ヴィゴとクラゲと西の魔女。

2008年06月22日
『イースタン・プロミス』(2007)
イースタン・プロミス
今月、密かに期待していた作品。
見応えや威厳あるドラマ性の高さは素晴らしい。
けれどデヴィッド・クローネンバーグ監督にしては、
ややオーソドックスな仕上がりだったような。
あえて前作の『ヒストリー・オブ・バイオレンス』と比べるなら、僕は前作の方が好み。
『イースタン・プロミス』はヴィゴ・モーテンセン演じるニコライのプロローグに思えた。
ナオミ・ワッツ演じるアンナのストーリーは、1エピソードに過ぎないというか。
タイトルである『イースタン・プロミス』(=人身売買の意)に
対するインパクトは薄かったような気が。
それよりもロシアン・マフィア自体の存在の方が強烈だった!
首領であるセミオン(アーミン・ミューラー=スタール)の俺様的な態度の憎々しいこと。
場所は違えど、観たばかりの『裏切りの闇に眠れ』を彷彿させるものがあって、
ちょっと気分的に重たかった。
首領の息子であるキリル(ヴァンサン・カッセル)はホモファビアでありながら、
彼自身、実のところはGAYじゃないかと勘繰ってしまった。
ニコラスに対する視線や思い入れが、尋常ではなかったから。
演じるヴァンサンは、生理的に受けつけない雰囲気を上手く醸し出してたと思う。
話題のヴィゴの全裸ファイトシーンは正直、
僕の目が彼の大事な部分を追いかけてばかりで、それどころじゃなかった。爆
だって、気づけば1人目は既に倒れてたから。笑
さすがに『サイコ』の頃の美しく引き締まった身体に比べると衰えてる気がしたけど、
それでもまだまだ十分にセクシーだった。
台詞の中に『王』という言葉が出てきたり、
彼が話すロシア語に聞いたことのない響きを感じて、
ちょっと『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのアラゴルンを思い出してしまったよ。笑
ヴィゴはやっぱり誰かを守ったりする役柄がとんでもなく似合うと思えた。
正しく、【真】の男って感じ!
劇中、ニコライの隠された秘密は意外にあっさりと説明される。
(大体の想像はつくが)首領セミオンがその後どうなったのか?
ニコライとセミオンの関係もどうなったのか?
その先のニコライの立場は?
…ラストカットのニコライの心に去来するものは何だったんだろう。
少し疑問が残る点もあるけど、遺された子どもの笑顔がひとつの答えなんだろう。

『ジェリーフィッシュ』(2007)
ジェリーフィッシュジェリーフィッシュ
右のカラフルな日本版チラシに惹かれ。
イスラエルが舞台だと知って、興味が湧いてきた。
どうにかこうにか最終日に滑り込みセーフ!
ビターでありながらも、観終わった後はなぜだか心が優しくなれる作品だった。
3つのエピソードが折り重なるように同時進行で展開していく。
感想はね…正直、なんて表現したらいいのか分からない。
なんかね、感覚で観る作風に思えたんだよね。
シーンのひとつひとつが時々、切り取ったポートレイトを見てる気分にもなれたり。
特に左画像の本国版ポスターに使われてるシーンが印象的だったなぁ。
映像全体のちょっと眩い感じの色合いも好みだった。
ジェリーフィッシュ:クラゲって泳ぎ方が神秘的だし、
プカプカ浮いていてクリアーで本当に綺麗な生き物だなと改めて気づいたり。
浮き輪を身体から離すことが出来ない5才の少女が、
もうホントにめちゃくちゃ可愛くて!想像以上の愛くるしい表情だった。
浮き輪を外されそうにキャーッと叫ぶところや、
天井から漏れてくる水を口に含むシーンがお気に入り♪
バティア役の女優さんは時々、シャルロット・ゲンズブールに見えた。
裕福であっても、必ずしも心が満たされてる訳じゃないということ。
幸せと優しさってカタチには出来ないからこその
普遍的なものがあるんだろうなと気づかせてくれる映画でした。
スクリーンで観といて良かったよ。
誰にでも平等に訪れる一日…いろんな痛みや悩みを抱えつつ、
それでも人は生きていくんだね。

