’09年を締め括る映画。

のだめカンタービレ 最終楽章 前編のだめカンタービレ THE MOVIE Ⅰ&Ⅱ
『のだめカンタービレ 最終楽章 前編』(2009)
『さぁ、楽しい音楽の時間だ』とばかりに幕開けする、僕の2009年の映画鑑賞を締め括る作品。
【この冬、映画館がコンサートホールに変わる。】のキャッチコピー通り、
伝統的かつ優雅なクラシックを音響設備の整った迫力ある映画館で聴けるという贅沢さ。
しかも、かなりゆっくりと長く聴けてしまう名曲
(チャイコフスキー『祝典序曲「1812年」』)もある。
もちろん、定番のガーシュウィン『ラプソディー・イン・ブルー』もしっかりと流れます。
ストーリーは予想通り【ヨーロッパ編】と同じく、
【前編】は若き“俺様”指揮者、千秋真一(演じるのは玉木宏)がメインの展開でした。
なので今回はユニークな個性を持つピアニスト、野田恵(通称:のだめ、演じるのは上野樹里)が
ピアノを弾く場面を余り観られなかったことが物足りなかったかな。
僕はどちらかと言えば千秋の指揮者ぶりよりも、のだめのピアノの演奏を観たいんだよね。
その代わりというのか、のだめは人形とCG場面で大活躍していました。笑
とにかく!のだめの一喜一憂&変貌(変態!?笑)ぶりが最高に面白くて。
特に千秋がのだめにラヴェルの『ボレロ』のチェレスタを頼んだ時の
『空気読めよ』のシーンはブラボーものでした。笑
TVシリーズでもあった、のだめがこういう風にキレる瞬間がもう大好き!
もちろん、千秋に対するデレデレぶりも愛しくて。
僕も大好きな人に対して、真似したいくらい。笑
でも実はのだめ&千秋が付き合っているという設定をすっかり忘れていました。
てっきり、まだのだめは千秋に片想い中(ストーカー!?笑)だと思っていたんだよね。
このシリーズの製作がフジテレビなだけに(!?)、
TVアニメ『ドラゴンボール』的なシーンが登場したのも素直に笑える。
やっぱり何と言っても上野樹里の圧倒的な存在感と演技力は侮れない。
もう完全にのだめを自分のものにしていることが十分に伝わってくる。
対する玉木宏の指揮者ぶりもすっかり板についていて見応えがあった。
細身のフォルムに燕尾服がよく似合い、とても様になっていたなぁ。
髪型に関しては僕は普段の千秋よりも、
ルー・マルレ・オーケストラに潜入した時の七三分けの彼の方が好みでした。笑
そんな感じにキャストは誰ひとりとして違和感なく、ヨーロッパの世界観に溶け込んでいました。
ちなみに【日本編】のメインだった峰龍太郎(演じるのは瑛太)、
三木清良(演じるのは水川あさみ)、奥山真澄(演じるのは小出恵介)たちは
最後の最後にチラリと顔見せ程度に登場。
エンドロール後に流れる【後編】(2010年4月17日公開)の予告編を見る限り、
次は出演シーンの多さに期待できそうかな。
あ。今回、佐久桜(演じていたのはサエコ)の姿がチラリと映っている場面があって、
その細かい演出に思わず『おっ!』と口走りそうになりました。
物語的には前編の要となる千秋とマルレ・オケの楽団員(特にコンサートマスター)との
関係や交流を、もう少し丁寧に描いてほしかったような気がします。
なぜ楽団員たちが千秋のことを完全に信頼するようになったのかが、
今ひとつ明確に伝わってこなかったから。
その辺りの描写が惜しいなと思いました。
あと…やっぱり海外を舞台にすると主要な登場人物が限られてくるので
(否応なしにのだめ&千秋中心の展開になってしまう)、
青春群像劇ぽかった【日本編】の方が好きだなぁ…と感じたり。
【後編】の伏線となるであろうフランツ・シュトレーゼマン(演じるのは竹中直人)の
今後の千秋&のだめに対する関わり方と意味深な台詞が気になる。
【後編】の見どころはやっぱり千秋の成長ぶりに無意識の内に嫉妬するのだめが挫折を知り、
持ち前のバイタリティと才能で這い上がってくる姿なんだろうな。
【前編】の終わり方が余りにものだめのテンションが下がって暗かったので、
思わず『こんな気分になったまま、年を越すのはイヤやなぁ』と
感じずにはいられなかったという…。
もちろん、大体の想像がつく終わり方だったけど、
それならば心地よい終わり方の『ジュリー&ジュリア』で
今年の映画鑑賞を締め括りたかったなぁ。笑
…と言う訳で、僕の2009年映画鑑賞記録はこれにて完結です♪
どうにか年内に書き終えることができて良かった!笑
