ウディ版、罪と罰。

ボールがネットの上に当たって はずんで
ツイている時は向こう側に落ちて、勝つ
ツイてない時はこっち側に落ちて、負ける
勝敗は運が決め
人生はコントロールできない――


ウディ・アレン。
自虐的でコミカルな作品を撮る監督のイメージがある。
見た目こんなちんちくりんな人が、なんで評価されるのかよく解らず、敬遠しがちな人だった。
彼の作品を初めて見たのは、『ブロードウェイと銃弾』(1994)。
映画館で初めて観たのは、『世界中がアイ・ラヴ・ユー』(1996)で。
その後も『地球は女で回ってる』(1997)、『セレブリティ』(1998)と劇場公開される度に観に行ってたけど、『セレブリティ』の出来の悪さにショックを受けて、それ以降の作品(『ギター弾きの恋』)からは、一切映画館で観なくなってしまった。
なので、ウディ作品を映画館で観るのは、なんと7年(!)ぶりとなる。
今回、観に行こうと思った動機は予告編や巷の噂を聞く限り、これまでのウディ作品ぽくなかったからだ。
それと、彼自身が出演してないから。
僕はどちらかと言うと、彼には監督として徹してほしいところがあって。
それから!英国ロンドンが舞台というのにも、興味が惹かれた。
その作品のタイトルは、『マッチポイント』(2005)。
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会話が多く続く中での人物描写が、興味深かった。
人間は、なんてエゴの強い自分勝手な生き物なんだろう、と。

元プロテニス・プレイヤーの肩書を持つアイルランド人のクリスは、友人のつてで上流階級の人間たちが集う会員制のテニスクラブのコーチとして働くことになる。
そこで出会ったイギリス人の実業家ヒューイット家の息子トムとの交流がきっかけで、彼の妹クロエ、更に彼の婚約者のアメリカ人のノラに強烈に惹かれ始めて…。

ストーリーには特に目新しさはない。
過去に使い古された題材の焼き直しのようだ。
ジャンルで言えば、ラブ・サスペンスの部類。
だけどそれを、ウディらしいセンスで上手く描いている。
特に最後のくだり辺りが。
正直、こういう作品も手堅く描ける才能に感心してしまった。
パトリス・ルコントに感じるようなウェルメイドな匂いがした。
ロンドンの街並みも建築物もアートもファッションも、なにもかもがお洒落。
ただスーツにコートを羽織って歩いているだけなのに、こんなにもお洒落度がUPするなんて。
随所に流れるオペラの歌曲も、重要なシーンを盛り上げるには相応しく、印象的だった。
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クリス役のジョナサン・リース・メイヤーズ。
彼を初めて見たのは、『マイケル・コリンズ』(1996)。
クライマックスにそのマイケルを暗殺する少年役だった。
当時、『うわー、めちゃくちゃ綺麗な男の子が現れた!』って思ったっけ。
今作では、なかなか上手に演じていた。
だけど途中から、彼の顔がだんだんとジュード・ロウに見えてきて。
そう!このキャラクター自体が、ジュードにピッタリに思えて、彼の演技でも見たいなぁと思わせるものがあった。
彼の言い放ったセリフ。
『愛と愛欲は違う。』が強く印象に残ったなぁ。
ノラ役のスカーレット・ヨハンソン。
もう『ゴーストワールド』(2001)の頃が嘘のよう。
今作では、フェロモン全開で凄すぎる。
こんなオンナに出会ってしまったら、大抵のオトコは落ちるね。
ノラの自分自身に対する自信の表れもアッパレ!
最初はクリスの愛にノリ気ではなかったのに、中盤、そして○○してからの豹変ぶりには、『危険な情事』度を感じてしまった…。
クロエ役のエミリー・モーティマー。
相変わらず、地味な女優さんだ。
トム役のマシュー・グード。
ルパート・エヴェレットの系統だなぁ…と思ってしまった。

上流階級に入り込もうとするクリス。
野心家に見えつつも、実はそうではなく弱い人間で。
観ながら、どこか『陽のあたる場所』と『リプリー』が重なってしまった。
その上流階級の人間への憧れ。
だけどどうも僕は見ていて、取り繕ってるというか見せかけだけの幸せに映ってしまった。
どこか冷たさを感じずにはいられなかったから。
仮面の下の本性というか。
クリスの妻となったクロエ…いやヒューイット家の一員は、実はクリスの事の顛末の一部始終を知ってたのではないか、と変に勘ぐってしまえたほど。