『西の魔女が死んだ』(2008)
西の魔女が死んだ
初日公開の『奇跡のシンフォニー』とどっちを観ようか迷って、
時間的に都合のいいこの作品を選んだ。
やはり話題作とあってか、場内は満員。
上映後の雰囲気も泣いてる人や感動してる人が多かった。
…でも僕はこの作品、今ひとつでした。
観る前に思ってたのは僕にとって、いいか悪いかの両極端だろうなということ。
もちろん良い物語と言えるんだけど、ちょっと優等生すぎたきらいが。
ロケーションはスローライフやオーガニック的で美しく。
その辺りの種田陽平の仕事ぶりは本当に素晴らしい!
出てくる食べ物がどれもこれも美味しそうで。
特にサンドウィッチと焼きたてトーストにワイルドストロベリーのジャム!
おばあちゃん役のサチ・パーカーの品のある静かな佇まい的な演技も素晴らしかった。
特に発する日本語が丁寧で美しい!
個人的には、出番が少ないながらもママ役のりょうの演技も良かった。
まい役の高橋真悠の新人とは思えない確かな演技もなかなか。
ただ正面から映る分には可愛いけど、
横から映るシルエットは顔に凹凸が無く、絵的には女優としてのインパクトが薄かった。
そう。僕にはこの作品…見た目のものしか印象が残らなかったのです。
ストーリーに心まで響いてくるものがなかった。
唯一、印象に残ったのはまいがおばあちゃんに、
なぜ中学に通わなくなったかを話すところでした。
そこの会話だけが、妙に生々しく感じれたんだよね。
『女子の付き合いって独特なんだよね』…大いに納得。苦笑
余りにもぎこちなく、
表面上に映った家族関係(おばあちゃんを除く)にも違和感を覚えたり。
本当の家族像って、こんな感じなんだろうけど。
僕もこの2月に父方の祖母を亡くした。
7年間ほど施設に入所したままで、
僕は日常バタバタしてる事を理由に一度も見舞いすら行かなかった。
祖母のことは父や身内、施設の人に任せきりだった。
もともと僕は両親以外の身内に対する愛情は薄く疎遠に近い状態だし、
祖母とのいい思い出という記憶がほとんど無いに等しかったりする。
その祖母が亡くなった時、僕は一滴の涙も出なかった。
通夜に来て下さった施設の人は泣いてくれてるというのに!
祖母のお骨を拾い終わり帰る時に思ったことは、
7年間の一度も顔を見せなかった事をただただ申し訳なく思い謝ることだけだった。
ありがとうの感謝の気持ち以上に。
だからラストでまいが2年間、一度も祖母を訪ねに行かず、
あるメッセージを読んで泣く瞬間…
僕は泣くことで気持ちを浄化するのはズルいなと思った。
母親の唐突に思える号泣さえも。
それは余りにも自分たちに都合が良すぎるんじゃないかと。
僕は仕事柄もそうだけど、
看取る間際がいちばん旅立つ人にとって欲するべきところだと思っているから。
自分にはそれが出来なかったけれど……。
この作品…ところどころで登場人物たちの心情が抜け落ちてた気がする。
キム兄こと木村祐一演じるゲンジの描写も、もっといいように描けたはずだろう。
長崎俊一監督の『8月のクリスマス』を観た時にも思ったこと。
彼の演出は情景を描くのは上手いけど、
キャラクターの心情を描くには何か欠落していると感じる。
この映画…自然派の女性や今を生きる多感なティーン女子、
おばあちゃんっ子の人が観たら、きっと感動するだろうな。
世間的にもきっと評価が高くなるだろうし。
僕は少し冷ややかな目で、気持ち置き去りにされたまま観ていたような気がする。
それでも【家族】というものが
本当に無償の愛を捧げてくれる人たちなんだと、つくづく痛感した。

以上、3本を2日続けて観たんだけど…改めて【映画】というものは、
自分のその時の心境に大きくシンクロするんだなって思った。
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