満足度:★★★★☆

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かいじゅうたちのいるところ。

かいじゅうたちのいるところかいじゅうたちのいるところ②
『かいじゅうたちのいるところ』(2009)
もともとは苦手なジャンルの部類に入るのでスルーしようと思っていた作品なんだけど、
日本版予告編でのCUTEな映像ぶりを見たら気になってきた。
最終的な決め手はやっぱり『マルコヴィッチの穴』でノックアウトされた、
スパイク・ジョーンズが監督をしていることが大きかったかな。
そんな中、運良くひと足先に試写会で観られることになって(日本公開は2010年1月15日)。
劇場公開前の試写会に参加するなんて、かなり久しぶりの出来事だ。
全体的に手作り感溢れる作風が良かった。
物語の要となる7人のかいぶつたちの容貌が流行りのCGではなく、
昔ながらの着ぐるみを俳優たちが着用して演じているところがいい(表情のみ撮影後にCG加工)。
そのかいぶつたちを演じる俳優が豪華で。
ジェイムズ・ガンドルフィーニ、ポール・ダノ、キャサリン・オハラ、フォレスト・ウィテカー、
マイケル・ペリー・Jr、クリス・クーパー、ローレン・アンブローズとくる。
みんな、本当にいい声をしているんだよね。
これから観ようと思っている人は、
事前に彼らがどの役を演じているのか知った上で観た方がもっと愉しめるかもね。
作品的には独創感のあるシュールな世界観だった。
どちからかと言えば、観客を選ぶ映画かもしれない。
スパイク・ジョーンズ監督の演出が良くも悪くも淡々としているのであっさり感が拭えないので。
本来ならハイライトとなるはずの
主人公の子どもとかいじゅうたちとの別れのシーンが全然悲しく思えなかったりする。
『モンスターズ・インク』でサリーとブーが別れるシーンの時は、
その悲しさが十分に伝わってきて泣けて仕方がなかったというのに。
この作品はモーリス・センダックの有名な絵本を基に製作されているのだけど、
この映画の中の世界観を果たして子どもたちは理解することができるのだろうか?と思えた。
それくらいこの映画は大人向けの作風だったのだ。
この辺りが配給会社であるワーナー・ブラザースが、
全米における試写の段階で劇場公開のGOサインを出さずに、
公開延期と追加撮影、編集作業のやり直しという経緯になったのだろうと想像する。
物語の中盤を過ぎる辺りからこの作品が単に家族の存在の大切さを説くだけじゃなく、
子どもの目を通しての自己のアイデンティティを見出すまでの物語なのだと気づく。
かいぶつたちの構成と主人公である空想好きの少年マックスとの関係に、
どこかウィリアム・シェイクスピアが描く作品的なものを感じたのは気のせいだろうか。
この映画の読後感はまるで『ゴーストワールド』を観終わった直後に似ていたような。
観終わってしばらく経過してから、
じわじわと込み上げてくるものがあるタイプの作品かもしれない。
とにかく!かいぶつのひとりであるキャロル(演じるのはジェイムズ・ガンドルフィーニ)と
マックス(演じるのはマックス・レコーズ)が『愛くるしい』のひと言に尽きる。
マックスくんのルックスを観ていたら、なぜかブノワ・マジメルを思い出してしまったり。
僕もマックスが常に着ていた着ぐるみを着てみたいなぁ。笑
キャロルのぬいぐるみが販売していたら欲しいかも♪
マックスの落書きによって始まる冒頭の配給会社&製作会社のロゴと、
映画本編終了後のスタッフ&キャスト・クレジットで流れる、
Karen O & The Kidsが歌う『All Is Love』の曲がとてもCUTEに感じて好き。
あ。観終わった直後に僕の右斜め後ろに座っていた二人組みの女子の会話が聞こえてきて。
『なんか(映画的に)惜しいよね。でも子どもは可愛かった』
端的に言い当てているなと感じずにはいられなかったけど…
でも僕はこの作品をキライじゃないです。
かいじゅうたちのいるところ④かいじゅうたちのいるところ⑤
満足度:★★★☆

野蛮な奴ら。

ビースティ・ボーイズ
『ビースティ・ボーイズ』(2008)
毎年恒例の『韓流シネマフェスティバル2009約束~Yaksok~』の一本として上映。
韓国若手男優の中でいちばん安定した演技力があると思うハ・ジョンウ目当てで観に行った。
物語は流行の最先端の街だと云われる清淡洞(チョンダムドン)を舞台に、