一度、手にした裕福な生活。
それと同時に手にした最高のオンナ(=浮気相手となったノラ)。
もともと彼女は人(=トム)のものだった。
人のものだからこそ、尚更、意地(=ゲーム)で手に入れたかったのだろうか。
最終的にクリスが選択した事。
その彼の短絡的な行動に、小市民の滑稽さを垣間見たような気がする。
クリスはこの先、幻覚と重荷を背負いながら生きていかなければならない。
傍から見たら彼の生活は幸せに思えるけど、彼の心の中は…。
ここも印象深いラストカットだった。
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冒頭、クリスが上流階級の人間に馴染もうと読んでいた本があった。
それは、ドストエフスキーの『罪と罰』(何の罪もない老婆を○○○青年の物語)だった。
僕はこのシーンがすべての始まりであり、ウディの視点から描いた『罪と罰』なんだろうなと思えてしまった。

MEMO:梅田ガーデンシネマ
2006.9.12 19:45
招待券0円
奈良ちゃん、榊ちゃん
点数評価:79点

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6 Comments

ZAK says...""
ウディ・アレン

この監督さんなかなか
入りこめないというか
好き嫌いがハッキリしちゃうなぁ

自分あんまりハマりにくい監督さんかも

でも「ブロードウェイと銃弾」は良かったんだよね
ほほ~~~そんな展開でいくの?
みたいな

銃弾ってそこなん?
みたいにグイグイ惹きこまれて観ちゃいました

でもね・・・・・確かに「セレブリティ」・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・でしたね

ウディ・アレン。
あんまり皮肉も込めずに明るいテンポが良いなぁ
観たいなぁ
2006.09.14 15:26 | URL | #- [edit]
Elijah says...""
ZAKさん

ZAKさんも、ウディ苦手でしたか!
僕も作品によって、好き嫌いがハッキリと出ちゃう監督さんかもしれないです。
はい。確かに、『ブロードウェイと銃弾』は面白かった~☆
僕はジョン・キューザック目当てで見たんですけど、ダイアン・ウィーストの演技がめちゃ最高で!
だけどほとんど内容、忘れかけてますけどね(汗)。
『セレブリティ』…同じ意見で嬉しい限り!
お仲間さんがいて、よかったぁ…(笑)。
これも僕のミューズ、ウィノナ・ライダーが出てるから観たんですけどね。
パンフレットが新聞サイズになってて、持って帰るの大変だったし、最も場所を取るコレクションになってます(苦笑)。
今回の作品は、皮肉も込めつつ暗くテンポゆったりで…う~ん、ZAKさんにはどうでしょうね(笑)。。。
2006.09.15 21:26 | URL | #d/k.Dt.. [edit]
ree says...""
この間会った時にも話したと思うけど、私もウディの初劇場作品は
「ブロードウェイと銃弾」で彼の中でエンタメ色濃い作品から入った
ので、かなりドンピシャにハマり、善し悪しあるけどその後の作品は
ほとんど劇場で見たし、それ以前の作品もレンタルなどで見漁り、
私は好きな監督です。
分類別すると、彼の出てない作品はどちらかと言うとまっとうなもの
が多く、彼自身出演してるものはコメディ色強いよね。
どちらも好きだけど、私は映画での彼のキャラ(本人自身とはかなり
違うみたい)が好きなので出演作で好きなものが多いです。
あの神経質で自虐的な(ユダヤ人ネタ)キャラ見てるだけで笑えるし!

多分イライジャくんが見たウディ作品は、残念ながら世間で言うハズレ
作が多そうなので余計イマイチに思えるのかも(私も「セレブリティ」
「地球は~」イマイチでした)。
「ギター弾き~」は多分好みだと思うので、機会があれば見て欲しいな。
好みかわからないけど、昔の作品でもいい作品多いよん!(私は初期の
ナンセンス・ドタバタ系、「アニー・ホール」などNY派の頃が好み。世間
では近作はウディの小手遊びだと言われてるけど、割といいのもあるよ~)

私もイライジャくん同様、クリスは根っからの性悪ではなさそうなので
表面的な幸せの人生の反面、苦悩に満ちた人生を歩む事になりそうだ
と思った。
彼の作品でドストエフスキーの「罪と罰」ネタはしょっちゅう出て来るので
(ウディ以外にもモチーフにしてる監督多いけど)、一度読んでみたいと
思うのだけど難解そうでなかなか読めずにいるのだよね…

