WITHOUT HOPE.

ミルク
『ミルク』(2008)
※ネタバレに敏感な人は注意!※
●観た理由●
僕の今月本命4作品の内、3作目。
1970年代に実在した政治家ハーヴィー・ミルクの人生に惹かれて。
ショーン・ペンを始めとするエミール・ハーシュ、ディエゴ・ルナ、
ジェームズ・フランコら男優に惹かれて。
GAYを題材にした内容だから。
●豆知識●
もともとはオリヴァー・ストーン監督&ロビン・ウィリアムズ主演の企画だった。
ガス・ヴァン・サント監督へ最初に企画が流れた時のハーヴィー・ミルク役の候補は
ショーン・ペンとトム・クルーズ。紆余曲折を経て最終的にショーンと決定。
その間に、別作品としてブライアン・シンガー監督が関わる企画もあった。
ジョシュ・ブローリン演じるダン・ホワイト役はマット・デイモンに内定していたが、
スケジュールの都合で降板となった。
ダン・ホワイトが犯行に及んだ理由のひとつとして、
彼自身がクローゼットGAYだったという説もある。
●スタッフ●
監督はガス・ヴァン・サント。
どうも僕と相性が合わない人だったけど、『エレファント』以降から評価が変わった。
『ミルク』も淡々としたドキュメンタリー・タッチで描きながらも、
これまでの彼の監督作の中ではいちばん観やすく作ってあったと思う。
撮影監督はハリス・サヴィデス。
サント監督とは『エレファント』を始め、5度目のコラボレーション。
彼が醸し出す映像の色合いはタマらなく好みです。
若き俊英ダスティン・ランス・ブラックの脚本は、
無駄なく的確に伝えるべきことを描いていた。
その構成力と頷かずにはいられない台詞の数々はお見事!
●キャスト●
いちばんGAYとは程遠い位置にいるはずのショーン・ペンの演技は正に神技的。
GAY特有の仕草や話し方が見事なほど表現されていました。
もうハーヴィー・ミルクその人にしか見えなかった。
第81回アカデミー賞主演男優賞受賞も納得の素晴らしいパフォーマンス!
適度に身体も鍛えていたし、いつもより若々しく見えたなぁ。
クリームパイを仲間から顔に投げつけられた時のおどけた姿は、
素直に可愛いかったです。笑
ショーン・ペン×エミール・ハーシュ。
『イントゥ・ザ・ワイルド』の師弟関係が今度は俳優同士として共演。
この作品で魅せるエミールの可愛らしさは必見。
ディエゴ・ルナの愛くるしい表情とは裏腹のわがままな役柄はちょっと意外でした。
ディエゴ演じるジャック・リラも哀しみを背負って生きていたんだ、と。
ひとりだけ終始、苦虫をつぶしたような表情で役を演じ切るジョシュ・ブローリン。
もう『グーニーズ』やTVシリーズ『ヤングライダーズ』の頃が嘘のように、
名バイプレイヤーになりつつあります。日本公開も決まった『ブッシュ』では主演だね。
そして、いちばん印象に残ったのはスコット・スミス役のジェームズ・フランコ。
ミルク
彼のなんとも言えない優しい表情にノックアウトされてしまいました。
『あれ!?こんなに男の色気があったっけ!?』と思えるくらい。
『スパイダーマン』シリーズの頃は何にも感じなかったんだけどなぁ。苦笑
特にミルクとスコットがN.Y.からサンフランシスコへ来て間もない頃、
一緒に暮らす部屋でのモノクロのスナップSHOTの笑顔が素敵だった。
役柄的にもミルクに付かず離れず、良き理解者的な立場で好感が持てました。
あぁ、ミルクとスコットのラブシーンをもう少しだけ観たかった。笑
attitudeジェームズ・フランコ②
そうそう、今回のキャストたち。
最後に映し出される写真の本人たちと似ていたことに驚かされた。
特にダン・ホワイト:ジョシュ・ブローリンと、
クリーヴ・ジョーンズ:エミール・ハーシュは特徴を掴んでいてそっくり!
●印象に残ったシーン●
ミルクが聴衆の前で演説するシーン。
回を追うごとに聴衆の数が増えていき、その光景は圧巻!
