黒鳥。

ブラック・スワンブラック・スワン②
『ブラック・スワン』(2010)
●観た理由●
ダーレン・アロノフスキー監督の新作なので。
キャストと題材に惹かれたから。
●豆知識●
企画当初はレイチェル・ワイズとジェニファー・コネリーが主演候補だった。
メリル・ストリープがエリカ役を考慮していた。
ブレイク・ライヴリーがリリー役のオーディションを受けている。
パーカー・ポージーがベス役に考慮されていたが、
ダーレン・アロノフスキー監督の最終的な判断によりウィノナ・ライダーとなった。
●覚え書き:この映画を観て思ったこと●
今月の僕の大本命作品。
『レクイエム・フォー・ドリーム』(2000)を思い出すようなダークな世界観かつ、
『ファウンテン 永遠につづく愛』(2006)を思い出すような精神的な世界観。
ダーレン・アロノフスキー監督の真骨頂であるダークな世界観が舞い戻って来た感があって、
観ている間はゾクゾクしっ放しだった。
それでいて、どこか古き良きハリウッドのクラシック映画を観ているような趣さえ漂う演出。
いくつかのシーンやヒロインのフォルムに芸術性のある美しさを感じた。
物語の主人公であるバレリーナのニナ(ナタリー・ポートマン)は、
いろんなプレッシャーやストレスから完全に精神のバランスを崩し始めていく。
その不安定な精神状態の過程を観客をも惑わせながら見事に描いていく。
随所に映る“鏡”が効果的に使われていることが印象に残る。
それは主人公の心の二面性を表しているのだと思う。
物語の構成はもちろんのこと、
ナタリー・ポートマンの渾身かつ神がかり的な演技が本当に素晴らしい!
アカデミー賞主演女優賞受賞も納得のパフォーマンス。
劇中、最大のハイライトとなる『白鳥の湖』を舞い踊るシーンは圧巻。
特に“黒鳥”になった瞬間は正に鳥肌もので、そこには感動すらあった。
対する“白鳥”の姿はイメージ通りでピッタリ。
時折、その容姿から故オードリー・ヘップバーンを思い出すものがあったり。
これまで優等生タイプの女優として避けてきた感のある大胆な性描写にも果敢に挑んでいた。
それは純真な“白鳥”から官能的な“黒鳥”へと変貌していく、
主人公の姿と重なるものがあった。
ニナを取り巻く登場人物たち。
ブラック・スワン
振付師トーマス(ヴァンサン・カッセル)。
常にセクシーさを漂わせている。
演じているヴァンサンは歳を重ねたものの相変わらず素敵だった。
怒った時にフランス語を話していたことが妙に嬉しく思えたり。
ブラック・スワン②ブラック・スワン③
新人ダンサー、リリー(ミラ・クニス)。
“黒鳥”を舞い踊るにはピッタリの印象。
演じているミラの演技も素晴らしかった。
一緒に観た男子親友が言っていたのだけど、
『17歳のカルテ』の時のアンジェリーナ・ジョリーを彷彿させるものがある。
ニナの母、エリカ(バーバラ・ハーシー)。
ひとり娘に自分が果たせなかった夢=プリマ・バレリーナを託す気持ちは
解らないことはないけど、その尋常ではない過保護ぶりに辟易させられた。
ブラック・スワン④
トップのプリマ、ベス(ウィノナ・ライダー)。
とても気立てのいい人物とは言い難いキャラクターだった。
演じているノニーを観るのは少々、痛々しかったかもしれない。
でも、思っていた以上に出演シーンがあったのでホッとした。
ナタリー・ポートマンヴァンサン・カッセル
ミラ・クニスヴァンサン・カッセル②
冒頭でさりげなく描かれるトウシューズの仕組みを知って驚かされた。
てっきり履いたらいいだけの物だと思っていたので。
ニナが母親に爪を切って貰うシーンにハラハラさせられ、
ニナが自分で手の甘皮を剥くシーンに彼女と同じように痛みすら伴うような怖さを感じた。
ヒロインの行く末は“完璧”なくらいに、
劇中で説明される『白鳥の湖』の展開と結び付けられていた。
結局のところは自分自身との対峙であり、ライバルは“他人”ではなく“自分”だった。
真面目な人ほど融通が利かず、完璧主義が多い。
技術が巧いだけでは駄目で、
隠された潜在能力を引き出す=殻を破るには“誰か”がその役目を担わないといけない。
何かを達成するには“独り”では出来ないことでもあるのだと感じた。
ニナは“自分”に打ち勝つ方法を間違えていたのかもしれない。
けれど、彼女の最期は本人にとって理想の“完璧”だったのだろう。
そこには物悲しいものがあるが、
それはトップに立つ人間にしか想像し得ない心情があるのだろう。
…と同時に神々しさや清々しいものを感じたことも事実。
僕はこの終わり方がとても好きだ。
鑑賞後はバレエを踊りたい気分になるし、『白鳥の湖』の音楽が頭から離れない。
この作品と“プリマ”に最大限の『ブラヴォー!』を贈りたい。
ブラック・スワン③ブラック・スワン④
ブラック・スワン⑤ブラック・スワン⑥
●満足度●
★★★★★

