Black Or White.

ラース・フォン・トリアー監督の新作。
アメリカ三部作、第2弾。衝撃の問題作『ドッグヴィル』の続編。
20060423135024.jpg
ヒロインのグレース役は、ニコール・キッドマンの降板により若手ブライス・ダラス・ハワードへチェンジ。
物語の時代設定は1933年。舞台はアメリカ南部の奥深いマンダレイ。

トリアーの作品って、観終わる度に極度のエネルギーを浪費する傾向があって。
なので、観る前に、勇気がいったりする。
だけど、なぜか観に行かないと気がすまない要素があって。ある種の怖いもの見たさの心理。
『奇跡の海』も、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』も、観終わって本当に疲れたから。

今作『マンダレイ』は、アメリカの白人の視点から見た黒人問題を描いてて。
20060419192645.jpg
結構、タブー視されてる事を大胆かつ赤裸々に表現していたと思う。
それはきっと、デンマーク人のトリアーだからこそ描けた内容だと言える。

誰かしら、少しの偏見や差別意識はあると思う。
100%博愛主義の人なんて、いないと思うから。
誰かに良く思われたくて見られたくて、善人ぶった事を言う人もいると思うし。ここに描かれる問題も、そう。
アメリカに根強くある人種問題。特に黒人に対して。
今じゃ、すっかり差別意識は低くなったにせよ、それでもまだまだ問題提起があって。
今のアメリカの行動や言動を見てて、時々思うんだけど、白人って、黒人に対して優位に立って、ものを言ってるところが垣間見える。
対等な立場で、ものを言ってるような気がしなくて。
もちろん、白人のみんながみんな、そうじゃないのは解ってるけど…。

この作品で描かれていた事。
いざ、白人が建設した鳥かごから出てもいいと言われても、世の中でどういう風に生きていったらいいのか解らない黒人たち。
そうした中で、今までと同じように偏見や差別を受けない為にも、自分自身を庇護できる場所(=鳥かご)に住み続けようとする黒人たち。
今のアメリカ社会を明らかに批判してるように思えた。
こういう環境を作ってしまった白人に責任があるんだと。
だけど、この問題は果てしなくエンドレスであり続ける…。

人って、その人に対して、勝手なイメージを作り上げる。
特に、第一印象の見た目で。
それは、大きな間違いだなと思った。
注意深く、人間洞察が必要だなと強く思った。

ブライス・ダラス・ハワード。実生活では、ロン・ハワード監督(新作は『ダ・ヴィンチ・コード』)のご令嬢。
アメリカの善良な市民のお手本のようなハワードの娘さんが、こういう問題作で、大胆な演技を披露してたのが、嘘のようで。
胸を見せるだけならまだしも、アンダーヘアまで見せる大胆な全裸によるセックス・シーンには、度肝を抜かされた。
これ、良心的なパパ(=ハワード)が見て大丈夫だったのかな…と、余計な事まで心配しちゃった。
だけど、彼女自身はこのキャラを嫌味なくさらっと演じていて、好感がもてた。
ニコールの代役というプレッシャーも全然感じなかったし。
まぁ、グレースのキャラ自体は善人のようで、偽善者にも見えたけどね。
本人が良かれと思ってやった事も、相手にしてみれば、余計なお世話であったりするし。
教育と指導は全く別物だと思った。
彼女の新作は、『ヴィレッジ』でタッグを組んだM・ナイト・シャマラン監督との2度目のコラボ『レディ・イン・ザ・ウォーター』(撮影がクリストファー・ドイルなんで、ここも楽しみ!)に、ケネス・ブラナー監督のシェイクスピア物『As You Like It』(『お気に召すまま』のリメイク)に、サム・ライミ監督の『スパイダーマン3』(新ヒロイン、Gwen Stacy役)と期待のラインナップが続く。
ティモシー:誇り高き黒人役のイザーク・ド・バンコレが強烈に印象に残って。特にハンサムってわけではないけど、凄く存在感があって。
新人さんかな?って思ってたら、実はキャリアあるし、結構、歳いってるし。
全米公開当時48歳!とてもその年齢には見えない、強靭で逞しい肉体美で。
本当に黒人さんの体って、美しいよね。まるで、アートを見てる感覚に近い。
どうやら、フランス映画に出てたり、ジャームッシュ監督の『コーヒー&シガレッツ』に出てるみたいなんで、またCheckしとこうかな。
ほかのキャストで前作からの登板は、ローレン・バコール、クロエ・セヴィニー(セリフなんて冒頭にあるだけ!)、ジェレミー・デイヴィス、ジャン=マルク・バール、ウド・キア。そして、重要なナレーションのジョン・ハート(落ち着きのある、いい声してるよね)。
新たな参加として、グレースの父役にウィレム・デフォー(この役もジェームズ・カーンからバトンタッチ)。そして、物語のキーポイントとなるウィレルム:お喋り黒人役のダニー・グローヴァー。
20060419192705.jpg
撮影が、大好きなアンソニー・ドッド・マントルで。
トリアーに、ダニー・ボイル監督と彼らのお気に入りスタッフのようで。
今作でも、粗い感じの黄ばんだ映像で、作風に合わせて妙に生々しかった。
トリアーの作品って、毎回、面白いというか、奥が深いというか。
とにかく、人間性を鋭く描いてて。そこに、いつも感嘆させられる。
まるで、一冊の分厚い本を読み終えた感覚に近くて。普段、使わない部分の脳を強く刺激させられる。
今作も、最初はいつものように、ふ~んって感じで観てたんだけど、クライマックスに向かうにつれて、どんどん惹きこまれていって。
不謹慎だろうけど、今回もその展開にゾクゾクしてしまった…。
エンドロール…デヴィッド・ボウイの陽気な曲『ヤング・アメリカン』をバックに映し出される黒人たちの無残なスチール写真。
最後の最後まで、深い作品だった。

