共謀者。

声をかくす人
『声をかくす人』(アメリカ/2011)
◆感想◆
ロバート・レッドフォード監督の過去作『クイズ・ショウ』(1994)と
『大いなる陰謀』(2007)に通ずるような対話を中心とした法廷劇。
良くも悪くもロバート・レッドフォード監督らしい手堅い演出だった。
一時のクリント・イーストウッド監督作にも言える事だが、
その演出が生真面目すぎて娯楽映画としての面白味に欠けるかもしれない。
淡々とそこで起きた事実だけを観客に伝えていくので、
時として道徳的な教育映画を観ているような気分になる。
勿論、伝えたいメッセージ性は理解できるのだが。
邦題の“かくす”には「罪をかくす」、「息子をかくす」、「正義をかくす」など
色々な意味を含むのだろうと推察。
国家や大義の為に罪のない人間をまるで魔女狩りの如く、
犠牲にしようとする軍部の無神経さに苛立ちを覚える。
この物語の主人公である実在した人物、
フレデリック・エイキン(ジェームズ・マカヴォイ)が
この裁判の後に弁護士を辞めた気持ちも解らなくはない。
お目当てのジェームズ・マカヴォイは
徐々に正義へと目覚めていく弁護士の様が本当によく似合っていて、
その善き人柄が内面から滲み出ているように感じられた。
冒頭でリンカーン大統領が暗殺された直後、
彼が馬車によじ登りその光景を見ている時の表情(顔半分が陰になっている)が印象的。
エイキンが一睡もせず早朝にある人物を訪ねた際に、
手で顔をクシャクシャする何気ない仕草も好きなシーンのひとつ。
演じるマカヴォイくんがエイキンの人柄を良く表しているシーンでもあったと思う。
物語のハイライトはやはりラストシーンで、
エイキンが服役しているジョン・サラット(ジョニー・シモンズ)を訪れた際に、
ジョンから告げられる言葉「あなたこそ(彼女の)息子だ」だった。
なぜメアリー・サラット(ロビン・ライト)の実の息子であるジョンが
その母親を犠牲にしてまでかくれ続けるのか理解に苦しんでいたのだけど
(当時の女性が死刑になると思っていなかったと言えども)、
あの一言でどこか赦せてしまうものを感じた。
本編終了後に映し出されるスタッフ&キャスト・クレジットの中、
演じた俳優たちのセピア色の写真が美しかった。
こういう風にキャストをひとりひとり紹介していく趣向は好きだ。
この作品は脇を支える俳優陣も豪華で、
個人的にはアレクシス・ブレデル(マカヴォイくんの恋人サラ役で驚く)、
ジェームズ・バッジ・デール
(『SHAME -シェイム-』でマイケル・ファスベンダーと共演)、
トビー・ケベル、ジョナサン・グロフ、ノーマン・リーダスの登場が嬉しかった。
声をかくす人声をかくす人②
声をかくす人③
声をかくす人④声をかくす人⑤
◆予告編◆

◆満足度◆
★★★★☆

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W.E.。

ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋
『ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋』(イギリス/2011)
◆感想◆
云わずと知れた英国王エドワード8世(1894-1972)と
離婚歴のある米国人女性ウォリス・シンプソン夫人(1896-1986)の
“王冠をかけた恋”を描いた物語。
同時進行で1998年の現代ニューヨークを生きる、
ウォリー・ウィンスロップという名の一人の女性を
ウォリスの人生と交錯させながら描いていくスタイルをとっているので、
完全なる伝記物ではない。
そういう点では女性映画と呼べるし、
ある種『英国王のスピーチ』と対を成す兄妹的な作品だと言える。
とにかく!衣装デザイン、美術、音楽がこの上なく素晴らしい。
まるで秀作『シングルマン』と『花様年華(かようねんか)』を
彷彿させるような様式美の世界観。
素直にマドンナ監督に・・・「ヤラれた」!
正直なところ、監督第1作目の『ワンダーラスト』(2008)は“普通”だったし、
これまでの映画界に於ける彼女のキャリアを軽視していた事を反省する結果となった。
ウォリス・シンプソン役のアンドレア・ライズブローの演技がとても素晴らしかった。
存在感もあり魅力的で、ウォリス役を自分のものにしていたと思う。
殊にウォリスが曲に合わせて踊るシーンはハイライトであり、
この物語のキーの一つだと言える。
対するウォリー・ウィンスロップ役のアビー・コーニッシュも、
どこかしら品のある女性像を上手く演じていた。
彼女の容姿はやはり何度見てもシャーリーズ・セロンに似ていると思う。
エドワード役のジェームズ・ダーシーは、
ベネディクト・カンバーバッチを思い出すようなCoolな容姿で長身。
ウォリーの夫ウィリアム・ウィンスロップ役のリチャード・コイルは
役柄こそ最悪な人物像だったけど、彼の存在感もパンチがあって良かったと思う。
容姿はアンディ・サーキス+マイケル・シーン÷2という感じだったな。
ウォリーに関心を持つ警備員エフゲニ(オスカー・アイザック)は、
職種として来館する顧客に関わり過ぎているように思えたけど・・・
彼女に“ご執心”だったという事で流そう。笑
これまでウォリス・シンプソンに対して余り良い印象がなかったかもしれない。
物語の中盤以降で彼女が国民や世間からバッシングされていた時も、
どことなく同情できるものがなく自業自得と思ってしまいがちな自分が居た。
でも、彼女が最後に伯母に宛てた手紙をモノローグする場面で、
「もしかしたら周りが悪いのではなく、自分自身が悪かったのだろう」と
己と向き合っている事を知った時、
自分の中で彼女に対する印象が良い方向へ変わったような気がした。
・・・嗚呼、とても美しい女性たち=WEの物語。
そう、邦題は原題そのままの
『W.E.』=Wallis/Edward & Wally/Evgeniで良かったと言いたい。
『危険なメソッド』に続く、今年のmyベスト入り確定!
◆予告編◆