特にミルクの最後となってしまったスピーチは胸にくる。
大人数でパレードするシーンも印象的だった。
殺害される直前のミルクとスコットの電話での会話。
GAY同士の恋愛って、身体の繋がり=SEXの存在が大きいと思う。
仮に互いの身体に飽きたとしても、違う理由で別れたとしても、
この2人の関係のように精神的に支え合える姿に自分が求める理想を感じた。
ミルクが銃弾に倒れた瞬間、最期に見る『トスカ』の垂れ幕の場面も印象的。
●この映画を観て思ったこと●
僕自身がGAYであるだけに、強く関心を持って観ていた。
僕は友達やこれまでの職場ではカミングアウトしてきたものの、
肝心の両親には未だ言えていない状態…いや多分、一生言えないと思う。
GAYとして生まれてしまった自分、
結婚をしない理由や両親に孫を見せてあげられないことを考えると、
歳を重ねるごとに後ろめたさと申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
…かと言って、GAYというコミュニティの中で生きるのも正直なところ好みではない。
若さと美に執着する弱肉強食の世界観を感じて、どうも居心地が悪いのだ。
じゃあ自分自身はどこで生きるのか?
それは今でもずっと答えが見つからない永遠なるテーマなのだ。
本当の意味での自分の心が落ち着く場所は、
【映画】を始めとする趣味の世界なのかもしれない。
願わくば差別と偏見のない世界で生きたい。
けれど、自分自身の中にも他人に対する多少なりの差別と偏見を持った心があるので、
(自分自身が)大きな声で『差別と偏見を失くそう!』とは
絶対的な立場で言えないことも事実なのだ。
人は無垢な心じゃないと権利を主張してはいけないと
どこかで思ってしまう自分がいるので、本当に難しく思える。
…僕はどうしても自分がGAYであることに迷いを感じずにはいられないのだ。
ただ今回この映画を観て、僕はハーヴィー・ミルクという人物に
『大丈夫だよ』と背中をポンと押して貰えた気持ちになれた。
自分のアイデンティティーを受け入れ、自分自身の存在に誇りを持って生きることに
大きな意味があることを気づかされ教えて貰えたように感じた。
自分自身に正直に生きることがどれだけ大切であるかも。
ミルクという人がどれほど魅力的だったのか…観ているだけで十分に伝わってくる。
GAYだけに限らずマイノリティの人のために奔走する姿。
その光景に胸が熱くなった。
彼の最期はハッピーエンドとは決して言えないけれど、
どこか爽やかな気持ちにさせてくれたんだよね。
そう、この映画でも今のアメリカに必要な【希望】が描かれていた。
ハーヴィー・ミルクが遺した功績はとても大きなものがある。
その遺志を受け継いだ彼の分身たちが、
今も活動を続けていることを心から嬉しく、そして有り難く思える。
これからはGAYとして、もう少し胸を張って生きられそうだ。
…とは言うものの、それなりに謳歌はしているけどね。笑
いつかサンフランシスコにあるカストロ通りを訪れてみたい。
僕にとって、初めて心から大好きだと言えるGAY映画の誕生!
『ミルク』の日本公開を記念して、
ドキュメンタリー映画『ハーヴェイ・ミルク』のアンコール上映が決定。
これも、ぜひ観に行こうと思う。
●第81回アカデミー賞作品賞ノミネート5作品の内、4作品を観ての順位●
今のところ、①『ミルク』②『スラムドッグ$ミリオネア』
③『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』④『フロスト×ニクソン』かな。
やっぱり『ミルク』は自分にとって大きな意味を持つ作品だから。
…とは言うものの今回はどれもこれも良質の作品ばかりなので、
ほとんど大差がありません。
さて、最後の5作品目の『愛を読むひと』の評価と順位はいかに!?
●満足度●
★★★★★

