BM鑑賞記:様々な人間模様 ver2.0。

実はヒース・レジャーが亡くなる直前に、
一度書いた過去記事を加筆修正しようと思っていた。
なので、かなり長い文章になってます。

★注意!!ネタバレあります★
製作発表の時点から、ずっと観たいと思っていた作品。
『ブロークバック・マウンテン』 (2005)
ブロークバック・マウンテン
舞台は1963年の米国南部ワイオミング。
そこにある【ブロークバック・マウンテン】で出逢ったカウボーイ2人の
20年に及ぶ秘められた愛を描いている。
主な登場人物は4人。
イニス・デルマー:ヒース・レジャー。
ジャック・ツイスト:ジェイク・ギレンホール。
ラリーン・ニューサム:アン・ハサウェイ…ジャックの妻。
アルマ:ミシェル・ウィリアムズ…イニスの妻。

僕はこの作品を、結果的にスクリーンで2回観ることにした。
その理由は…。
1度目は僕自身がgayであるにも関わらず、
gayの視点で観れず、アルマの立場で観てしまっていたから。
結果、イニスとジャックの2人が身勝手にしか思えなかった。
アルマはイニスとジャックが再会した時、
彼らが抱擁してるところを目撃する。
そこから彼女の辛い想いが始まるのだ。
なぜか、イニスが許せなかった。
『ジャックのことが好きなんであれば、結婚して子供を作るなよ。』
『一生、独身でいろよ。奥さん、不幸にするなよ。』
…そう思う自分がいた。
なんて言ったらいいのか…gay云々ではなくて、
【人として】してはいけないことをしてるように思えた。
つまり、『セクシャル関係なく、道徳観のないことするな。
(イニスに対して)ジャックとアルマのどっちにもいい顔するな』と。
なんだろう…イニスとジャックの2人がそれぞれ女性と結婚をせず、
世間から差別と偏見を受けながらでも
2人の愛を貫くストーリーだったら、もっと感動できたかもしれない。
けれど、他人:結婚する女性を巻き込んで嫌な思いをさせて、
そりゃあ自分たちは幸せにはなれないだろう…と思った。
なので、彼らに同情:共感することができなかった。
あえてgay映画とカテゴライズするならば、
『ボーイズ・ドント・クライ』の主人公ブランドン・ティーナの方が、
もっともっと深い哀しみがあったように思えた。
…それは多分、僕自身が彼らの気持ちを理解できなかったからだと思う。
僕は自分がgayだと気づいた時、いちばんの親友も同じようにgayだった。
だから悩みや思うことを、普通に相談できる環境だった。
以前の職場で、ほとんどの人にカミングアウトした時も、
特に拒絶される訳でもなく、今まで通りと変わらず接して貰えたり。
自分がgayだということに関して、
大して悩んだことがなかったのだと思う。
ただ最近思うのは、女性との結婚。
そして、両親に孫を見せてあげられないこと。
僕はイニスとジャックのように、結婚して女性と子供を作る行為はできない。
だから彼らが女性を隠れ蓑にして、彼女らを利用したように映ってしまって、
気持ち的に許せなかった。
彼らが生きていた時代がそういう時代だったと言われればそれまでだけど、
とにかく許せなかったのだ。
なので観終わった時の印象は、
自分が予想していたものとは大きく違っていて、正直ショックだった。
自分はgayなのに、彼らの思い:迷い:痛みを理解してあげることができず、
彼らの生き方そのものを否定してしまった…と。

