フランスと大阪と赤壁。

ベティの小さな秘密ホームレス中学生
画家と庭師とカンパーニュレッドクリフ Part Ⅰ
a.『ベティの小さな秘密』(2006)
これ、そもそも邦題のつけ方が間違っていると思う。
原題の意味は『私はエリザベスと呼ばれます』だから。
英語タイトルも『Call Me Elisabeth』(私をエリザベスと呼んで下さい)だったので、
邦題もそこから引用すべきだったんじゃないかな。
この『ベティの小さな秘密』だと、かなりニュアンスが変わってくるもん。
それ以上に日本の予告編にダマされた感あり。
あの可愛らしいテイストでの紹介の仕方はないでしょ!
脚本が『アメリ』を書いたギヨーム・ローランと前面に押し出されたら、
否応なしに期待を……と言う訳で僕はこの作品を好きにはなれませんでした。
あまりにも予告編とギャップがありすぎたので、
その世界観に入り込むことが出来なかったです。
観ている間、ずっといつになったら明るい展開になるんだろうと期待していたので。
そう。この作品から常に漂っていたのは【暗さ】でした。
主人公である10歳の女の子ベティの心の不安と闇の部分を垣間見ている感じ。
最終的には(家族に)もっと構ってほしいと言うよりも、
『(子ども扱いではなく)きちんとひとりの人間として扱ってほしい』と
切に訴えているように映りました。
それが本来のタイトルに反映するのだと思えるんだけど。
ベティが途中で出逢う青年イヴォンの存在は彼女にとっておとぎ話の王子様であり、
観客にとって無垢で天使のような象徴だったのかなぁ…と考えたり。
ベティの大人びた口ぶりには驚かされました。
まるで人生を悟っているかのような発言の時は、もう【少女】には見えなかったです。
ベティ役のアルバ=ガイア・クラゲード・ベルージは【可愛い】という言葉よりも、
(お人形のように)【綺麗】という言葉の方が似合っていました。
…予告編の第一印象って大事だね。
最初からこの作品が持つ雰囲気で作られていたら、きっと受け入れられたのになぁ。
満足度:★★☆
b.『ホームレス中学生』(2008)
余り評判が芳しくなかったので期待せずに観たせいか、なかなか良かった。
思いのほか真面目に作ってあったので、それには少し驚かされた。
前半のコミカルに描いているシーンは笑うどころか、だんだんと切なくなってしまった。
ただ、前半の見どころであるはずの公園の描写が今ひとつだったかな。
そこで起きたエピソードを羅列しているだけで終わっていて、
面白味やリアリティがなかった。
作品自体が面白くなってきたのは、
主人公・田村裕が友達の家へ晩御飯を食べに行く辺りから。
その友達の両親の面倒見の良さと寛大な心に、素直に涙がこぼれた。
この作品、キャスティングは成功していると思う。
特に兄・研一役の西野亮廣(キングコング)が印象に残る。
彼の本職が俳優ではないからこそ出せる自然な演技だった。
アドリブに思える台詞や【間】の取り方が絶妙。
小池徹平との牛丼屋でのシーンはこの作品いちばんのハイライトだと思えるくらい、
惹きつけられる演技を披露していた。
正直、主演の小池くんより光っていて、僕の目はずっと西野くんを追いかけていた。
姉・幸子役の池脇千鶴も含め、この3人のバランスが最高に良かったな。
関西出身である3人の嘘臭くない【ほんまもん】の大阪弁が何よりも心地いい。
もうね、本当の兄弟のように映ってたから。
家族ってやっぱり一緒に暮らしてこそ、なんぼだと思う。
なので、お兄ちゃんの意見に賛成!