◆満足度◆
★★★★★

黄金を抱いて翔べ。

黄金を抱いて翔べ黄金を抱いて翔べ②
『黄金を抱いて翔べ』(日本/2012)
◆人物相関図◆
黄金を抱いて翔べ
◆感想◆
井筒和幸監督の作品に対する熱い想いは伝わってきたけど、
髙村薫原作の同名小説の良い所を紹介するだけの
ダイジェスト版のように感じてしまったのが正直なところ。
随所随所で編集や物語の展開が雑に思えたので、
ひとつひとつのシーンをもう少し丹念に描き込んでいれば
もっと深みと味わいが出たのだろうと想像すると勿体ない。
メインとなる6人の演者で一番印象に残ったのは浅野忠信(北川浩二役)。
まるで活きの良い魚の如く、
作品の中を縦横無尽に楽しみながら演じているのが伝わってくるようだった。
彼の演技に確かな手応えと自信を感じられるものがあった。
演技に関して不安視していたチャンミン(モモ、チョウ・リョファン役)は
逆に新鮮に思えたし、重苦しい作品の中で唯一のオアシス的な存在となっていて好印象。
あの意外と(?)美しい女装姿にも参りました。笑
お目当ての妻夫木聡(幸田弘之役)の無精ヒゲは案外似合っていたけど、
演技に関しては相変わらず“泣き”のシーンが弱かった。
“泣く”という表情を作り込むだけで精一杯で当然涙は流れていないし、
幸田の深い哀しみがこちらにまで伝わって来なかった。
この“泣き”に関する辺りは彼自身も自覚しているようなので、今後の課題だろうね。
形から入り込む演技作りではなく、
内面から滲み出るような素晴らしい演技を今後に期待したい。
個人的には物語の舞台となった大阪のあちこちが映し出されていたのが嬉しかった。
見覚えのある梅田新歩道橋、JR大阪駅の地下、中之島公園など・・・。
でも、関西弁を喋っていたのが桐谷健太(野田役)だけだったのが残念。
ちなみに原作小説では明確に描かれていると云われる、
モモに対する幸田の友情を超えた想いは案の定かき消されていた。
・・・それにしても邦画はジャンルにより日本語が聞き取り難い時があるので、
今回も日本語字幕が欲しいと思ってしまった(音響設備のせいもあり?)。
◆安室奈美恵『Damage』M.V.◆