ホストクラブで働く二人の男性を中心に描いていく。
題材が【夜】というだけにお金とそれに纏わる人間関係がドロドロしている。
正直なところ観ていて愉しいものではないし、いい気分はしなかった。
物語の顛末に関しては『あー、やっぱりそういう方向へ行ってしまうんだ』という感じ。
映像はあえてフェイク・ドキュメンタリーぽく撮っているような趣で、
ぼやけた感のある暗くてジメッとした雰囲気。
ホストクラブのエース、キム・スンウを演じるのはユン・ゲサン。
彼のことをマジマジと見るのは今回が初めてだったんだけど、
その容貌はどことなくユ・ジテに似ているなと思った。
韓国男優らしく身体も見事に鍛えてあって、さすがのひと言。
役柄的には最初こそ純粋でいい青年だなと思っていたけど、
物語が進むに連れてストーカー気味になっていく様が怖く、哀れに映った。
ホストクラブのプロデューサー的な役回りであるユ・ジェヒョンを演じるのはハ・ジョンウ。
今回はひょうひょうとした様子で演技をしていた。
役柄的には彼の顛末がいちばん納得いかないかも。
こういう口先だけで生きていく人間は本当に許せない。
とにかく、二人の男(スンウとジェヒョン)が全然男らしくなくて好感が持てなかった。
二人ともに平気で女性に手を上げるし。
しかもこういう男たちに限って、プライドだけは一丁前なので余計に厄介。
やっぱりどういう関係であろうとお金の貸し借りはダメだと言える。
特にそこへ愛情が絡むと益々ややこしくなっていくから。
こういった夜の世界で働く人たちの心情を僕はほとんど理解できなかったです。
おかげで自分はサラリーマンしか無理だなぁ…と悟ることができたという。笑
そんな訳で、ダラしない男たちのダラしない物語を延々と見せつけられる作品でした。
満足度:★★☆

ボナペティ!

ジュリー&ジュリアジュリー&ジュリア②
『ジュリー&ジュリア』(2009)
僕が2009年、映画館で観る記念すべき100作品目の映画。
本当は今年の締め括りに相応しい作風として観たかったのだけど、
スケジュールの都合で変更することとなった。
僕の12月大本命のこの作品…その出来は期待通りでした。
全編に渡りとても丁寧に描かれていて、
観終わった後にハートウォーミングな気持ちにさせてくれる作品だったと思う。
二つの実話を基に同時進行で交互に描いていく。
ひとりは米国で伝説の料理研究家と語り継がれているジュリア・チャイルド。
時代は1949年以降のParis滞在期を中心に。
もうひとりは30歳目前のOL、ジュリー・パウエル。
時代は9・11事件、間もない頃のN.Y.。
彼女たちをそれぞれに演じるメリル・ストリープ(ジュリア・チャイルド役)&
エイミー・アダムス(ジュリー・パウエル役)の演技がとにかく素晴らしい。
二人ともキャラクターに見事な深みを与え、
チャーミングに演じていたので観ている僕も微笑ましくなる。
特にメリルの存在感は圧倒的で、
その完璧な演技にそろそろ3つ目のオスカー像を贈りたくなってしまうほど。
タマネギを誰よりも早くみじん切りにして喜ぶシーンは最高にCUTE!
バレンタインを祝う日にハート型の紙を心臓のところに貼り付けて、
愛する夫にドキドキの心境を伝えるシーンもCUTEで。
彼女が放つ独特の甲高い声と発音の仕方もクセになりそうでした。
『愛してるから、最初のひと口をあげるのよ。』…この想い、理解できる!
『あらま、見事に失敗ね。悪いお手本でした。勇気が足りなかったわね。
でもこうすれば元通り。誰も見てないから、バレやしません。』
…この大らかさ!
ジュリーのBLOGに対する想いは対象こそ違うけど、気持ちは理解できるなぁ。
コメントがつき始めた頃の喜びや記事に共感して貰えた時の嬉しさを。
それにしても365日で524個にも及ぶレシピを達成するなんて凄い。
ジュリー&ジュリア。共に料理という自分にピッタリの生きがいを見つけ、
本の執筆:BLOGの作成という形で自己の表現を見出していく姿が素敵でした。
ジュリー&ジュリア。それぞれの夫が彼女たちにとても理解を示し、
協力的で優しいところが魅力的だった(パウエル夫妻の方は時に喧嘩もしたりするけど)。
ジュリアの夫ポール・チャイルドを演じたのはスタンリー・トゥッチ。
初めて彼に男性的な色気みたいなものを感じてしまいました。
『ジュリア、僕がパンなら君はバターだ。』…なんてロマンティックな台詞!
