クライマーズ・ハイ。

『クライマーズ・ハイ』(2008)
クライマーズ・ハイ
タイトルの意味は…【登山時に興奮状態が極限まで達し、
高さへの恐怖感が麻痺してしまう状態】のこと。
原田眞人監督の作品を観るのは、実に22年ぶり。
『おニャン子・ザ・ムービー 危機イッパツ!』(1986)以来となる。
最近の彼はすっかり社会派のイメージが定着したように思える。
救出された12才の少女の記憶が鮮明に残る1985年8月12日、
群馬県・御巣鷹山で起きた日航機墜落事故。
その出来事を克明に追いかけた地元新聞社の壮絶なる1週間を描く。
畳み掛けるように一気に魅せる原田監督の演出は圧巻!
演技者を揃えた抜群のキャスティング。アイドル系の演技をする者は皆無。
日航機墜落事故はもちろんだが、
会社組織の縮図を見ているようで、やけに生々しかった。
恐らく30代の中間管理職や同世代の人が観たら、
自分の会社に置き換えて観るんではないだろうか。
主演の堤真一演じる遊軍記者(日航機事故全権デスク)・悠木は
理想の上司だと思えた。
こういう上司にめぐり会えていたら、きっと僕は以前の会社を辞めていなかっただろう。
以前の会社では全力投球で働いていたので、やりがいや達成感が常にあった。
でも僕は最終的に会社へ不満を感じて、その場から逃げるように去った。
それは自分の人生の中で、今でも悔いていることのひとつだ。
今の僕は生活や趣味のためにただ働いているという惰性的な感覚へ陥ってしまった。
この映画を観て、久しぶりに仕事に対する男意気や情熱を見せつけられた気がする。
こんな風に自分の目指すところへ向かって、
がむしゃらに働くことがどんなに楽しいことか!
ぶつかり合いはあるものの志や根本となる芯が同じであれば、
共に働いていけると思えた。
かつての自分の意欲を思い出させてもらえた気にもなれた。
それくらい彼らの働きぶりに大いに感化されたのだ。今の自分が確実にヌルい、と。
でも今の自分の現状を変えようとしないのも事実であり、僕の悪いところでもある。
脚本に関しては、横山秀夫の原作を読んだ人からすると納得いかないようだ。
どうやら人物描写が浅い、と。
僕は読んでないが、確かに悠木の家族や友人に対する心情の描写は薄かったと思う。
それでも、十分に見応えのある作品に仕上がっていたと言えるんじゃないだろうか。
上映時間145分の長さはアッという間だった。
もしかしたら、僕自身がこの映画に対して
【クライマーズ・ハイ】状態で観ていたからかもしれない。
ここから、ちょっとミーハー感覚で。
堤真一。もともと好きな俳優だったけれど、
この作品を観たことで、今まで以上にファンになった。
とにかくカッコいい!の一言に尽きる。
主演に相応しい魅力と熱演ぶり。低音ながら、響く声も好きだ。
退職届を出して、社内から立ち去る姿が最高に素敵だった。
社会部県警キャップ・佐山役の堺雅人。今回いちばんのお目当てだった人。
『アフタースクール』とTVドラマ『篤姫』の素晴らしい演技が、
僕の中で注目度UPの男優となった。
ひょうひょうとした表情で、
何を考えているのか全く掴めない演技が非常に上手いと思う。
特に目元と口元で表現するところが印象的。
『クライマーズ・ハイ』でも、その特徴が大いに活かされていたと言える。
普段の柔らかみのある優しい雰囲気とは違う激しい一面も魅せてくれた。
役柄的に印象に残ったのは滝藤賢一演じる地域報道班部員・神沢。
8月、あの初日に御巣鷹山へ記事用の写真を撮りに行き、
陰惨な現場を目の当たりにする。
帰山後、精神のバランスを崩した彼。
今で考えれば、恐らくPTSDの症状だったのだろう…余りにも痛々しかった。
自分の信念を貫き通すことの難しさと同時に感じる、自分自身を信じることの難しさ。
最後に悠木が下した決断は、
後々の事故の真相究明を考えても僕は正しかったと言える。
良くも悪くも、TV『プロジェクトX 挑戦者たち』的な
堅苦しい作品かもしれないと観るのを迷っていたけれど、
臨場感溢れるスクリーンで観ておいて本当に良かったと思える映画だった。

関連記事
スポンサーサイト

2 Comments

ken says..."熱い夏"
前作の「魍魎の匣」があまりにも酷かったので、
期待値マイナスで鑑賞しました(笑)
すると思ってた以上に脚本もしっかりしてて、
何より役者陣が生き生きしてるじゃないですか!
もちろん堤&堺を見に行ってたので、
かなり嬉しい誤算でした。
長尺の割りにだれるシーンもほとんどなく、
集中力も落ちませんでしたし・・・。
でも、高嶋政宏 の扱いが中途半端でした。
けっこう彼天然演技で好きなんですよねー(笑)
原作ではどうなってるのか、
チェックしてみたいと思います。
2008.07.18 06:03 | URL | #VaGrzmSs [edit]
Elijah(管理人) says..."kenさん。"
kenさん

『魍魎の匣』の駄作ぶりは僕も聞いてます。
マイナス(!)鑑賞は正解だったかもしれないですね。笑
今回は原作小説の脚色が巧くいったんでしょうか。
それ以上に演じる役者陣が抜群に良かったですよねー。
kenさんも、堤さんと堺くん目当てで観に行ったんだ!
きっとそういう観客、多いと思いますよー。
期待以上のパフォーマンスを魅せてくれて大満足でした♪
>長尺の割りにだれるシーンもほとんどなく、集中力も落ちませんでしたし・・・。
↑この点はカット数の多い編集の成果とやはり扱う題材の重さなのかもしれませんね。
高嶋政宏の扱いは確かにひどかったですよね。
おまけに冒頭の台詞も聞き取りにくかったですし。
悠木と安西の交流シーンは作品に重要だったようで、原作ファンからは物言いがついてましたね。
ちなみに僕、高嶋兄弟はクドくて苦手です。汗
兄は初めて見た『トットチャンネル』の暑苦しい印象が強く残ってて。苦笑
2008.07.18 18:03 | URL | #d/k.Dt.. [edit]

Leave a reply






管理者にだけ表示を許可する

Trackbacks

trackbackURL:http://eplace.blog19.fc2.com/tb.php/595-18d63466
該当の記事は見つかりませんでした。