今作と比較されてる「重罪と軽罪」を今ちょっとづつ見てる最中で、
クリスとノラの関係そっくりな設定があるけど、もっと複雑な人物関係の
話っぽくて、今作はそれをクローズアップさせた感じかな。
(まだ途中までしか見てないので見終えたら又感想アップさせます)
2006.09.16 01:06 | URL | #LzYhGhZE [edit]
ヒデ・グラント says...""
今日観てきました。
朝一番の回にも関わらず、8割くらいの入りでした。
銀座という土地柄もあってか、客の年齢層も高め。
観終わって、大人な映画だなぁ~と思いました(←客層に納得)。

僕も 『リプリー』 を重ね合わせながらみていたけれど、最後の最後のドンデン返しにやられましたね!
今年のベスト5(暫定順位)に入る作品かも。

人間って・・・一度味わってしまった贅沢な暮らしや社会的地位を簡単に捨てることはできないんですよね。弱い生き物だ。。。
2006.09.16 23:48 | URL | #- [edit]
Elijah says...""
reeさん

reeちゃんは、ウディ大好きだよねー。
>分類別すると、彼の出てない作品はどちらかと言うとまっとうなものが多く、彼自身出演してるものはコメディ色強いよね。
↑これ、確かに納得!!
だから僕、ドラマ性のあるウディが出てない作品に惹かれるんだと思う…。
>あの神経質で自虐的な(ユダヤ人ネタ)キャラ
↑僕、これがダメなんだよねー。
ここがreeちゃんと真逆のところだね(笑)。

やっぱファンにも、『セレブリティ』の評価は悪いみたいだねー。
実は、『ギター弾きの恋』は流し見したことがあって、結構、良かったんだよね。
特にサマンサ・モートンの愛くるしい演技が!
だから、いつかちゃんと見ようと思ってます。
さすがreeちゃん!僕の好きそうな作品を解ってらっしゃる☆
『アニー・ホール』はreeちゃん…かなりオススメだよねー。
これも、いつか機会があれば見てみるね。
ダイアン・キートン…結構好きだし。
しかし、彼女さえも虜にしちゃったウディって、男としても凄いよねー(笑)。

『マッチポイント』のクリス。
うん。彼のこれからの人生は苦悩に満ちてると思う。
彼の性格がどうであれ、2人も○○○んだから、それくらいの天罰は受けないとね。
ウディ作品には、『罪と罰』ネタ…しょっちゅう出てくるんだ!
『重罪と軽罪』にも、クリスとノラの関係にそっくりな設定があるとは、ちょっと驚き。
よっぽどウディは、この作品に強く惹かれるなにかがあるんだろうね。
実は僕もreeちゃん同様、本は読んだことないです(汗)。
ちなみに僕は、映画を途中で見るのを止めるのは出来ない性質です…想像つくと思うけどね(笑)。
2006.09.17 19:04 | URL | #d/k.Dt.. [edit]
Elijah says...""
ヒデ・グラントさん

この作品も観てきたんですね!
結構、ハイペースで観てますね(笑)。
こっちの作品は混んでたんですねー。
しかも、朝の回だと言うのに…。
やっぱりウディ・アレンって人気あるんですねー。
確かにこの作品は、大人向けの作品ですよね。
僕も20代前半の女子と一緒に観たんですけど、感想を聞いたら、ヒデさんと同じようなことを言ってました(笑)。

ヒデさんも、『リプリー』を重ねながら観ましたかー。
内容、どことなく似てますよね。
>最後の最後のドンデン返しにやられましたね!
↑確かに驚かされました。『そんなん、アリかーーーっ。』って。
すべては、【運】なんですよね…。
だけどちょっぴり、英国の警察官はおバカさんなんだなと思いましたね。
アメリカだったら、『CSI』が出てきますから(爆)。
この作品…ヒデさんの今年のベスト5に入るかもですか!!
かなり良かったみたいですね☆

人間は脆くて弱い生き物だと思いますよ。
一度味わった甘い蜜を手放す勇気はないと思います。
だからこそ、クリスは…。
だけど、彼の払った代償はとてつもなく大きいですけどね。
もし自分が彼の立場だったら、どうするんだろう?と、ふと思ってしまいました…。
2006.09.17 19:20 | URL | #d/k.Dt.. [edit]

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