ジュリーの夫エリック・パウエルを演じたのはクリス・メッシーナ。
僕が最近CHECKしている男優で今回は『それでも恋するバルセロナ』の時とは違い、
好感の持てる優しい夫役だったことが嬉しかった。
特にエリックがジュリーに真珠のネックレスを贈るシーンで思わずホロリとしてしまいました。
クライマックスでジュリーがジュリアに嫌われたと落ち込んでいる時に、
彼女へ掛けた声にも素敵な人物だなと感じたり。
こういう時にこそポジティヴな意見を口にしてくれる人はイイよね。
…あぁ、エリックのようなパートナーがほしい。笑
スクリーンに映し出される数々のフランス料理のどれもが本当に美味しそうで。
特にブフ・ア・ラ・ブルギニヨン(牛肉の赤ワイン煮込み)に心を奪われました。
僕はジュリーと違い卵料理が好きなので、ポーチドエッグも食べてみたくなったり。
スイーツは贅沢にチョコレート・クリームパイ&ラズベリー・ババロアを希望。笑
やっぱり料理を美味しく魅せる映画は作品自体にも愛情と心が篭っている証拠だね。
ちなみに丁寧な作りのパンフレットにはいくつかのレシピと解説が載っていて、お得感アリ。
この作品を監督したのはノーラ・エフロン女史。
正直なところ、エフロン監督の前作『奥さまは魔女』(2005)には
かなり失望する形となっていたので、もはや彼女の才能は枯渇してしまったのだと思っていました。
でも今回の作品はファーストシーンからラストシーンのすべてにおいて完璧な作りだったので、
自分の浅はかな判断を反省することとなりました。
唯一、残念に思えたのはメリル・ストリープ&エイミー・アダムスが
『ダウト ~あるカトリック学校で~』に続いての共演シーンがなかったことかな。
いつかスミソニアン博物館を訪れて、ジュリア・チャイルドのキッチンを見てみたいなぁ。
あ。パウエル夫妻がTVで見ていたジュリア・チャイルドのパロディ場面に、
夫妻と同じく声を出して笑ってしまいました。笑
…あぁ、やっぱりこういう女性映画はタマらなく好きだ。
長年、専業主婦で料理が得意な母を連れて、もう一度観てみたくなりました。
僕が今いちばんオススメする映画の誕生ということで、ぜひスクリーンで『ボナペティ!』
満足度:★★★★★

フランスで社会の敵No.1と呼ばれた男。

ジャック・メスリーヌ フランスで社会の敵(パブリック・エネミー)No.1と呼ばれた男 Part 1 ノワール編ジャック・メスリーヌ フランスで社会の敵(パブリック・エネミー)No.1と呼ばれた男 Part 2 ルージュ編
a.『ジャック・メスリーヌ フランスで社会の敵(パブリック・エネミー)No.1と呼ばれた男
Part 1 ノワール編』
(2008)
b.『ジャック・メスリーヌ フランスで社会の敵(パブリック・エネミー)No.1と呼ばれた男
Part 2 ルージュ編』
(2008)
フランス版本家本元『パブリック・エネミーズ』の登場。
1960年代から1970年代にかけて暗躍した、
実在の人物ジャック・メスリーヌ(1936-1979)の犯罪歴を描く。
彼が生存している間に書き上げた自伝を基に脚本化されている。
メスリーヌの60年代を描くPart1(113分)と
70年代を描くPart2(133分)に分けての日本同日公開。
大阪のミニシアターでは【1:ノワール編】と【2:ルージュ編】を
交互に上映してくれるという配慮があったので、休憩15分を挟むだけで一気に観ることができた。
全体的にテンポが良くカメラワークにキレのある実録犯罪風の仕上がり。
特に同じはずだと想像していた【1】のオープニングと【2】のエンディングを
全く違う角度から描くところにセンスの良さと斬新さを感じた。
その前後のシーンが繋がった瞬間、
『あぁなるほど!こういうことだったのか!』と思わず唸らされてしまった。
この辺りも含めて、ジャン=フランソワ・リシェ監督の演出力が全編に冴え渡っている。
メスリーヌをヒーローとして描いておらず、あくまでひとりの人間として描いている点が興味深い。
人間的な脆さ、弱さ、虚栄心、自惚れ。
正直、メスリーヌは頭がいいのか悪いのかよく判らない人物像だった。
計画性がないままその日暮らし的な発想で犯罪を実行しているように映ったので、
時々間抜けに思えるシーンがあったのだ。
すべては【運】が彼の味方をしたといったところか。
人生の最後の方は一体何がしたかったのか理解不能に思えた。
マスメディアへ過剰に反応する辺りは単なる目立ちたがり屋かつ器が小さいな、と。
時に負け犬の遠吠えのようにも感じた。
人格的にはどうだったのだろう?
