野田地図(NODA・MAP)第十一回公演 贋作・罪と罰(日本)

【1995年発表の野田版サスペンスが、絶妙のキャスティングとともに待望の復活!
ロシアの文豪ドストエフスキーの名作「罪と罰」が、
幕末の日本を舞台に、大胆不敵な<野田ワールド>へと変貌する。】


脚本・演出は野田秀樹。
出演は松たか子、古田新太、段田安則、宇梶剛士、美波、マギー、右近健一、小松和重、
村岡希美、中村まこと、進藤健太郎、野田秀樹の総勢12人。
野田の作品を舞台で観るのは、傑作『オイル』(2003年)↓以来2度目だ。
20060210203808.jpg
三谷幸喜が大衆向きとするならば、彼は少々マニアックな玄人向き。
かなりインテリで難解な作風なので。
それでも僕は結構、彼の作品が好きだったりする。半分以上は理解できてないかもしれないけど。

キャッチコピーからも連想できるように、幕末を舞台とした作品。
理想を掲げ、明日(=未来)の日本を信じて生きる人間たちの物語。
ある殺人事件を発端に、人間の心理を描いていく…。

江戸開成所の女塾生・三条英(さんじょうはなぶさ)役に、
野田とは『オイル』以来2度目のコラボレーションとなる松。
日本の女優でいちばん好きな人物。
彼女の舞台を観るのは、今回で4作目となる。
『セツアンの善人』に始まって、『モーツァルト!』、『オイル』に続き3年ぶりの大阪見参。
今回は観客席を対面式にして、間に舞台を挟む設定。
その舞台は正方形の形をしていて、とてもシンプルかつ独創的で。
僕は前から4列目(!)の席。
静かに始まるオープニングの中、颯爽と舞台に現れる彼女。
目の前に等身大の彼女がいる。
丁度、3週間前にスクリーン(『THE 有頂天ホテル』)で見たばかりの彼女が、
手の届く位置に立っている。目線は、ほぼ同じで。
とても信じ難く嬉しさと興奮とで全神経が覚醒し、
体中からアドレナリンを大量噴出しそうな勢いだった。
それ以上に増して彼女の圧倒的な演技力に感銘を受け、
この人は【真の女優】なんだと確信まで出来て。
役柄同様に男っぽく見えつつ、凛とした女性に思えた。
英の親友・才谷梅太郎(さいたにうめたろう)役に、野田作品6作目の古田。
大好きな『木更津キャッツアイ』シリーズのオジーが目の前にいる!
『朝だよ~!』と今でも言いそうな気配に(笑)、これまた嬉しくて。
今作でもコメディリリーフ的に観客を笑わせながらも、見せる時は見せる!さすがの舞台人。
殺人事件の担当捜査官・都司之助(みやこつかさのすけ)役に、
かつての野田の劇団『夢の遊眠社』仲間であり10年ぶりの野田作品参加となる段田。
彼の卓越した演技は本当に素晴らしくて!彼の存在感で作品が引き締まる。
ニヒリスト溜水石右衛門(たまりみずいしえもん)役に宇梶。
屈強な体格は舞台栄えする。ただ台詞の発し方が聞き取りにくく、もう少し調整すべき。
ただでさえ、舞台を間に挟むので画期的とは言え向こう側を向かれると声がこもり、
台詞が聞き取りにくかったというのに。
↑ここが唯一の欠点。

衣装を着替えない限り、舞台袖には引かない役者たち。
自分の出番がない時には正方形の舞台を囲む形となって、
観客席から見える場所でずっと座っている。
ただ座っているだけではなく、誰かしら音響役を担っていたりする。
扉を開ける音など、いろいろ。
野田は座っている時は、正に演出家の目だった。
松は出番じゃない時は、背筋を真っ直ぐ伸ばし微動だもせず舞台を見つめている。
その姿にはオーラがあり、凡人には踏み込むことが出来ない空間だった。
舞台に立った時の彼女の息遣いや涙を見聞きして。
終盤の畳み掛けるような激情的な台詞に嗚咽する場面の見事なこと!!
彼女演じる英の気持ちが伝わってきて、クライマックスで無性に涙が流れてくる。
それは初めての経験だった。なんとも表現しようがない気持ち。
英の感情に触れた気がする。
その影響か鑑賞後、まるで憔悴したかのようにボーッとしてしまい言葉さえも出なかった。
落ち着いた後でその事を一緒に観た友人に告げると、
『Elijahはきっと、松さん(=英)自身になってたんだよ。』と言われた。
それ程、松の演技は壮絶だった。

物語は、前回に観た『オイル』の方が衝撃的だった気がする。
だけど今作も野田の訴えたいメッセージが五感にびんびんと伝わってきて、全編に緊張感漂う中、なかなか見応えある作品に仕上げていた。
彼の才能って、本当に賞賛に値する。
劇中のセリフでも似たようなことを言っていたけど、
『理想を思想で変えられるな!』と言われているように思えた。
【大義のために罪を犯してはならない。それが正当な理由なんかにはならない。】と。

ただ、やっぱり僕には少し難解だった。
3月21日にWOWOWでTV放送するので、その時にもう一度見ようかと思う。
今度で理解できるかな…(笑)。

20060209010046.jpg

シアターBRAVA!/藤原ちゃん
S席9000円

関連記事
スポンサーサイト

2 Comments

koz says...""
私も野田秀樹大好きです。
言葉。台詞の遊び方がいつもすばらしいです。
実際生の舞台を見たのは深津絵里がでていた「農業少女」のみなんですが。。。
すごくよかったです。
あとはテレビで「半神」
これはもう絶対おすすめです。
(見てるかもしれませんね^^)
泣けます。自分のことのようで。。
あ、「キル」もいいな~
よくNHKBSで放映されてますよね。
「贋作~」は何回か再演されていますが
実はまだみたことなくて。。
WOWOWでやるのでホント楽しみ。
Elijahさんの太鼓判ならなおさら!!
2006.02.11 05:24 | URL | #- [edit]
Elijah says..."kozさんへ。"
kozさんも、野田秀樹好きなんだ!同胞がいて、なんだか嬉しいな。
今回も、言葉…そうだね、台詞が心に響くものばかりで。
改めて、日本語の素晴らしさを痛感したな。
僕は野田さん…『オイル』と『透明人間の蒸気』しか観たコトないんだよね(汗)。
kozさんお薦めの『半神』…気になるなぁ。
最近の野田作品は、WOWOWでの放送が多いみたいだね。
kozさん、ぜひ見て感想聞かせて!
そしていつか一緒に野田作品観に行けたらなぁ、と。
2006.02.12 12:04 | URL | #d/k.Dt.. [edit]

Leave a reply






管理者にだけ表示を許可する

Trackbacks

trackbackURL:http://eplace.blog19.fc2.com/tb.php/132-bc81a87c
該当の記事は見つかりませんでした。