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4 Comments

湛 says..."二面性の物語"
Elijahさん こんにちは。

私も今週やっと観て来ました。本当に鳥肌!
(羽根は出て来ませんけど)
「痛い」のにビビる私には「あうち!」なシーンが
多かったのだけど目を逸らす事ができない、
文字通り画面に釘付けでした。
ナタリーの表現は正しく渾身でしたね。
スタンディング・オーベーションを贈りたかった程です。
「白鳥」の様な女の子が強迫観念の果てに「黒鳥」へ変貌する。
文学や映画で繰り返し描かれたテーマです。
それ故、クラシックな雰囲気をまとっているようであり、
尚且つ焼き直し的なコピーには見えない演出が素晴らしい!
ニナだけでなく、ニナの母(バーバラ・ハーシーが恐い!)も、
娘を溺愛しながらバレリーナとしては成功の門口に立った娘に
激しく嫉妬している様な二面性。
ライバルのリリーは、そういったアンバランス感とは異なり、
奔放で開放的、個人主義的な印象を受けがちだけど実は一番精神的に
バランスが取れた子だと思えました。
良い子のニナが精神崩壊に向かい、気ままで実際にアブナイ物も持ってるのに
リリーが中庸の取れたキャラであるなんて意図されたアイロニーかな?
そういう誰しもが持つ二面性が、強弱をつけてキャラクターへ
肉付けされていた様に思えました。
特にこういう芸術の表現をする人は、実際に顕著なのかも知れません。
俳優も表現者という点で、バレリーナ同様に役に成りきらねばならないので
共鳴するものがあったように思えます。
久しぶりのウィノナは嬉しかったけれど、キャラと本人がかぶる様な感じもして、
私も少し胸がちくりとしましたが、流石に先輩役者!
ナタリーを戦慄させる目芝居は凄かったです!
俳優として彼女は成長していると感じさせてくれて、以後も期待したいです。
今度は明るい彼女が見たいですね。
TBさせていただきますね☆


2011.05.20 15:14 | URL | #nxzuATHA [edit]
Elijah(管理人) says..."湛さん。"
湛さん

こんにちは。TBありがとうございます。
本当に見応えのある鳥肌ものの作品でしたよね!
僕もナタリー・ポートマンの演技にスタンディング・オベーションを贈りたくなりました。
まぁ実際には出来ないので(笑)、
ラストシーン直後のキャスト・クレジットに名前が出てきた時点で小さく拍手を贈りました。
現代的な演出、カメラワークでありながらもクラシックな要素を持ち得た作品でもありましたよね。
ニナの母親は用意したお祝いのケーキを捨てようとするシーンに、
性格の極端さを垣間見たような気がしました。
確かに振り返ればリリーがいちばん情緒が安定していたと思います。
“黒鳥”を演じ終わったニナの楽屋を訪ねて謝りの挨拶をしに来ていましたし、
良心的な娘さんだなぁと感じました。
一説によると、このリリー自体も実は存在しない人物=ニナの想像上の人物と
云われているようなので、そう考えると更に興味深いものがあります。
ウィノナ・ライダーは万引き事件後はこういった自虐的な役柄が増えたようで哀しく映ります。
演技力は確実にあると思うので、それをもっと活かせる場で披露してほしいですね。
2011.05.21 13:44 | URL | #d/k.Dt.. [edit]
sabunori says..."ひさしぶりにお邪魔します♪"
Elijahさん、こんにちは。
おお、絶賛の嵐ですね!
あっという間の2時間でした。
ナタリー・ポートマンのオスカー受賞も納得ですね。
私としては思っていたよりサスペンス(?)要素が強くて意外でした。
(「スリラー作」という意見も見かけますがスリラーではないと思います)
ところで↑で拝見した「リリーは存在しない説」に「おぉ、なるほど!」と鳥肌がたちました。スゴイ!
それは考えつかなかったわー。
2011.05.24 15:57 | URL | #JalddpaA [edit]
Elijah(管理人) says..."sabunoriさん。"
sabunoriさん

こんにちは。TBありがとうございます。
もともとダーレン・アロノフスキー監督の人間の内面を描く作風が好きなこともあって、
期待通りの出来にかなり満足な結果となりました。
ナタリー・ポートマンの演技は本当に素晴らしかったですよね。
役が彼女に憑依しているようにも感じました。
ジャンルに関しては本国ではDrama / Mystery / Thriller、
日本ではサスペンス/ドラマになっているようです。
僕は心理スリラーと感じましたね。
“リリーは存在しない説”を知った時は僕も思わず『なるほど!』と唸ってしまいました。
ちなみに、もともとこの作品はダーレン・アロノフスキー監督の
前作『レスラー』と1セットだったものを分離した作品みたいで、
監督自身も本作のことを『レスラー』の姉妹編だと評しているようです。
言われてみれば、この2作に通ずるものがありますよね(特に最後の顛末に関して)。
2011.05.25 13:05 | URL | #d/k.Dt.. [edit]

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□作品オフィシャルサイト 「ブラック・スワン」□監督 ダーレン・アロノフスキー□脚本 マーク・ヘイマン、アンドレス・ハインツ、ジョン・マクローリン□キャスト ナタリー・ポートマン、ヴァンサン・カッセル、ミラ・クニス、バーバラ・ハーシー、ウィノナ・ライダ...
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