あの父親の身勝手さには辟易してしまった…。
3人で一緒に暮らす環境を整えてくれた地域の民生委員さんの存在も、
生活に困っている人たちのために必要だと改めて気づかされた。
と同時に、ご飯を食べるということの有難みや
食感を楽しみながら食べることにも気づかされたり。
惜しむところはやっぱり古厩智之監督の演出面かな。
全体的にメリハリがなかったし、
これだけのいい素材を上手く使いこなせていないように思えた。
演出次第で、もっと感動できたかもしれない。
満足度:★★★
c.『画家と庭師とカンパーニュ』(2007)
フランス・カンパーニュ地方ののどかな田園風景を背景に描く中年男性2人の物語。
延々と語られる会話劇でもある。
主人公の画家キャンバスがかつての幼なじみの庭師ジャルダンに再会したことで、
少しずつ変化する様を丁寧に描いていく。
多くを語らずとも伝わるものがあるんだなと思えた。
『サン・ジャックへの道』でも好演していた、
ジャン=ピエール・ダルッサン(ジャルダン役)がここでも素晴らしい演技を披露。
日本で云う、団塊世代の男の心情をたくさんの思いで表現していました。
正直、キャンバスを演じたダニエル・オートゥイユよりも彼の方が印象に残ったなぁ。
ジャルダンの台詞に家族の話が出てくるものの、
その家族が実際になかなか登場しない。
実のところジャルダンは天涯孤独で家族が居ることは彼の作り話じゃないか?と
変に勘繰って観ていたら、後半になってちゃんと出てきました。汗
もし彼の作り話だったら、それこそ哀しいストーリーだけで終わるところでした。
キャンバスが描く絵。最初と最後とではかなり絵のタッチが変わっていたなぁ。
なんだか彼の人生さえも明るくなったように思えました。
最近のオートゥイユは『ぼくの大切なともだち』といい、こういう役柄に惹かれるのかな?
昔はロバート・デ・ニーロに似ていると思っていたけど、
今じゃすっかり見分けられるようになりました。
『ピエロの赤い鼻』といい、ジャン・ベッケル監督作品は限りなく人に優しい。
ラストは哀しみがある中にも、人生に対する清々しさを感じ取れました。
フランス映画らしく端的で余韻の残るエンディングが心地よい。
満足度:★★★☆
d.『レッドクリフ Part Ⅰ』(2008)
まず、僕は元ネタである『三国志』を読んだことがないです。
ジョン・ウー監督の久しぶりの新作は原点回帰的にすべてがアジア色。
正直、もっとアクション色濃い作品かと思っていたら、意外とそうでもなかった。
そうだなぁ…まるでNHKのTV番組で放送しそうな少し堅苦しい作風に思えた。
それくらい、もの凄く丁寧かつ真剣に作っていたんだろう。
でもやっぱり随所にジョン・ウー監督らしい演出が冴え渡っていて、
お決まりの白い鳩が印象的に登場したり、
お得意のアクション・シーンも大迫力で表現していました。
特に【九官八卦の陣】はこの作品いちばんのハイライトで、観ていてゾクゾクしたなぁ。
『三国志』を全く知らなくても理解できるように、
日本公開版独自で冒頭に説明と登場人物を何度もテロップで表記してくれたので、
スムーズに観ることができる配慮があったり。
レッドクリフ Part Ⅰ②レッドクリフ Part Ⅰ③レッドクリフ Part Ⅰ④
とにかく!中国語圏を代表する男優陣の演技が良かったです。
演技でいちばん印象に残ったのは、敵役として描かれていた曹操役のチャン・フォンイー。
憎々しいながらも確かな存在感があり、渋かったです。
ルックスでいちばん印象に残ったのは、孫権役のチャン・チェン。
もともと大好きな俳優ではあるんだけど、今回の演技に惚れ直しました。
特に暗闇で刀を見るシーンの表情は最高に格好よかったです。
ほかには、趙雲役のフー・ジュンも正統派の誠実さを感じました。
実は『インファナル・アフェア 無間序曲』からの隠れファンです。
孔明役の金城武も格好よかったんだけど、役柄的には今ひとつでした。
…だって常に上から『しれーっ』と傍観してるだけなんだもん。
↑もちろん上映後、一緒に観た女子友達から彼の仕事は【策士】なので、
それは仕方のないことだとお叱りを受けました。汗
なによりもウォン・カーウァイ監督組の再共演が嬉しかったです。
特にファイ×チャン@『ブエノスアイレス』。
時空を超えての関係性(周瑜×孫権)だと、ひとり勝手に妄想状態。笑
前半での金城武とチャン・チェンの男前2SHOTシーンもため息ものでした。
いろいろと騒がれたキャスティングですが、僕はこれで十分に堪能できました。
続きが気になる『Part Ⅱ』の日本公開は来年4月とのこと。
ようやくタイトルである【赤壁】での決戦が始まります。
そう。『Part Ⅰ』はいいところで終わるのです…。
満足度:★★★☆

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