家族(父親や娘)との交流シーンがあったものの、
とても彼らを大事に想っているようには伝わってこない。
このシーンは唯一、とってつけたように感じてしまった。
それは【1】で結婚相手の妻を銃で脅していた場面が強烈だったからかもしれない。
一生涯、女性には不自由していないようだったけど、
彼にとっての【愛】とは一体何だったのだろう?と、ふと思った。
もしかしたらアルジェリア戦争へ従軍したことに因って、
それまでの生き方や価値観が覆されるくらいの
何らかの影響を受けてしまっていたのかもしれないね。
でも、どこか憎めない魅力を持っている人物像ではあったな。
…やはり彼は大衆の【英雄】になりたかったのだろうか。
それにしてもフランスとカナダの刑務所の脱獄しやすい環境には驚かされた。
いや、これに限ってはメスリーヌの頭脳戦勝ちかな。
ジャック・メスリーヌの20年間を演じたのはヴァンサン・カッセル。
とにかく!彼のパフォーマンスぶりは素晴らしかった。
実際に4ヶ月かけて体重を20㎏増量させこの役柄に挑み、
撮影の9ヶ月の間に本編とは逆の形で体重を減らしていったようだ。
【1】での容貌はいつものヴァンサンらしい体型で長身にスーツ姿がよく映え、
そのフォルムは美しく本当に様になって格好よかった。
彼はロマン・デュリスと系統が同じで本来の体型は細身なのだけど、
着ている服を脱いだら綺麗な筋肉がついているというナイスボディな人でもある。
今回も十分なほど、その身体を堪能することができました。
やっぱり母国フランス映画で観るヴァンサンがいちばんだなぁ…と強く実感。
ヴァンサン・カッセルを取り囲む俳優たちは時代が進むに連れて目まぐるしく変わっていく。
【1】で印象が残ったのはセシル・ド・フランス(ジャンヌ・シュネデール役)。
登場の瞬間からCOOLにキメていた。
特にカジノでメスリーヌと共に銃を構えながら威嚇するシーンは、
姐御的に見えて最高に格好よかった。
ロイ・デュピュイ(ジャン=ポール・メルシエ役)の無骨的な格好よさも捨て難い。
【2】で印象が残ったのはリュディヴィーヌ・サニエ(シルヴィア・ジャンジャコ役)。
小悪魔的なフェロモン全開でメスリーヌだけじゃなく観客をも魅了する。
脱ぎっぷりの良さも変わらずで潔い。
シルヴィアの最後の言動がメスリーヌの安否より犬だったことに衝撃を受けた。苦笑
マチュー・アマルリック(脱獄王フランソワ・ベス役)。
初めて彼を素敵だと思えるくらい、その役柄に知的さを感じた。
マチューを観ているとRADIOHEADのトム・ヨークを彷彿させるものがある。
オリヴィエ・グルメ(ブルサール警視役)。
冷静沈着かつメスリーヌに対する人間的な対応ぶりの役柄に魅了された。
サミュエル・ル・ビアン(ミシェル・アルドワン役)。
昔の面影が消えていくような恰幅のいい容貌にショックを受けていたら、
ヴァンサン同様に彼も役作りのために20㎏の増量をしていたと知り…ホッ。
…という感じで約4時間に渡り、フランス犯罪映画を堪能することができた。
僕はクラシック感漂う【1:ノワール編】よりも、
1970年代の生々しい匂いを思い存分に感じた【2:ルージュ編】の方が好みだな。
渾身のラストシーン。ヴァンサン・カッセルが本当に神がかり的なCOOLぶり!
第34回セザール賞最優秀主演男優賞受賞おめでとう!!