◆予告編◆

◆満足度◆
★★★☆

危険な方法。

危険なメソッド
『危険なメソッド』(イギリス=ドイツ=カナダ=スイス/2011)
◆感想◆
自分にとって秋の大本命作品。
哲学的で抽象的な台詞のオンパレード。
一つ一つの台詞を詠み砕き咀嚼する事に一苦労。
自分の頭の悪さからか難解に思えた時もあり。苦笑
ある種の教育映画にも思えたり。
人間の本質を鋭く洞察する点や当時の抑圧されていた欲望が興味深い。
スイスを中心とする当時のヨーロッパの雰囲気や美術に衣装が美しく、
それを観ているだけでも優雅な気分になれる。
ヴィゴ・モーテンセン(ジークムント・フロイト役)、
マイケル・ファスベンダー(カール・グスタフ・ユング役)、
ヴァンサン・カッセル(オットー・グロス役)の3人の男優陣がそれぞれに魅力的。
フロイトとユングが初めて会った時の
ヴィゴとミヒャエルの横並びの2SHOTにうっとりしたのは言うまでもなく・・・。
危険なメソッド
ヴィゴはどこまでも渋く、ヴァンサンは出演場面が短いながら強烈なインパクトを残す。
危険なメソッド②
危険なメソッド③
危険なメソッド④
危険なメソッド⑤
危険なメソッド⑥
個人的には丸眼鏡を掛けてスーツを着こなす、
ミヒャエルの清潔感ある姿がこの上なく素敵すぎた。
危険なメソッド⑦
危険なメソッド⑧
前売り券購入者特典の白のコート姿がチラリとしか拝めなかったのは残念だったけど。
デヴィッド・クローネンバーグ監督の演出は
映画的なドラマティックな要素は皆無に等しくて、
ただ史実を忠実に再現する事に徹したような趣だった。
その点に於いては“映画”としての面白味に欠けるものがあるかもしれない。
寧ろ、脚本を担当したクリストファー・ハンプトンの
もともとの舞台劇を観ているような感覚に近いのかもしれない。
途中で『スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする』(2002)のような作風だったら
どうしようかと不安になったけど、その思いは杞憂に終わった。
物語の実質の主役はカール・グスタフ・ユングであり、
描かれる視点もユング寄りだったと思う。
ヴィゴ・モーテンセンは明らかに助演的な役回りだった。
フロイトは早い段階からアーリア人とユダヤ人の関係を予知していたのだと気付く
(映画本編では描かれないがその後の人生に大きな影響を及ぼす)。
キーラ・ナイトレイ(ザビーナ・シュピールライン役)の演技は
大胆かつ目を見張るものがあった。
危険なメソッド⑨
特に冒頭の発作を起こす場面は凄い。
ユングがザビーナにしがみ付き、めそめそと子どものように泣き出す場面は
もう少し彼女との関係性を掘り下げた後に描いていたらしっくり来るように感じた。
結局、ミイラ取りがミイラになってしまったという立場逆転の可笑しみがそこにはある。
ラストシーン。
抜け殻のように遠くをぼんやりと見つめるユングの姿が哀しくもあり美しく映っていた。
危険なメソッド⑩
それにしても、(映画本編ではそこまで深くは描かれていないが)
ユングがかなりの“女好き”であった事に驚く。
・・・と言う訳で、間違いなく今年のmyベストに入る事決定!
2012年はマイケル・ファスベンダーが出演する映画を
6本もこの日本で観る事が出来た。
春の『SHAME -シェイム-』に始まり、
この秋の『危険なメソッド』で無事終了となる。
どのミヒャエルも本当に素晴らしい演技を披露してくれていて、
彼のファンでいる事の喜びを感じられる一年だった。
「ありがとう、ミヒャエル!」
◆予告編◆

◆満足度◆
★★★★★

現実に戻って。

シャドー・チェイサー
『シャドー・チェイサー』(アメリカ/2012)
◆感想◆
所謂、“巻き込まれ”型サスペンスといった作風。
特に目新しさや刺激もなく物語は予定調和な形で進んで行く。
犯人像も何の捻りもなく観たままの展開だったりする。
お目当てのヘンリー・カヴィル(ウィル・ショー役)は
ギリシャ彫刻を思わすような容姿で男前だったけど、
残念ながらそれ以上の魅力を感じ取る事が出来なかった。
シャドー・チェイサー
シャドー・チェイサー②
シャドー・チェイサー③
全力疾走するシーンにおいては体格が良すぎるので逆にその身体が重たそうに映っていた。
ウィルの父親マーティン役のブルース・ウィリスは
まさかの途中退場で顔見せ程度の役柄だった。
実年齢29歳のヘンリー・カヴィルの見た目は良くも悪くも老けて見えるので、
ブルース・ウィリスの息子役を演じるには多少なりの違和感を覚えてしまった。
確かにこの作品がアメリカで受けなかったのは理解できるような気がする。
結局、大騒ぎの元となった“ブリーフケース”の中身は最後まで判らず仕舞いだったけど、
その続きを知る事も出来ないのだろうな。
ヘンリー・カヴィルの次回作は、
『マン・オブ・スティール』(2013年夏日本公開予定/配給:ワーナー)。
次こそはメガヒット級の作品となってほしい。
マン・オブ・スティール
◆予告編◆

