空中庭園(日本)

【たったひとつだけ、私は家族に隠していることがある】

女流作家・角田光代の連作短編小説の映画化。
かつてニュータウンと呼ばれた団地を舞台に、
【家族間では秘密をつくらない】事をルールと決めた4人の家族の崩壊していく様と再生を描く。

この映画は公開前に多くのケチがついた。
主演女優の小泉今日子のあて逃げ事故に始まり、
監督兼脚本の豊田利晃の覚醒剤所持及び使用での逮捕で終わる。
とても映画にとって、マイナスなイメージとなった。
正直、僕は薬物中毒者を軽蔑してしまう傾向があるので、
事件を知った際にこの作品に対する興味が失せてしまった。
覚醒剤を打ちながら、これを撮っていたんだろうなと思うと不愉快で。
でも、予告編を見て、どうしても見たいと思った。

個性的なカメラワークに酔いしれる。
いろんな角度から被写体を捉え映し出す。
正に、その映像はトリップをしているようであり、同時になんとも言い難い不安感を煽る。
このカメラワークにオープニングから心を鷲づかみにされてしまった。
『あっ。きっとこの作品、好きになる。』…直感だった。

初めてKYON2の演技が巧いと思った。
なにか脱ぎ捨てたような開放感のあるドスの効いた演技。一見の価値がある。
俳優陣はみんな役柄にぴったりで、個性的な演技を見せてくれた。
鈴木杏、板尾創路、広田雅裕、國村隼、瑛太、今宿麻美、勝地涼、ソニン、永作博美、大楠道代。
特にKYON2の母親・木ノ崎さと子役の大楠の演技は素晴らしい。『春の雪』に続く名演技だった。

理想の家族を持つことに余念がなかったひとりの主婦の思い。
その理想を守るために常に笑顔で生きてきた。
笑顔の裏に隠された真実の顔=本質。

それが思い込みだってこと。思い込んでると、本当のものが見えないって話

劇中に語られる印象的なセリフ。
その通りだと思った。
KYON2演じる京橋絵里子は、ある種の僕でもあった。
人から羨望の眼差しで見られたい。
それを守るためには、どんなことだって我慢する。
不安が妄想を呼び、破滅へと進む。
幸せの真ん中にいるというのに、それ以上のものを求めようとする。
人生においても完璧主義。

その光景に泣きたい訳でもないのに、自然に涙が頬を伝う。
焦燥感に切なさ。いろんな思いが胸に伝わってくるせいだろうか。

救いのない結末になるのだけは、ごめんだと思った。
けれど、そこには形のある結末が用意されていた。
ラストシーン。なにげなく映る家族の食卓。
いつもの朝が戻っていた。

本当に大切なことは、墓の中まで黙って持ってくもんよ

言わなくてもいいことはある。
それと同じくらい、言わなくちゃいけないこともある。
その見極めはとても難しいけれど。
これが、僕なりの答え。

豊田監督の人間の根底にあるもの(=暗部)を映し出す描写は見事なものだった。
それは、彼の作品でもある『青い春』にも言える。
せっかくの才能を無駄にしないよう、更生して社会復帰できる事を切に願う。

20051107212117.jpg

動物園前シネフェスタ4/単独

男性サービスデー1200円→1600円

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2 Comments

ree says...""
日本映画はあまり劇場で見ない方だけど、
これはキャストも良さげ、メランコリーな感じ
に惹かれちょっと見たいな~と思ってました。
でも東京では確かユーロスペースとかだった
のでサービスデーないとこだったし、劇場で
見ようか考え中。
大阪ではシネフェスタって又コアなとこです
よね。。
でもイライジャさん評かなりイイし、期待は
できそう。

ミーハーだけどキョン2好きなんですよ~
見た目も生き方も、女優としても。
数年前に見た「風花」の小泉さんも良かった
し、普段元気そうな感じだから、陰ある女性
を嫌味なく自然に演じる女優・小泉今日子
特に好きです。
今作もちょっと悩ましげな感じだし。

板尾が旦那さんなのも面白そう、宮迫辺りだ
と濃度高過ぎそうだしね。
他のキャストも興味深い。
2005.11.13 20:02 | URL | #- [edit]
Elijah says..."reeさんへ。"
正直、この作品にコメントが付くとは思っていなかったので、嬉しいです。

うん。確かにメランコリーな感じだった。
大阪はもともとテアトル梅田での公開だったんだけど、例の事件で公開取り止めになったいきさつがある。
結局、動物園前とシネ・ヌーヴォでの公開となったけど、ロードショーではなくて、モーニングとかレイトショーでの公開扱いだよ。

KYON2は正直言って、あんまり演技力がないと思っていたので(持久力がなくて、瞬発力【TV-CM向き】がある感じ)、今回の演技で驚かされたところがあって。
前作の『SURVIVE STYLE5+』は痛々しかったもん。

宮迫さんもお笑い出身にしては演技力があって好きだけど、やっぱこの夫役は板尾さんで正解だったと思う。
こういう地味なサラリーマン役が似合うんだよね。『ジョゼ虎魚』でも然り。
2005.11.17 14:38 | URL | #d/k.Dt.. [edit]

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