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6 Comments

ヒデ・グラント says...""
『ミルク』 はとても心に響く作品だったね。
ちょうどミルクと同じ世代ということもあって、冒頭のシーンの台詞
”40歳になろうとしているにも関わらず、人生の中でまだ何も成し遂げていない”
そしてラストの
”希望がなければ人生は生きる価値などない。だから希望を与えなくては!” 
という言葉には感銘を受けたなぁ。

14年ほど前、僕も、あるGAY団体のリーダーと付き合ってたことがあって、付き合い始めた頃は使命感に燃える彼のことがカッコよく思えたんだけれど、二人の関係よりも、偏見や差別との戦いに没頭する彼についてゆけず、映画さながら関係が終わってしまったという経験があります。今でもその人の名前をネットで見つけることがあるんだけれど、革命をつづけていること(一つのことに人生を捧げるその生き方)には敬意を払います。
2009.04.23 04:37 | URL | #IOg9bXQk [edit]
Elijah(管理人) says..."ヒデ・グラントさん。"
ヒデさん

>”40歳になろうとしているにも関わらず、人生の中でまだ何も成し遂げていない”
↑この台詞、僕も印象に残りました。
僕も似たような気持ちを感じることがありますから。
ラストでもう一度、このシーンが流れた時もグッときましたね。
>”希望がなければ人生は生きる価値などない。だから希望を与えなくては!” 
↑この台詞は、正にその通りだなと強く感じました。
今の世界的な不況にも当てはまりますよね。
ミルクが発する言葉は本当に身に沁みるものばかりでした。
すべての言葉が現実味を持ち、重みと深みがありましたね。

革命を起こそうとする中心的な人物と、
パートナーとして付き合っていくのは容易なことではないだろうなと思います。
僕もスコットの立場だったら、複雑な想いを抱えてミルクの元を去っていたような気がします。
自分だけの存在でいてほしいというエゴですよね。
こういう場合は傍観的な立場で支え続けられる方がいいのかもしれないですね。
そう考えると革命家のパートナーになっている人は、
もの凄く理解力があるということですよね。尊敬に値します。
2009.04.23 13:39 | URL | #d/k.Dt.. [edit]
RAY says...""
Elijahさん、こんばんは。
最近、音楽生活と仕事の二色モードで、なかなか新作映画を観に行けていませんが、この作品は観逃したくないなと思っている一本です。

”40歳になろうとしているにも関わらず、人生の中でまだ何も成し遂げていない” という台詞から、なんとなく中島敦という作家の小説「山月記」に出てくる

「人生は何事をも為さぬには余りに長いが、何事かを為すには余りに短い」

という一文を思い出しました。
私もOver-30なので、こういう台詞には、いろいろ感じるものがありますね。
とにかく、時間を作って、早くこの作品は観に行きたいです。

>じゃあ自分自身はどこで生きるのか?
>それは今でもずっと答えが見つからない永遠なるテーマなのだ。

たぶん、誰にとってもそうかもしれないんですが、「どこで生きるか」を探すと答えは見つからなくて、それよりは視点を変えて「自分が好きな世界」に没頭すると、そこにやがて「自分の居場所」が自然に形成されていく気がします。

「【映画】を始めとする趣味の世界なのかもしれない。」というElijahさんの言葉と、伝えたいところは一緒かもしれません。

旧作ですが「司祭」ってイギリス映画、ご覧になりました??
この作品もきっとElijahさんの心に響くような気がしますので、機会があればぜひ☆
私の大好きな作品でもあります。
2009.04.23 20:45 | URL | #ld/yCnUI [edit]
Elijah(管理人) says..."RAYさん。"
RAYさん

こんにちは。
RAYさんもこの『ミルク』に興味を持っているんですね。
きっとRAYさんもこの作品から何か感じ取るものがあると思いますよ。
正直、GAYではない人の感想も気になっています。
ぜひスクリーンで堪能してきて下さいね。

