBESTに入るくらい好き。
πレクイエム・フォー・ドリーム②
4作目となる今回は題材とキャストに惹かれるものがなかったので
映画館で観るのをスルーしようと思っていたんだけど、
既に観ている人たちの評価が高かったこともあってやっぱり観に行くことにした。
アロノフスキー監督の作風はかなり独創的なので、
観るにはある程度の覚悟とエネルギーが要る。
それは一貫して【死】と隣り合わせの描写になっているせいもあると思う。
『レスラー』もそうで予想通り、明るさのない作品だった。
ただ今回はこれまでの中で、いちばんシンプルで解りやすいストーリーだったと思う。
僕自身はスポーツが得意ではなく、むしろキライだったりする。
その流れでスポーツ観戦にも全く興味が湧かない。
特に格闘技系はいちばん苦手だったりする。
それは確実に痛みが伴うプレイを直視することが生理的に耐えられないから。
なので、この作品で描かれるレスラー同士の対決シーンに、
何度も歯を食いしばり目を覆いたくなりながらもどうにか観ていた。
今回、この作品を観て興味深かったことがある。
それはレスラー同士がリスペクトし合っていたり、
悪役の人が実は礼儀正しくいい人だったり。
試合前やリング上で使用する武器や技の打ち合わせをしていたり。
レフェリーも協力的な仲間のひとりなんだろうと感じる場面があったりしたこと。
…その光景にリング上の対決は単なる身体と身体のぶつかり合いではなく、
人間の情と情のぶつかり合いなのだと感じた。
互いの存在を認め合った上で成り立つものというか。
ランディ・ロビンソン役のミッキー・ロークの演技は想像以上に素晴らしかった。
キャラクターを超越して、見事なくらい一体化していた。
実はあまり彼のことが得意ではなかったんだけど、
この役に関してはアカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞しても
おかしくないほどのパフォーマンスだった。
もうミッキー・ロークにしか演じることが出来なかったんじゃないかとさえ思わされた。
『俺にとっては外の現実の方が辛い』と言うランディの台詞が印象に残る。
かつて一世を風靡した人間が一般の職業に就くほど辛いものはないだろう。
これまで何十年も当たり前のように立っていたリングから一度遠ざかることで、
ようやく自分の本当の居場所と必然性を見出せたのだろう。
クライマックスの試合。心配と痛々しさで観ていられないはずなのに、
ランディの魂の叫びとただならぬ覚悟が伝わってきて、
気づけば食い入るように彼を見つめ涙が溢れていた。
会場のオーディエンスが絶叫しながら応援する気持ちを初めて理解できた気がする。
余計な表現が一切ないラストシーンに、アロノフスキー監督の潔さを感じた。
崇高さえ感じてしまう、とても強く心に刻まれる秀逸なラストカットだった。
エンドロールに流れるブルース・スプリングスティーンの曲も見事なくらいハマる。
…僕の中で格闘技に対する見方が少し変わったような気がした。
それはリングにすべてを賭ける男の熱い生き様を確かに感じ取ったからだと言える。
レスラー
満足度:★★★☆

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4 Comments

sabunori says..."こんばんは★"
Elijahさん、おじゃましまーす。
ダーレン・アロノフスキー監督の作品を観たのは初めてな気がします。
ご紹介されている「レクイエム・フォー・ドリーム」に興味津々。チェックチェック。
この「レスラー」はシンプルなストーリーもよかったのですが、
Elijahさん同様格闘技に疎い私はやっぱり対戦相手との綿密な打ち合わせや
シャイで礼儀正しい悪役レスラーの素顔に新鮮な驚きを感じました。
それからランディが試合に臨むときに形から入るあたりにも。
まずは髪を染めて、次に日焼けサロン通いでしたもんね。(笑)

あのラストシーン、素晴らしかったですね。
2009.06.27 00:33 | URL | #JalddpaA [edit]
Elijah(管理人) says..."sabunoriさん。"
sabunoriさん

こんばんは!
sabunoriさんは初ダーレン・アロノフスキー体験だったんですね。
僕はついつい監督で作品選びをしてしまう習性があります。
『レクイエム・フォー・ドリーム』はかなりHEAVYな作品ですので、
精神状態のいい時に見て下さいね。
『レスラー』はレスラー同士の裏話を聞けた感じになれたのも良かったです。
よくよく考えれば、日常生活の中でも悪役顔(失礼)の人が意外と優しかったりしますもんね。
ランディの形から入る念入れも意気込みが伝わってきて良かったです。
日々の訓練やお手入れはやっぱり大事なんですね。
はい。あのラストシーンは本当に素晴らしかったです!
男の哀愁も切々と伝わってきました。
2009.06.28 17:40 | URL | #d/k.Dt.. [edit]
湛 says...""
Elijahさん こんにちは。
『レスラー』良かったんですね。
実はこの映画、迷っている中に終わりそうで行けずじまいです。
ときめいていた頃のミッキー・ロークにも興味無かったのと、
私もプロレスやスポーツ全般に強い興味が無いせいもあり、
二の足を踏んでしまったのですが、
レポートを拝読して「しまったかなあ!」と、ちょっぴり後悔。
ちらっと観る気も起きたのは、エヴァン・レイチェル・ウッドが
出演していたからなんです。
彼女も子役の頃から目を付けてた一人♪
(あ~何だかストーカー気分な自分発見です・・・苦笑)
確か娘役だったと思うのですが、うろ覚えなので間違いかも知れません。
トンチンカンなコメントだったら無視してくださいね。
美しい頃のロークにも心動かされなかったのだから、
(内容は別として)彼に今更「きゃ~♪」もないでしょうし、
まあ、仕方ない、終わっちゃうんだからDVD待ちで・・・。
(かなり負け惜しみです・・・泣)。
2009.06.29 11:50 | URL | #jPSsrOn2 [edit]
Elijah(管理人) says..."湛さん。"
湛さん

こんにちは。
はい。『レスラー』口コミ通り、良かったです。
実は僕もエヴァン・レイチェル・ウッドの存在にチラッと惹かれたというのもありました。
彼女の最近の出演作『アクロス・ザ・ユニバース』と『ダイアナの選択』での
演技が印象に残っていたので。
彼女の子役時代と言えば『サーティーン あの頃欲しかった愛のこと』ではなくて、
『プラクティカル・マジック』でのサンドラ・ブロックの娘役のことでしょうか。
それか僕は未見ですが、ケヴィン・ベーコン主演の『ウィズ・ユー』辺りかと。
『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』でキルスティン・ダンストと
最終オーディションまで役を争ったことも有名ですよね。
今回の『レスラー』では20歳そこそことは思えない抜きんでた演技を披露していましたよ。
ミッキー・ロークに関しては僕も湛さんと同じで、
全盛期の頃の彼には惹かれるものがなかったです。
いつもニヤけた顔をしている人だなぁと思っていました(失礼)。
最近だと『ドミノ』と『シン・シティ』での演技が印象に残っていますね。
今回の役に関しては本当に彼にしか出せない味のある演技を披露していたので、
それだけでも見る価値があると思いますよ。
確かに『きゃ~♪』とはならないでしょうけど。笑
機会があればいつか見てみて下さいね。
2009.06.29 12:28 | URL | #d/k.Dt.. [edit]

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