2回目。
今回はイニスとジャックの視点で観るように心がけようと思った。
初鑑賞の時とは違って、自分の気持ちに余裕があるせいか、
登場人物4人それぞれをきちんと観ることができた。
ジャックとイニスに対しては、ただただ『切ない』と思えた。
イニスは幼き頃、父親に男色とは大罪だと衝撃的な方法で教えられていた。
彼がその大罪を犯してまで、
ジャックを愛した気持ちは恐らく計り知れないものがあったんだろうと。
初めてジャックと逢って、別れた後の嗚咽と慟哭。
ジャックと最後に会った時の『俺を解放してくれ』という想い。
イニスの中にある深い想いが、本当に苦しくて切なかった。
彼はジャックを【男】として愛していたのではなく、
ひとりの【人間】として愛していたんだろうと思えた。
たまたま、最も愛した【人】が【男】だった…。
一緒に観たgayの親友も言ってたけれど、
イニスは限りなくストレートに近い人だったんだろうな。
ただ彼にこういう愛され方をしたらとても幸せだろうと思いつつ、
暴力的な言動に辟易したのも事実だ。
裏を反せば、持っていきようのない気持ちの反動だったんだろうけど。
逆にジャックの行動。
いくらイニスに逢えない気持ちが辛すぎるとは言え、
性欲を満たす為だけに処理をするのは頂けないと思った。
『そこまで想えるんだったら、一途に愛を貫けよ』と。
…本来のgayとは、こういうものなんだとは言わせない。
もちろん、ジャックの切なさや想いも痛いほど伝わってきたけれど。

(2006年3月当時の)結論。
2回観て思ったのは、
この作品は世間がいうほどのgay映画ではないということ。
いろんな人間の複雑に絡み合った想いが交錯した人間ドラマなんだと。
そしてgayというのが、ひとつのテーマに過ぎなかったということ。
映画のクライマックス。
ジャックの母親のイニスに対する寛容な行為に、
何度見ても胸が熱くなった。
イニスとジャックにとって、【ブロークバック・マウンテン】は
きっと理想郷:ユートピアだったのだろうな。
イニスのセリフ。
『I swear Jack.』…この言葉通り、
彼はジャックへの想いを胸にこれからも生きていくんだろう。
この映画を観て、
『人はそう簡単に幸せにはなれないのかな』と思った。
いろんな経験や想いをしてこそ、幸せを得れるんだろうと。

▲ …スタッフ&キャストについて。
アン・リー監督。
アカデミー賞最優秀監督受賞も納得の本当に素晴らしい演出ぶり。
こんなにも深い人間描写を表現できるとは!
撮影のロドリゴ・プリエト。
壮大な自然を背景に、それはとても美しい映像を魅せてくれた。
この作品に、とても大きく貢献していたと思う。
彼が撮影担当した『アモーレス・ペロス』と『アレキサンダー』の映像も、
綺麗だったから。
音楽のグスターボ・サンタオラヤ。
アカデミー賞最優秀音楽賞受賞も納得の耳に残るフレーズ。
何度も頭の中でリピートする。
俳優たち。
ヒース・レジャー。
この男、南部にしかいないと思えるほどの迫真の演技。
『ブラザーズ・グリム』、『ロード・オブ・ドッグタウン』の彼とは、
本当に別人のようだった。
演技のスタイルに故マーロン・ブランドが重なった。
過去最高のパフォーマンスだと言える。
ジェイク・ギレンホール。
『シティ・スリッカーズ』の子どもが、
歳を重ねてgayのカウボーイを演じることになるとは思ってもいなかった。
冒頭の登場シーン。
あの舐めるような艶かしい瞳にノックアウトされてしまいました。
何度観ても、その登場シーンに胸がときめいてしまいます。
あの哀しげで優しい瞳に、僕はいつまでもついていきます。笑
長いまつ毛も可愛かったなぁ。
ただ演技的に、歳を重ねた時の
キャラクターの深みが出ていなかったように思えた。
見た目は老けていても、あの瞳が若々しすぎたのか。
もう少し情感豊かに演じてほしかった気がする。
そこがヒースと差が出てしまったところかな。
ひとりの俳優として見れば、
この後に撮影した『ジャーヘッド』の方が生き生きとしていて、
彼本来の持ち味を活かしていたと思う。
アン・ハサウェイ。
彼女なりに頑張ってはいたと思うけど、ミスキャスト寸前だったような。
彼女が演じるには若すぎた気がする。
歳と共に変貌していくファッションが、
コスチューム・プレイにしか思えなかった。苦笑
ミシェル・ウィリアムズ。
ヒース演じるイニス同様、印象に残るキャラクターだった。
その深みのある演技力には正直、驚かされました。
TVシリーズ『ドーソンズ・クリーク』の頃から
演技が上手だなと思っていたけれど、まさかここまでとは!
彼女の確かな演技力を再確認できました。
4人の脱ぎっぷりの良さにも驚かされたり。
一瞬、フランス映画を見てるようだった。
特にアン・ハサウェイ@『プリティ・プリンセス』の
脱ぎっぷりには度肝を抜かされました。
そして、最後にもう一度。
ヒース&ジェイク。
2人とも、本当にカウボーイにしか見えなかったよ!!