自分自身が生きる場所。
RAYさんが伝えたいこと、正にその通りだと思います。
自分が好きな世界観こそ、自分自身を見出せる場所でもあるんですよね。

『司祭』は見たことありますよ。僕も好きな映画の一本です。
見た当時は衝撃的な内容にかなり驚かされた記憶があります。
この映画に主演していたライナス・ローチのファンになるきっかけの作品にもなりました。
彼とレイフ・ファインズがウィリアム・シェイクスピアの演目『コリオレイナス』で
日本へ来日公演した際、東京の赤坂まで舞台を観に行ったくらいです。笑

そうそう。6月に日本公開されるトラン・アン・ユン監督の『アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン』。
RADIOHEADが音楽を共同で担当しているみたいですね。
スタッフ・クレジットで名前を見つけた時、ちょっと驚きました。

RAYさん。優しいコメントをどうもありがとうございました。
2009.04.26 11:59 | URL | #d/k.Dt.. [edit]
ken says..."続く望み"
ガス・ヴァン・サントは完全に演出を自分のものにしていて、
各俳優の魅力を引き出してましたね。
巧みな若手の配置がリズム感を生んでましたし。
特にジェームズ・フランコのさりげない存在感は、
今までいちばん繊細にして骨太に顕れてました。
目の陰影で愛しさも寂しさも雄弁に。
なによりすなおにカッコイイ!(笑)
エミール・ハッシュとディエゴ・ルナもぴったり。
ゲイであるダスティン・ランス・ブラックの脚本も、
細部にまで気配りがされていて心地よかったです。

で、圧倒的な説得力で映画を証明していたのは、
もちろんショーン・ペン!
しょうじき好きなタイプの俳優ではなかったんですが、
あまりにも完璧な成りきりぶりに完敗です。
実在の人物な上にこれまでのベクトル違いもものともせず、
鮮やかにミルクを演じていました。
対するジョシュ・ブローリンも控えめながら、
いい味を出してたと思います。

アイデンティティのよりどころはそれぞれ違いますが、
きっとこの作品のメッセージは伝わりますよね。
あらためてゲイとして生きることの意味を、
深く心に刻みました。
2009.04.26 19:09 | URL | #VaGrzmSs [edit]
Elijah(管理人) says..."kenさん。"
kenさん

ガス・ヴァン・サント監督は本当にこの作品を自分のものにしていましたよね。
正しく適任だったと思います。
俳優たちの手綱の捌き具合もお見事でしたし、
その俳優たちも生き生きと演技をしているように感じました。
ただ、『HSM』のルーカス・グラビールを始めとする若手男優たちの
出番の配分が勿体無いなと思えたのも正直な感想なので、そこが少し惜しいですね。
おっ!kenさんもジェームズ・フランコを絶賛なんですね!
確かにさりげない存在感でありながらも、グイグイと惹きつけられる魅力がありましたよね。
僕的には好みの問題でしょうがジョシュ・ブローリンより、
ジェームズの演技の方がオスカー・ノミネートに値する気がしました。
あぁ、スコットのような彼氏が欲しいです。笑
ダスティン・ランス・ブラックのGAYであるが故の
熟知したストーリーラインは本当に心地よかったですよね。

kenさんはショーン・ペンが苦手だったんですね!
そうですね。今回の彼は本当に文句のつけようがないくらい、
完璧に役に成りきっていましたよね。
他の作品では時々オーバーアクト気味に感じる時があるんですが、
ハーヴィー・ミルク役に限ってはそれもなくその者自身になっていたと思います。
これまで僕の勝手なイメージでGAYが苦手だと思っていたショーンですが、
この作品の素晴らしい演技とオスカーでのスピーチで惚れ直しました。

GAYの中でも抱える想いは人それぞれだと思います。
でもkenさんと同じく、この映画が伝えるべき想いが各個人に必ず届いていると信じています。
kenさん、互いに誇りを持ってこれからもGAYライフを謳歌しましょうね!
ひと足早く、kenさんの『ミルク』の感想を知ることができて嬉しかったですし、
なんだか得した気分になれました。笑
2009.04.26 21:28 | URL | #d/k.Dt.. [edit]

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