彼の次回作は、コメディ物『Direktøren for det hele』で、その次の作品が『マンダレイ』の続編『Wasington』の模様。
正式にキャスティングされてるのが、シリーズ全作に出演してるウド・キアのみ。気になるグレース役には、ケイト・ブランシェットが候補にあがってるとか。歴代ヒロインのニコール、ブライスの出演はあるのかな…。全米公開は07年予定。
ラスト、グレースが地図上で逃げるように走っていった先にある場所は、正にワシントンで。
20060419192724.jpg
シリーズ最終作は、アメリカの政治にメスを入れるんだろうなぁ。
気合入れて絶対観に行くし、かなり期待大!!

クソーっ。トリアー、好きじゃないはずなのに、今回もヤラれたぜっ。
てか、悔しいくらい、気持ちいいよっ。

MEMO:ナビオTOHOプレックス
2006.4.18 20:20
レイトショー1200円
単独
点数評価:80点

関連記事
スポンサーサイト

4 Comments

ree says..."前作は"
怯えた小鳥が虎になった感じが、今回はラストに
小鳥に戻ってしまった感じだったよね。

グレースが、人種差別を忌み嫌うくせに、
白人家族に対して罰ゲームに「黒人」のカッコ
させてるの見て、お前が人種差別してんじゃん!
とムカついて偽善者丸出しで笑ったわ。
「誇り高き」を番号間違いしてワナワナする姿も
滑稽で、自分以外の人々には全て承知済み
なのもああ不憫…て感じで、かなりシニカルな
コメディでしたね。
一生懸命やってるのに空回りばっかしてる今回
のグレースは、ドンパパが子供扱いする子供
そのものだった気がする。

「誇り高き」ティモシー、私もせいぜい30代かと
思ってたら50前でビックリしたよ。
色黒?だから肌のシワとか目立たなくて得…??

ニコール+ブライスの共演は流れたの?
ブランシェットのグレースも説得力ありそうだね。
2006.04.23 18:22 | URL | #- [edit]
Elijah says..."●reeさん"
うんうん。今作は最終的に、彼女自身が小鳥に戻ってたよね。巧い表現☆

>白人家族に対して罰ゲームに「黒人」のカッコさせてるの見て…
↑このシーン、観てて不愉快だったなぁ。。。
確かに、この作品って、シニカルなコメディ要素もあるよね。

ティモシー、やっぱり50前には見えないよねー。肌も綺麗そうだったし。

>ニコール+ブライスの共演は流れたの?
↑ブライスの出演は考えられるかもしれないけど、ニコールはもう出ないんじゃないかなぁ。。。彼女は、『マンダレイ』に出る勇気はなかったんだし。
ブランシェットは凛とした貫禄あるし、適役だよね。ぜひ、彼女で観てみたい。
2006.04.23 23:40 | URL | #d/k.Dt.. [edit]
ree says..."映画の内容と"
ちょっと離れてしまうけど…
年始にEくんと映画デートして以来、以前よりも
(と言っても相変わらず単独鑑賞多いけど)
人と観に行く機会を作るようになって、しかもある程度
映画好きな人との鑑賞だから、感想言い合ったりするのが楽しいわ。
こうやって又最近、久しぶりにEくんとも同じ映画の
感想交換するのも楽しいし、やっぱナマで感想報告したいよね~
しばらく無理だけど、又映画デートしたいね☆☆
2006.04.24 00:40 | URL | #- [edit]
Elijah says..."●reeさん②"
映画って、やっぱり誰かと観た方が楽しいよね!
僕は、観終わった後の語りがたまらなく大好きなんで、極力、誰かと観たくなる。もちろん、時にはひとりで感慨深く観るのもいいけどねー。
この『マンダレイ』は、正にそうだった。。。
うん!又絶対、映画デートしようね☆
しばらくは、BLOGデートで我慢だけど…(笑)。

reeちゃん、とびきり温かいコメントありがとね!!
2006.04.25 22:57 | URL | #d/k.Dt.. [edit]

Leave a reply






管理者にだけ表示を許可する

Trackbacks

trackbackURL:http://eplace.blog19.fc2.com/tb.php/187-3f8e9ec2
該当の記事は見つかりませんでした。