映画館で販売されたパンフレットは、久しぶりの当たりだった。
美しく、とても丁寧に作ってある。
これは買っても損はないと思った。

なぜ、このジャンルは悲劇で終わる作品が多いのだろう?
必ずと言っていいほど、最後には誰かが亡くなる。
僕的にはこの作品が
アカデミー賞最優秀作品賞を受賞しなくて良かったと思う。
作品賞を受賞するのであれば、差別や偏見に立ち向かい、
自分らの力で強く逞しく生きていき、
ハッピーエンドで終わる作品であってほしいから。
できることならば、gay=悲劇物という考えを払拭してほしい。
これが僕の切なる願いだ。
そう考えると、今まで見ていちばん良かった作品は、
TVシリーズ『エンジェルス・イン・アメリカ』だな。

(2008年、今の)感想。
07年年末にWOWOWでO.A.されていたのを、たまたま見た。
見終わって、気づいたこと。
それは今の彼氏と恋愛をするようになって、
大きく感想が変わっていたこと。
ここで深くは書かないけれど、似てる部分があるのだ。
…ただただ切なかった。
なので今いちばん共感できるのは、ジャックの気持ちかもしれない。
イニスの想いも理解しようと思える。
映画は年数が経って見返すと、
それまでの感想と全く変わることを改めて、実感した。
……なんだか早く彼氏の温もりを感じたくなってきたなぁ。
ブロークバック・マウンテン②
最後に言いたいことは、やはりヒース・レジャーに。
素晴らしい作品:演技を魅せてくれて、本当にありがとう!
このイニスは、いつまでも君のものだから。
また近いうちに、(映画の君に)逢いにゆきます。
関連記事
スポンサーサイト

2 Comments

ken says..."捧ぐ"
長文の中にいろんな思いが込められていて、
感動的な内容ですね。
なんだか映画を思い返して胸が熱くなりました。

映画を鑑賞するときに視点って重要ですよね。
それが変わると同じ作品でもまったく違う評価になっちゃうこともあると思います。
なんどか見返していくことで深みのある解釈ができるようになっていくのかなぁ。

この作品のヒースはすごいですね。
最初に二人が別れるシーンの痛みと、
最後の誓いの重さに心打たれました。
また彼の作品に会いに行かないと・・・。
2008.02.19 01:25 | URL | #QfPbGVMw [edit]
Elijah(管理人) says..."kenさん。"
kenさん

偶然にも追悼文のような記事になってしまいました。
この作品は、いろんな人のいろんな想いが詰まった映画だと思うので、たくさんの感情が引き出されるのかもしれないです。

映画は本当に観る時の気持ちや環境で、大きく感想がガラッと変わってしまいますよね。
なので、初めて観る時は全身全霊集中して観てしまいます。
やっぱり映画も、第一印象が大事だと思いますから。
もちろん何度か見ていく内に、自分の気持ち:心も成長していて、深みのある違った見方に気づくこともあると思います。

『BM』は、ヒース・レジャー最大の代表作だと思います!
見事にイニスの感情や想いを表現してましたから。
今年は2作品、彼に逢えますね。
製作途中だったテリー・ギリアム監督作品も、どうやらハリウッド俳優協力のおかげで完成できるようですし…諦めていただけに良かったです。
最後に…kenさん、今回もたくさんのコメントをどうもありがとう!
2008.02.20 00:40 | URL | #d/k.Dt.. [edit]

Leave a reply






管理者にだけ表示を許可する

Trackbacks

trackbackURL:http://eplace.blog19.fc2.com/tb.php/519-420ea7ed
該当の記事は見つかりませんでした。