ヴァンサン・カッセル
『Part 1 ノワール編』満足度:★★★★
『Part 2 ルージュ編』満足度:★★★★☆

名誉なき奴ら。

イングロリアス・バスターズイングロリアス・バスターズ②
『イングロリアス・バスターズ』(2009)
※注意!完全にネタバレしています※
クエンティン・タランティーノ監督は特に好きと言う訳ではないけど、
新作が日本公開されるたびに気になる米国監督だ。
僕が前回、彼の監督作をスクリーンで観たのは『キル・ビル Vol.2』(2004)。
今回は描かれる題材が第二次世界大戦下のドイツ・ナチスVS.ユダヤ人という、
非常に(いい意味での)ユニークな形での作風となるので迷うことなく観ることを決めた。
鑑賞後に感じたひと言は、ずばり『最高に面白かった!』だった。
期待していた以上の収穫が僕にはあったのだ。
まずは、気に入った理由を箇条書きで羅列。
①ドイツ・ナチスが敵として登場。
②(ファッションとして見て)ドイツの軍服が格好よかった。
③『シンドラーのリスト』のアーモン・ゲート(演じたのはレイフ・ファインズ)に
匹敵するくらいの冷血な敵:悪役の存在。
④ヨーロッパ圏の俳優が大挙出演。しかも母国での台詞多し。
⑤全体的にハリウッド映画ぽくない。
⑥アンサンブル劇かつ会話劇で魅せる。
⑦今までのドイツ・ナチス関連物ではありえないオチのつけ方。
以上。152分の長丁場、全5章という形で構成されているストーリー。
コミカルに描いている部分はあるものの、全体的にはシリアスなドラマとしての印象が残る。
それでいて毒がありシニカルで。
若干、タランティーノ監督の母国である米国を小バカにしているような描写もあったり。
特にドイツ人レジタンスの女優ブリジット・フォン・ハマーシュマルク
(演じるのはダイアン・クルーガー)が米国兵に言い放つ、
『アメリカ人は英語しか話せないの?』の台詞は痛快だった。
決して史実に基づき描いていた訳ではなかったけど、逆にそれが効果的で
ユダヤ系で構成されたバスターズの復讐が達成できる締め括り方に思わずニヤリとさせられた。
そういう意味でも全編においてタランティーノ監督らしさが炸裂していたと言える。
もちろん、痛みがバーチャル体感できてしまうような激痛シーンもしっかりと用意されています。
ブラッド・ピット主演と言うよりかは、
彼自身がアンサンブル・キャストのひとりとして出演していたと言った方が正解だと思う。
ブラッドは全体的に振り返っても終始、出ずっぱりという訳ではない。
事実、実際に登場するのは第2章からでこの控え目な感じが好印象だった。
トボけた感のあるアルド・レイン中尉のキャラクター設定もNICE。
さすがに本締めはきっちりと彼が落とし前をつけてくれます。
全然ハリウッド映画らしくなくて、本当にヨーロッパ映画を観ている感覚に陥った。
それはこの作品の言語が全編英語ではなかったことが大きいと思う。
英語はもちろんフランス語、ドイツ語がバンバン発せられ、果てはイタリア語まで登場する。
出演している俳優の多くがヨーロッパ出身(特にドイツ)で占めているので、
普段の米国映画なら英語で貫きそうな描写を母国語で表現できる強みが出てくるのだ。
この辺りのキャスティングのセンスが素晴らしい。
特にドイツ俳優のダニエル・ブリュール、ティル・シュヴァイガー、
アウグスト・ディール、クリスチャン・ベルケルの出演が素直に嬉しかった。
ダニエルとティルは既に米国映画にも出演しているので顔に見覚えがある人もいると思う。
ゲスト出演扱いだったアウグストは『青い棘』と『ヒトラーの贋札』で印象に残っている。
クリスチャンは『ヒトラー ~最期の12日間~』のシェンク博士役と
トム・クルーズ版『ワルキューレ』のメルツ・フォン・クヴィルンハイム大佐役にも
出演していたので、このドイツ・ナチス関連の作品は制覇したといったところか。
今回はドイツの軍人役ではなく、あえてフランス人の居酒屋主人役だった辺りが、
タランティーノ監督らしいニクいキャスティングに思えた。
ちなみにクリスチャンは同時代を描いた『誰がため』(12月19日日本公開)にも出演している。
更にもうひとり気になる俳優がいた。
ドイツ生まれでアイルランド育ちのミヒャエル・ファスベンダーだ。
もともと『300 <スリーハンドレッド>』と『エンジェル』で注目していたのだけど、
今回の元映画評論家である英国軍人アーチー・ヒコックス中尉役で完全に魅了されてしまった。
それでもやはりいちばん印象に残った俳優は言うまでもなく…
オーストリア出身で現在、英国在住の俳優クリストフ・ヴァルツだった。
イングロリアス・バスターズ③