◆満足度◆
★★★

アルゴ。

アルゴアルゴ②
『アルゴ』(アメリカ/2012)
◆感想◆
日本版予告編を見て興味を持った事と余りの絶賛ぶりに映画館で観る事にした。
隙のない完璧な演出で社会派と娯楽性が見事に融合し共存している。
『ゴーン・ベイビー・ゴーン』(2007)と『ザ・タウン』
(2010)に続く、
ベン・アフレック監督作に外れはない。
ゴーン・ベイビー・ゴーンザ・タウン
彼が演じたトニー・メンデスのキャラクターがヒーローぶる事もなく、
常に控え目な存在だった事も良かった。
一見、取っ付き難く思える政治的な問題をとても解りやすく描いていた辺りも好印象。
もし、製作のジョージ・クルーニーが監督を担当していたら、
ここまで娯楽性を持たせる事は出来なかったのじゃないだろうか。
そういう点に於いてもベン・アフレックの監督としての手腕が光っていたと思う。
いつの時代も国境を越えようとする脱出劇にハラハラドキドキさせられる。
映画の一番最初に登場するワーナーの赤いロゴマークからして、
1970年代後半を思い起こさせるような拘り。
久しぶりに見るカイル・クーパーが担当するタイトル・クレジットさえも懐かしく思える。
実在する人物やそこで起きた光景を忠実に再現している辺りも細やかさを感じたり。
数多く登場する俳優陣の中では、
個人的にブライアン・クランストン(ジャック・オドネル役)の演技が
アカデミー賞助演男優賞ノミネートに値するものを感じた。
陰で支えるジャックの仕事の手際の良さと言ったら!
イランの子どもたちの“仕事ぶり”にも驚きと同時に不気味さを感じたけど。
物語の中盤。「アルゴ」作戦に気乗りしない、
スタッフォード夫妻(スクート・マクネイリー&ケリー・ビシェ)を見た時は
イラッとさせられるものがあったけど・・・
クライマックスで夫ジョーが大活躍していたし、
最後は真っ先にトニーに握手を求めに行っていたので許してあげたい。笑
すべての脱出が成功した時は思わず拍手せずには居られなかったけど、
何よりもベン・アフレック監督の素晴らしい演出と巧みな構成ぶりに
スタンディングオベーションを贈りたくなる衝動に駆られてしまった。
ラストシーン。トニーがどの“絵コンテ”を
そっと持って帰っていったのか気になっていたのだけど・・・
うん、とてもしっくり来るものがあったよね。
◆キャラクター・ポスター◆
アルゴアルゴ②
アルゴ③アルゴ④
◆予告編◆

◆満足度◆
★★★★★

これは戦争だ。

Black & White/ブラック & ホワイト
『Black & White/ブラック & ホワイト』(アメリカ/2012)
◆感想◆
米国での評判が余り芳しくなかったので、
ほとんど期待せずに観たせいもあるのか素直に楽しかった!
テンポ良くてノリいいし、笑えるし・・・気分転換に最適な作品だと思う。
やっぱりマックG監督のアクション場面は観ていて楽しい。
主要キャスト3人(リース・ウィザースプーン、クリス・パイン、トム・ハーディ)の
ケミストリー効果は良かったと思う。
和気あいあいとした楽しさが伝わってくるようだった。
リース・ウィザースプーン(ローレンス・スコット役)は
最初ミスキャストに思っていたけど、そんな事はなかったな。
クリス・パイン(FDR役)とトム・ハーディ(タック役)が演じるキャラクターは
イメージでは逆に思っていたけど・・・このキャラ設定は本当にGOODでした。
それにしてもFDRとタックのどちらかを選べと言われたら本気で悩む!
観ながらいっその事、3人で付き合えばいいのにと思ってしまった。
・・・とは言え本心はローレンスはサイドに置いといて、
FDRとタックの2人が付き合えばいいと思っていたけど。笑
クリスもトムハもやんちゃな笑顔が素敵+可愛すぎた。
タックの顛末は安易な展開に思えた感もあるけど、まぁ許容範囲内かな。
そう言えば、トムハの身長が低いのがちょっと意外だった。
クリスは185㎝、トムハは178㎝。
トム・ハーディは『ロックンローラ』(2008)の
ハンサム・ボブ役でヤラれたのだけど今回改めていいなぁ・・・と思った。
今年観た『ダークナイト ライジング』では体格が良すぎたけど。苦笑
悪役を演じていたティル・シュヴァイガー(カール・ハインリッヒ役)が
ハリウッドではすっかりタイプキャストになっているのが寂しく映る。
もうハリウッドに見切りをつけて、
ドイツに腰を据えてほしいと余計なお世話ながら思ってしまった。
・・・どうやら劇場公開バージョン(98分)とは別に
エクステンデッド・エディション(104分)と
更に別エンディングが3パターンあるようなので、そちらも気になるところ。
◆予告編◆

◆満足度◆
★★★★★

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