憎々しく笑みさえも不気味なドイツ・ナチス将校、
ハンス・ランダ親衛隊大佐を圧倒的な存在感で見事に演じ切っていた。
彼がスクリーンに登場するだけで画が引き締まり、そこには緊張感だけが溢れ返っている。
第1章での登場シーンには寒気さえ感じたほどだった。
多くの言語をペラペラと話せるところが実に凄い。
加えて、何よりもドイツ・ナチスの軍服姿が誰も彼もが様になっていて本当に格好よかった。
特に食い入るように魅入ってしまったのが第1章。
作品が始まってすぐの不安を煽るような不気味な静けさ。
ただ会話をしているだけだと言うのに、とてつもない緊迫感が続く。
僕は映画中のシーンと同様に微動もせず息を潜めて観ていたような気がする。
最後の章(第5章)の30分間辺りはタランティーノ監督節が全開で、
一気に畳み掛けるようにそれまでバラバラに描いていたストーリーを収束させる、
スリリングさと快感があって最高の演出ぶりだった。
いちばん印象に残ったシーン。
やはり第4章の地下の居酒屋での会話場面で、ここの描き方と演出ぶりは秀逸だったと断言できる。
本当に一寸先は闇という雰囲気がひしひしと伝わってくる極上のシーンだった。
ここだけでも何度も繰り返して観たいくらいだ。
…この作品は先に述べた通り、フィクションである。
今回、ドイツ・ナチス側の実在の人物として登場していたのは
アドルフ・ヒトラーとヨーゼフ・ゲッペルスの二人。
演じている俳優(マルティン・ヴトケ&シルヴェスター・グロート)は共に
ゲスト出演扱いだったが特徴をきちんと掴みながら、
わざと滑稽にパフォーマンスをしているように映った。
クライマックスの映画館(プレミア上映会)場内での
炎上シーンがグロテスクだという意見を聞いた。
僕自身は史実通りに描かなかった、このヒトラーの最期をアリだなと思った。
これまでタブーに近かったこの顛末を描写した、
タランティーノ監督に『アッパレ!』という想いでいっぱいだ。
イーライ・ロス演じるバスターズの一員ドニー・ドノウィッツが、
ヒトラーを容赦なく思い存分に銃で撃ち殺し続けるシーンに
なんとも言い難いカタルシスを感じたからだ。
炎で燃え上がる映画館場内から外に逃げようと出口へ向かう人々たち。
そこに居た人々はドイツ・ナチスを賞賛し、
彼らがしてきた非道なことを見て見ぬふりをし、見ざる聞かざるふりをしてきた人たちだ。
ドイツ・ナチスと同様に罪深い人たちだと僕は感じずにはいられなかった。
連日、ホロコーストで多くの人たちの命が失われていった現状。
強制収容所において人間としての扱いをされず、過酷な仕打ちを受けた挙句にだ。
そういった出来事が起こっている中、とても戦時下とは思えない華やかな格好で
呑気にプロパガンダ映画を観に来ていた人たち。
地獄のようなホロコーストの中で生きることを強いられることに比べたら、
あの炎の中で一瞬の内に亡くなれるのなら少なくともマシだったのではないかと
僕は不謹慎にもそう思ってしまった…天罰が下ったのだ、と。
決して、目には目を歯には歯を的な思想が正しいとは思わないし、
どういう人間であれ人を殺めるべきではないと思う。
憎しみから何も生まれないことは解っている。
でも、この誤りだらけの戦時中にそんな悠長な綺麗事を言っている場合ではないと僕は感じた。
ヒトラーやドイツ・ナチスが存在する限り、意味もなく多くのユダヤ人が殺され続けるのだから。
だからこそ僕はこの奇跡に思えるような結末に悦びを見出してしまったのだ。
史実をあえて歪曲し、極上のファンタジーに仕上げたクエンティン・タランティーノ監督に
心から盛大な拍手を贈る。
…と言う風に僕は思いきりユダヤ人側の立場になって、この作品を真剣に観ていました。
こういった題材に対する思い入れ度が半端じゃないので、案の定、熱く語ってしまった…。
まぁ、あくまで僕個人が感じたひとつの意見ということで。
ちなみに配給会社が全国の映画館で『面白さタランかったら全額返金しバスターズ!!』という
イベントを公開から4日間限定で行っていたけど、
僕は何度でもお金を払って観たいくらいの気分でした。
やっぱりもう一度、スクリーンで観ておこうかなぁ。
イングロリアス・バスターズ④イングロリアス・バスターズ⑤
満足度:★★★★★

I LOVE ジェームズ・マカヴォイ。

ジェイン・オースティン 秘められた恋ジェイン・オースティン 秘められた恋②
『ジェイン・オースティン 秘められた恋』(2007)
※注意!完全にネタバレしています※
配給するはずだった日本の映画会社が事実上の倒産。
日本公開が危ぶまれていた中、違う配給会社によりようやく劇場公開となりました。
ヘキサゴン・ピクチャーズの方々に感謝です!
邦題から想像できるように英国が生んだ女流作家ジェイン・オースティン(1775-1817)の
知られざる恋愛に焦点を当てて描いた伝記物。
彼女の著作『高慢と偏見』(映画化タイトルは『プライドと偏見』)が
いかにジェイン自身にインスパイアされて書かれたものなのかがよく解ります。
『高慢と偏見』の主人公エリザベス・ベネットの勝ち気な性格は映画の中のジェインその者であり、
ジェインの家族たちの性格もベネット一家その者でありました。
正しくチラシのキャッチコピー通り、
『「プライドと偏見」は、この出会いなくしては生まれなかった』と言えると思います。
監督はジュリアン・ジャロルド。
全体的にとても気配りのある繊細な演出で、
男性監督がこのタイプの作品をここまで上手く表現できることに驚きを感じました。
『キンキーブーツ』と『情愛と友情』を監督した人なので、もしかしたら…だけど。
どちらにしろ、個人の性的指向を深く追究すべきではないね。
ジェイン・オースティンを演じるのはアン・ハサウェイ。
キャスティング当時に英国で話題になっていた、
米国人が英国人を演じることに対して僕は特に何の違和感を覚えることはなくて。
役柄もピッタリだったし、僕は彼女の演技をすんなりと楽しむことができました。
ジェインの生涯最愛の人となるトム・ルフロイを演じるのはお目当てのジェームズ・マカヴォイ。
ジェイン・オースティン 秘められた恋
想像していた以上に18世紀のコスチュームが似合っていて、
その姿を観ているだけでぼくはもうメロメロ状態でした。
更にこういうタイプの作品に登場するとは思えなかった拳:ボクシングで決闘するシーン。
上半身裸で対決するその姿に僕のHEARTはクギづけ。
おまけに別のシーンではお尻まで披露してくれるサービスぶり。笑
もちろん演技はきちんとしていて、アン同様に役柄がピッタリでした。
シリアスな場面での彼の青い瞳に思わず吸い込まれそうになったり。
ただ今回は役作りのせいなのか、かなり発音が訛っていたような。
特に印象に残っているシーン。
トムと駆け落ちすることを諦めたジェインが馬車に乗り走り去ろうとする瞬間、
その馬車の小窓からトムの姿が見えるところ。
その時のマカヴォイくんの哀しい表情が僕の目に焼きついています。
ジェイン・オースティン 秘められた恋②
英国映画なだけに、英国男優がもちろん出演していて。
特に印象に残ったのがローレンス・フォックスとジョー・アンダーソンの二人。
ローレンス・フォックス演じるウィスリー氏の温和なキャラクターにとても好感が持てたなぁ。
当時の社会は今の世の中以上にお金が勝る世界であり。
恋愛や結婚を自分たちの意思で決めることもままならない。
特に結婚は縁談が当たり前であって、恋愛結婚はまだまだ少数派の時代。
そんな状況において愛する人との駆け落ちを決めたジェインが、
最終的に現実をしっかりと見据え運命を受け入れた彼女の強さが凄いと思えた。
ジェインが叶えることのできなかった【幸福な結末】を自身の小説に見出し、
望みを託した気持ちが痛いくらいに伝わってきます。
対するトムと言うか、男はいつの時代も夢見がちな生き物のようで…。
晩年。ジェインとトムが再会する場面が描かれる。
その時のトムのなにげないロマンティストぶりに僕は不覚にも泣いてしまいました。
そうして、ジェインがふと目にしたトムの左指には結婚指輪が光っていて。
その後、ジェインが自分の左手を右手でソッと隠す場面に、
切なさと同時になんとも言えない温もりを感じました。
僕の中でとても秀逸なラストシーンとなったことは言うまでもありません。
…と言う訳で、どの俳優よりも今いちばんマカヴォイくんのことが大好き!!
ジェイン・オースティン 秘められた恋③
満足度:★★★★★

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